桜井日奈子が選んだ1冊は?「弘前の街やご家族のこと、じろうさんの“好き”が詰まった本です」

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年12月号からの転載です。

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、桜井日奈子さん。

(取材・文=松井美緒 写真=TOWA)

「さらに、じろうさんが好きになっちゃいました」

 と愛おしそうに本書を語る桜井さん。お笑いの中でもシソンヌの大ファンで、今年も単独ライブに行った。

「舞台やテレビで観るじろうさんは笑いの天才ですが、かつては普通の少年だったんだなあと。弘前の街やご家族のこと、じろうさんの“好き”が詰まった本ですよね」

 じろうさんがコントで演じる女性キャラが、たまらなくかわいいと桜井さんは言う。

「あんな魅力的なキャラをどうやったら生み出せるのか、ずっと不思議だったんです。この本に、少年の頃からおばさんという存在が好きだったと書かれていて。なるほど、それが今につながっているのかなと」

 お菓子のヨックモックの缶を物入れに再利用する話も印象深い。

「どの家庭でもやってますよね? 私もやってました(笑)。そういう“あるある”を見つける観察眼が、ずば抜けているのかな。私、じろうさんの脚本も大好きで、ぜひ一度じろうさんの作品に出演させていただきたいと思ってるんです。卓越した観察眼があるから、女性キャラにしろ脚本にしろ、作り上げることができるんでしょうね」

 じろうさんが弘前を愛するように、自身も地元・岡山が大好きという桜井さんは、まさに今、岡山を舞台にした舞台『138億年未満』の公演を控えている。

「岡山の皆さんに支えられて、ここまでやってきましたので、こういった作品に出演できるのはすごく嬉しいです。舞台の上で岡山弁を喋れるのも楽しみです」

 桜井さん演じる韮沢は、岡山の高校を卒業後、ダンサーの道を進むべく大阪に出る。しかしそこで彼女が味わったのは、こんなはずではなかったという思い。桜井さんが芸能事務所に所属したのは、高2のとき。韮沢の気持ちが、少しわかると言う。

「何の決意もないまま芸能界に入ってしまいました。ありがたいことに、次々お仕事をいただいて。でも私は下積みも実力もないから、不安で押しつぶされそうで。母に泣きながら電話したこともあります。今振り返ると、中途半端な気持ちのままで、すごく甘かったんですよね」

 韮沢は成功者ではないかもしれない……と桜井さんは続ける。

「ビターな青春群像劇です。でもそこに、観客の方たちが希望を感じられるような、明るい光をともせたらいいなと多います」

ヘアメイク:Hitomi(Chrysanthemum) スタイリング:阿井真理 衣装協力:トップス11万円、ボトムス9万9000円(SHIROMATEL080-3901-9195)*すべて税込

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