三吉彩花が選んだ1冊は?「心を込めて料理を作れば、必ずそれが相手に伝わるんだと思いました」

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年12月号からの転載です。

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、三吉彩花さん。

(取材・文=松井美緒 写真=干川 修)

 数年前、健康や体作りのために自身の食事を見直したという三吉さん。本書は、その際に手にした一冊だ。著者・佐藤初女さんの、お米一粒一粒を大切に作るおむすびのレシピに、三吉さんはとても惹かれたという。

「素材との丁寧な向き合い方が、素晴らしいです。それに私、おむすびがすごく好きなんです。子どもの頃、祖母が作ってくれたおむすびが本当に美味しくて。今も、風邪や食欲のないとき、おむすびだったら食べられます。一番シンプルな食べ物で、でも、だからこそ力が湧いてきます」

 本書には、初女さんが料理に込めた思いも添えられている。

「食事は、ただ栄養を摂取するためだけのものではないんですよね。心を込めて料理を作れば、必ずそれが相手に伝わるんだと思いました」

 祖母のおむすびも、当時は作ってもらうのが当たり前でしたが……、と三吉さんは続ける。

「私も将来、もしかしたら子どもを持って、その子のためにおむすびを握ることもあるかな、と想像しました。そうやって、料理を通して思いが伝わっていくのかもしれませんね」

 公開を控える三吉さんの出演作『本心』も、人の“思い”を描いている。主人公・石川朔也は、「自由死」を選んだ母の「本心」を知るため、VF(ヴァーチャル・フィギュア)で母を蘇らせる。三吉さんの役どころは、母と親しかったという女性・三好彩花。「これほど精神的に苦しかった撮影は初めて」と三吉さんは語る。

「三好は、あるコンプレックスから他人に触れることができません。この映画をお受けすること、そして彼女を演じるにあたって、私自身の本心とは何なのか、コンプレックスと向き合うことが今必要なのではないか、と思いました」

三吉さんにとってのコンプレックスとは家族だった。

「家族と向き合うということが私にとっては大きな一歩でした。とても意味のある時間でしたし、このタイミングだったんだなと思います。この映画に取り組むには覚悟が要りましたが、その機会をくれたこの作品に深く感謝しています」

 本作は、AI、自由死、人間の心など、多様なテーマを提示している。三吉さんが強く感じたのは。

「どんなにデジタル技術が進んでも、自分の心を話すとき、私は生身で人と相対したい。人との対話は、アナログであるべきなんじゃないでしょうか。私はそういう人間関係を構築していきたいです」

ヘアメイク:牧野裕大 スタイリング:濱本愛弓 衣装協力:トップス4万9500円(税込)(フェティコ/ザ・ウォール ショールーム TEL050-3802-5577)

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