23歳ながら大ベテランの風格。注目のフジテレビ新人アナ・上垣皓太朗を直撃! 趣味は俳句、好きな街は河田町、好きな音楽は昭和歌謡......。

ベテラン感のある風貌の上垣アナ


ベテラン感のある風貌の上垣アナ

ベテラン感のある風貌に、シブすぎる趣味。まるで落語の師匠のような所作。とても23歳とは思えない仕上がりで人気を集めるフジテレビアナウンサー・上垣皓太朗(うえがき・こうたろう)を直撃! あのー、ホントに新人さんですよね!?

【写真】大ベテランの風格の上垣アナ

* * *

■ハイハイがものすごく速かった

――単刀直入に聞きますが、人生何周目なんですか?

上垣 そんな真面目なお顔で言われましても......。いや、1周目です。1周目ですよ。

――その仕上がりは子供の頃から?

上垣 落ち着いてるとかマイペースだとはよく言われてましたね。騒がず柔和な笑みを浮かべる赤ちゃんだったとか。

あとはハイハイがものすごく速かったと聞いております。ほかの子たちがつかまり立ちに移行する中、私は高速化に努めていたようでして。この頃から凝り性は始まっていたのかもしれません。

――子供の頃は何が好きだったんですか?

上垣 小学生で鉄道にハマりました。自分の勉強机で白い手袋をはめて、車掌さんが電車の窓を開けて安全確認する所作をまねながら「ドアが閉まります。ご注意ください」と言ってみたり、架空の路線図を書いて頭の中でシミュレーションしたりしていましたね。

(急に早口で)電車が2分遅れで到着するんだけど、そこでまた新しいトラブルで10分遅れちゃったので、結局ダイヤが1個ずれて元どおりになった......みたいな妄想です。こんなメジャーな趣味の話でいいんでしょうか。

――ニッチですよ!

上垣 マイナーな趣味の中ではメジャーなほうだと思うんですが。

――なぜ鉄道にハマったんです?

上垣 子供の頃の行動範囲って限られますよね。私は兵庫県西宮市出身なので、行動範囲はせいぜい神戸から大阪くらいまででした。その街の外側、つまり電車の路線の向こう側はどうなっているんだろうと鉄道に興味をそそられていたんです。

中高では地理という科目に出会い、街や文化に興味を持ちました。これで地図の見方が変わって、解像度が上がっていった。街歩きは今でも趣味なのですが、好きになったのはこの頃ですね。

■地形図片手に街歩き

――東京で好きな街はありますか?

上垣 4月に上京して一番行きたかった街は河田町(新宿区)。フジテレビ旧社屋跡地周辺を歩きました。

――またシブい街!

上垣 あとは、東京だと江東区もいいですね。清澄白河や門前仲町がお気に入りです。

上垣アナが歩くのが好きという河田町。かつてフジテレビの本社があった。東京に歩きがいのある街は数あれど、河田町を挙げるのはかなりシブい


上垣アナが歩くのが好きという河田町。かつてフジテレビの本社があった。東京に歩きがいのある街は数あれど、河田町を挙げるのはかなりシブい

――街歩きのルーティンはありますか?

上垣 地形図は予習しておきたいところですね。いろいろなことを教えてくれますから。

例えば最近、地図記号に自然災害伝承碑が追加されたんです。過去に発生した自然災害を刻んだ石碑がある場所ですね。この地図記号を見つけたら、「どんな災害が起きたんだろう」と想像を巡らす。すると知らなかった街のことが徐々にわかってくるんです。

――そんな視点で街歩きする人っています?

上垣 これが仲間もいるんですよ。大学時代の友人なのですが、彼は野鳥が好きで、一緒に街歩きをすると、私には聞き取れない鳥の声が聞こえるみたいです。

――仲間も濃い! 大学時代の印象的な思い出は?

上垣 愛媛で西日本豪雨災害の復興支援活動をしていたのですが、青春18きっぷで行って地元の方と飲んだことが思い出深いです。

それから、大阪大学のすぐ近くにある商店街もよく行きましたね。お店の方のご厚意で食べ物を分けていただいたこともあって、ありがたい話ですよ。

――いわゆる〝大学生らしい〟ことはしてないんですか? SNSとかテーマパークに行くとか。

上垣 う~ん、あまり思い出せないですね。TikTokはフジテレビに入社して始めましたが。

「16歳の頃には 『通勤電車でよむ詩集』という本にハマっておりました」


「16歳の頃には 『通勤電車でよむ詩集』という本にハマっておりました」

――SNSをしないということは、読書とかをしていたんでしょうか。

上垣 最近はあまり読めてないのですが、本は好きですね。長い文章は苦手で、詩集や俳句の本を読みます。中学受験対策で小学生の頃から俳句や短歌に触れていたのもあって、短い言葉の中に世界がぎゅっと詰まっている感じが好きなんです。

――詩ですか。

上垣 大人になると純粋に感動できないかもしれないですが、10代の柔らかい感性で受けた衝撃って一生モノなんですよね。言葉ってすごいなと。16歳の頃は、小池昌代さんの『通勤電車でよむ詩集』(生活人新書)にハマってました。

――通勤してない年齢なのに、すごいタイトルの本を手に取りますね。

上垣 確かに。言われて気がつきました。

――ご自身でも俳句を詠まれますよね。飲料メーカーの俳句大賞で入選したとか。

上垣 あれは趣味程度なので。恐縮です。

――音楽は?

上垣 最近は、くるりさんの『琥珀色の街、上海蟹の朝』という曲にハマっています。ただ、はやりの曲も聴きますが、私は昭和歌謡が好きですね。昔の曲は言葉が強くてハッキリ聞こえますよね。私は言葉が好きなので、昔の曲が好きなのかもしれません。

■複合語のアクセントが気になって仕方ない

――言葉好きということもあってアナウンサーを目指したんでしょうか?

上垣 話すことも言葉自体も好きだったので、なんとなくアナウンサーは受けなきゃいけないと思っていましたね。教員やラジオ局員、新聞記者も興味はあったのですが、無事内定をいただいたのでテレビの道へ飛び込みました。

――アナウンサーの仕事はどうですか?

上垣 毎日楽しすぎてあっという間です。人に恵まれて、伸び伸びやらせてもらえています。メリハリのある仕事なので、本番とそれ以外が、サウナと水風呂みたいな感じですね。ワーッと興奮して、サッと落ち着いて、休憩時間にホッとする。ずっと整ってる感覚です。

――落ち込むことはないんですか?

上垣 いっぱいありますよ! 散歩中に「あの言い回し、違ったかな」とかひとり反省会をしています。準備も好きですが、振り返りはもっと好き。落ち込んだり引きずったりすることはないけれど、グチグチ考えたい性格です。

上垣皓太朗 2001年生まれ、兵庫県出身。大阪大学文学部卒業。2024年にフジテレビにアナウンサーとして入社。趣味は銭湯で長風呂、AMラジオを聴くこと、歌ネタ漫才のカバーで、特技は地形図を見ながら街を歩くこと。高校地理歴史・高校国語・中学国語の教員免許や二級小型船舶免許、酒類販売管理者などの資格を持つ。現在『めざましテレビ』『めざましどようび』などに出演中


上垣皓太朗 2001年生まれ、兵庫県出身。大阪大学文学部卒業。2024年にフジテレビにアナウンサーとして入社。趣味は銭湯で長風呂、AMラジオを聴くこと、歌ネタ漫才のカバーで、特技は地形図を見ながら街を歩くこと。高校地理歴史・高校国語・中学国語の教員免許や二級小型船舶免許、酒類販売管理者などの資格を持つ。現在『めざましテレビ』『めざましどようび』などに出演中

――言葉でこだわっている部分は?

上垣 正しくきれいな日本語には一番こだわりたいですね。FNN(フジのニュースネットワーク)統一用語集を読むのが好きなんです。

例えば、河川敷は「かせんしき」なのか「かせんじき」なのか。ふたつとも正しい読み方ですが、フジテレビとしては「かせんしき」を採用すると示している。これが楽しくて楽しくて、ずっと読んでます。文学部の同期に伝えたら「その本でお酒が飲めるな」って盛り上がりました。

――すごいツマミだ。

上垣 言語好きにはいろんな流派がありますが、私は言葉の音声面が好きで、アクセントやイントネーションに興味があります。

――例えば?

上垣 (食い気味で)複合語のアクセントの変化とか。もともと「国家」の「戦略」の「特区」だったものが、「国家戦略」の「特区」になって、「国家戦略特区」と連結されると、アクセントの位置がそれぞれ異なりますよね。複合語のアクセントは変化するわけです。

最近だと「ウクライナ侵攻」は「ラ」にアクセントがあったのに、徐々に平板化しましたよね。言われ慣れていくとアクセントは消えていくことが多いんですが、その変化のタイミングがいつなのか気になっています。

――言葉の話になるとトークのギアが上がりますね。

上垣 ずっと話せますね。こんな話も、アナウンサーになると仕事として大真面目に考えられる。最高の職業です。

大先輩の奥寺健アナウンサー(93年入社。『Live News it! Weekend』などを担当)も同じ趣味嗜好なので、よく談議しています。奥寺アナは音に関して専門家並みに詳しくて、ニュース原稿はすべて楽譜にできるそうです。

――アナウンス室で盛り上がっているんですか。

上垣 はい。皆が皆そうというわけではないですが、それぞれ自分なりの方向でアナウンサーという仕事にこだわりを持っていて、尊敬します。

――天職ですね。

上垣 アナウンサーになれて良かったです。ところで今日はこんな地味でマニアックな話で大丈夫ですか......?

――もちろんです! いつか上垣アナ司会のマニアックな番組が見たいですね。

上垣 地形図やアクセントの番組ですか? それは最高ですね。面白いだろうなぁ。実現できるように頑張ります。

取材・文/井澤 梓 撮影/榊 智朗

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