月9「海のはじまり」村瀬健Pが語る目黒蓮の魅力 現場では「オーラを消して…」

Snow Man・目黒蓮が主演を務める月9「海のはじまり」(フジテレビ系、月曜後9・0)が、多くの視聴者の感動を呼んでいる。本作は、目黒が聴力を失う青年を好演して大ヒットした「silent」(同局、2022年)を手掛けた脚本家の生方美久さん、演出の風間太樹さん、プロデューサーの村瀬健さんが再集結し、“親子の愛”をテーマにした完全オリジナルの作品。自分の子供が7年間生きていることも、これまでをどう生きてきたかも知らなかった青年と、突然自分の人生に現れた血のつながった娘の関係を中心に、人と人との間に生まれる愛と、家族の物語を描いていく。村瀬プロデューサーに、本作の手応えや、目黒の魅力を聞いた。

印刷会社で働く月岡夏(目黒)は現在、百瀬弥生(有村架純)と交際している。ある日、大学時代に交際していた南雲水季(古川琴音)が亡くなり、その葬儀で夏は海(泉谷星奈)という1人の少女に出会う。彼女は自分と水季の間に生まれた子で、7歳になろうとしていた。

一方、弥生はかつて交際していた恋人の子を身籠り、その後、中絶。弥生はこの過去にずっと苦しんでいる。水季は妊娠がわかった後、中絶をするつもりで病院に来ていたが、そこである女性が書いた文章を読み、出産を決意する。それは弥生が書いたものだった。

津野晴明(池松壮亮)は夏と別れた水季が働いていた図書館の同僚。海を預かったり、保育園の迎えに行くなど、多くの面で2人を支えてきた。水季の葬儀で、海がひとりぼっちにならないようにそばにいるときに偶然、夏と出会う。名前だけ聞いていた海の父親と初めて対面した津野は、彼が水季の事情を何も知らないことを知り、複雑な感情を抱いた。

――本作の手応えを伺いたいと思います

「今回はオリンピックもありましたし、夏クールはただでさえ皆さん家にいない時期なので、ゆっくり落ち着いて見るドラマをやるというのは、秋とか冬より難しいんじゃないかと思っていました。『silent』『いちばんすきな花』をやってきたこのチームの作品は“じっくり見てください”というタイプのドラマなので夏にどうかなと思っていたんですけど、思いのほか皆さんじっくり、ゆっくり見てくださっていて、ありがたい限りです。

おかげさまで、すごくいい手応えを感じてます。最初の発表の時点から僕は一貫して『暗くて重いドラマではないです』と言っていたのですが、視聴者の皆さんからは想像以上に『暗くて重い』と捉えられてしまったようで、少し驚きもありましたが、時間をかけてこのドラマの世界観を皆さんに見て頂いてきて、流れているのは『温かい涙』だというところにたどり着けているんじゃないかと思っています。特に6話は“第一部完”というか、それまで描いてきた全登場人物の物語が一つにつながっていく回だったので、そこにたどり着いたところで『おおお!』って思ってもらえたんじゃないかなと思います。

僕は1~3話までは、そんなに重くて暗いと捉えられる内容ではないかなって思っていたんです。海が生きていたということを、希望と捉えていただけると思っていましたが、やはり死がテーマにあるため、重く捉えられる方もいらっしゃるんだなと思いました。6話で弥生の中絶が実は海の誕生につながっていた、というところまで描かれ、ちょっと皆さんに心穏やかに見てもらえるようになったように感じます」

――演出のこだわりは?

「今回は風間太樹監督、高野舞監督、ジョン・ウンヒ監督の3人で撮っています。

風間監督は『silent』、高野監督は『silent』と『いちばんすきな花』、ジョン・ウンヒ監督は『いちばんすきな花』でドラマ監督デビューをしてもらった方。3人とも僕がものすごく信頼している監督たちで、いい意味でそれぞれ違った持ち味があるんですよね。3人とも生方さんの脚本を撮ってきたというのも大きいです。僕も生方さんも3人の持ち味をよく知っているので、この監督が撮る回だからこうしよう、というふうに若干の“監督当て書き”をしていたりもします。

それぞれの監督の持ち味を発揮できるように、早い段階から1、2話を風間監督、3話を高野監督、4話をジョン監督、そして二巡目で5話・風間監督、6話・高野監督、7話・ジョン監督…というように、ローテーションを決めて本を作ってきたので、生方さんの中では若干の当て書きをしてくれていると僕は感じています。

各監督ごとくに名シーンを選ぶとしたら、風間監督は何と言っても1話のお葬式会場の外で、大竹しのぶさん演じる朱音が、夏に『想像はしてください』というシーン。一瞬の静寂から音楽が流れる演出が、『silent』に通ずる部分がありますよね。3話のラストで、back numberの主題歌に乗せて、夏と海が浜辺で語るシーンは、高野監督らしい優しさと誠実さがあふれていて、素晴らしかった。ジョン監督はなんといっても、7話での津野くんの描き方。中でも、(水季が亡くなったことを知らされる)電話のシーンは圧巻でした。

実はあのシーン、台本では津野が『はい』と返事をするところで終わってるんですよ。訃報の電話ってなんかわかるじゃないですか。あの時、多分津野くんは電話が鳴った時に、何かを感じていたのでしょうね。ジョン監督から『村瀬さん、これは“はい“で終わっていいですか?』と聞かれ、僕は『うん。“はい“が欲しいので、“はい”まであれば大丈夫』って言ったんですよ。で、蓋開けたらああなっていて、あまりに良かったんで、まるまる全部残しました(笑)。

生方さんの脚本の特徴の一つとして、電話のシーンで相手を見せるか見せないかというのがあります。脚本の決定稿には、それがしっかり書いてあるんです。まず、生方さんが書いてきた本をプロデューサーの僕とその回の監督が読み、それぞれ思ったことを言いながら、いろんな意見を言い合って作り上げていきます。電話シーンは、相手を見せるか見せないか、しっかり話し合うんですよ。生方さんの狙い、そして監督の狙い、そういうのをしっかり話し合って決めていっています。 電話一つ取ってもそこの見せ方をものすごくこだわっています。

ちなみに『silent』『いちばんすきな花』でもやったんですけど、基本的に電話の向こう側の声は、事前に録音したものを流すのではなくて、その俳優さんにその現場に来てもらい、実際に電話をしてもらって撮っています。『silent』の時に川口春奈さんと鈴鹿央士さんに同じスタジオ内で電話をしてもらい、それを同時に撮影したことで素晴らしいシーンが生まれた経験がこのチームにはあるんですよね。このやり方で特別なものが生まれると知ったきっかけでした」

――目黒さんの演技が話題になっています。改めてこの作品で感じた目黒さんの魅力を教えてください

「Snow Manにいるときの目黒さんって、めちゃめちゃかっこいいじゃないですか(笑)。現場でSnow Manが出ている音楽番組を見たりするんですけど、目の前にいる夏とは本当に違う(笑)。目黒さんは夏を演じる時はオーラを消しているんでしょうね。“ただの人”を見事に演じてもらっています。皆さんは、夏に対して頼りないと思うことが多々あると思いますが、そういう役を本当に見事に演じています。たぶん今、日本で一番キラキラした男である目黒蓮がそれを演じているって、そもそもものすごいことだと思います。

また、これは目黒さん本人にも言ってるのですが、今回の作品は共演者が全員すごい豪華。目黒さんは、有村架純さん、大竹しのぶさん、古川琴音さん、池松壮亮さんというものすごく芝居の上手な役者さんたちと対峙し、どんどん良くなっていますよね。また、泉谷星奈ちゃんは大人の役者には出せない良さがあって、星奈ちゃんと芝居しているのも、きっといい刺激と経験になっているんじゃないかなと思います。極めつけは、田中哲司さん。実のお父さんが登場し、しかもそれが田中さんという。また一人、ものすごい役者さん一対一で向き合ったことで、また一つ成長している感じがしますね」

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