映画『室井慎次』新作、「スピンオフなのに異例の2部作」となった背景 柳葉敏郎はフジテレビの路線変更に困惑も
「もう室井が嫌だったから、断ろうと思いました」──映画『室井慎次 敗れざる者』(10月11日公開)の主人公・室井を演じた柳葉敏郎(63才)は、公開初日に行われた舞台挨拶で、オファーを受けたときの心境をこう語った。
12年ぶりの『踊る大捜査線』シリーズの新作は、公開4日間で観客動員約34万5000人、興行収入約4億9000万円という好調な滑り出しを見せた。だが、ここにいたるまでには、柳葉を困惑させる経緯があったようだ。
『~敗れざる者』は、警察を早期退職し、家族と穏やかに暮らす室井が、過去の事件に関連する死体を発見することから始まる物語だ。舞台は、柳葉自身の故郷でもある秋田。室井と、彼の養子の少年2人との、静かな「家族のドラマ」だ。『踊る』シリーズの過去の映像もふんだんに使われている一方、主人公・青島俊作を演じた織田裕二(56才)の名前はクレジットさえされていない。
「フジテレビとしては、この映画のヒットで織田さんをもう一度担ぎ出し、さらに次の作品を制作したいという思惑があるようです」(芸能関係者)
過去作のような手に汗握るスリリングな展開を期待していた観客からは、「物足りなかった」という声もあがるが、それは“次”に取ってあるのだろう。11月15日には、第2部『室井慎次 生き続ける者』が公開される。
「スピンオフにもかかわらず2部作という珍しい作りになっているのには、初め多くの映画関係者が『?』という反応でした。
そもそもこの企画は、当初は有料動画サービスの連続ドラマとして配信される予定だったそうです。ところが、フジテレビの内部で“ドル箱の『踊る』シリーズを、視聴者が限られる動画サービスだけにするのはもったいない”という声があがり、途中で劇場公開作品に方針変更したのです。
つまり、もともとドラマ配信に耐えうる長丁場の脚本や撮影体制を用意していたために、その内容を映画1本に押し込むことができず、異例の2部作になったのでしょう」(前出・芸能関係者)
柳葉は2006年、長女の小学校入学を機に、12才年下の妻とともに故郷である秋田県にUターン移住した。現役バリバリの45才にもかかわらず移住を決意した理由は「家族との自由な時間を大切にしたい」というもの。実際、ここ数年も連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK)への出演などはあったが、かなり仕事をセーブしている。
「芸能活動を引退したわけではありませんが、以前のようにどんどん仕事を受けたいという姿勢でもない。柳葉さんとしては、配信作品のように視聴率などで一喜一憂しない環境でじっくり作品づくりをするのがちょうどよかったのでしょう。結果的に局側の都合に踊らされ、不可解な路線変更で、観客動員数や興行収入で競わせられる世界に投げ込まれることになり、困惑もあったようです」(別の芸能関係者)
フジテレビに制作の経緯について尋ねると、「詳細についてはお答えしておりません」という回答だった。劇中の室井も、秋田でのスローライフから一転、最前線に担ぎ出される。室井の苦い表情が、柳葉本人の心情と重なって見えるのは気のせいか。
※女性セブン2024年11月7日号
10/24 07:15
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