『笑点』『のど自慢』『新婚さん』も!長寿番組にもテロップの波 その狙いとは? 

『笑点』にもテロップが!(番組公式サイトより)

 テレビ番組に欠かせない「テロップ」。特に今やバラエティ番組には必要不可欠と言ってもいいほど多用されている。時には演者の顔が一部隠れてしまっても表示させるケースも見受けられる。だがここ最近の傾向として、頑なにテロップを使ってこなかった番組でも、その波が押し迫っていることを感じさせる。 

 例えば『笑点』(日本テレビ系)「大喜利」のコーナー。再来年で放送60年を迎える大長寿番組だが、2022年に一大改革がおこなわれた。それが、右上にお題が載るようになったことだ。13日放送では「──モン──キョウで短い文」「『♪困っちゃうな~』と歌って一言」「人力車夫が福岡県を案内」という3つのお題が掲出されていたのだ。 

 ちなみに前半の演芸コーナーが終わったあとのCM前テロップは、それまでは「引き続き大喜利をお楽しみください」だけだったのが、今では「このあと大喜利 昇太がギョーザに見える!?」(同じく13日放送分)など、このあと始まる「大喜利」の具体的な見どころが表示されるようになっている。 

 これを分かりやすいか、それとも邪魔に感じるかは個々人によって違うだろう。長年のファンでも気にならないという人もいれば、逆に楽しめないという人もいるかもしれない。今やトーク番組でも、写真を添えて補足したり、あるいは状況が一目で分かるイラストで補ったりするなど、視聴者が極力「考えない」「頭を使わない」作りになっている。昨今クイズ番組が少なくなっている背景には、そんなこともあるのかもしれない。 

『笑点』よりも分かりやすくなっているのが、71年の歴史を誇る『のど自慢』(NHK)だ。かつては左上に時計表示のテロップしかなかったのだが、今や右上には「兵庫県豊岡市」といったような「開催場所」と「生放送」というテロップ、右下には「オトナブルー(新しい学校のリーダーズ)」といったような、曲目とアーティスト名、そして左下には「地元の高校1年生 ダンス部 歌とダンスで盛り上げます!」と、いま歌っている出場者のプロフィールが添えられている。 

 他には「去年 小学校教諭を定年退職 夫が薦めてくれた歌で出場」「64歳 建設業 高齢者施設の慰問で必ず歌う1曲」など、これから歌う歌への思いなども記されていることがある。 

 ちなみに構成もだいぶ変わっている。以前までは、牧歌的な鐘の音による『のど自慢』のテーマソングが流れ始め、手拍子をしながら出場者が1人ずつ行進し、登場。迎え入れる会場の客の表情などもおさえながら、出場者がステージに一列に並んだあと、そのグループショットを左から右へ、たっぷりと見せる。しばらくしてテーマソングが終わった後、ようやく司会が登場し、この日の開催場所を報告し、ご当地の名産品などを紹介…といったように、ゆったりとした展開だった。 

 だが今や、おなじみのテーマソングは流れながらも、ステージには司会、出場者、そしてゲストの歌手全員がすでに集結。「日曜お昼はのど自慢!」とみんなで掛け声をかけ、開催場所を告げ、ゲスト歌手を紹介。番組開始1分もしないうちに1組目の出場者が歌い始めるという、スピード感あふれるものとなっている。詳しいご当地紹介は2組が歌い終えたあとに始まる。 

 いかに分かりやすく、見やすく、そして視聴者を離さないかという点について、NHKでさえも苦慮しているようだ。 

 こうした出場者のプロフィール紹介は、同じ素人参加番組『新婚さんいらっしゃい!』(テレビ朝日系)でも取り入れられている。かつては画面に、テロップが何もなかった時代もあった。当然、新婚夫婦の名前もなかった。 

 しかし今では、一番上に新婚夫婦のキャッチコピーとそれぞれの名前と年齢、さらにどこから来たのかが表示されている。そして大きく変わったのは左画面。「出会いは高校の部活」「部活中にドキドキ密着」など、トーク内容が縦一列に大きく表示されているのだ。 

 以上挙げた番組はいずれも、画面にテロップがないことが当たり前の時代に生まれた番組だ。そしていずれもF3(50歳以上女性)、M3(50歳以上男性)の視聴率が圧倒的に高いことで知られる。コア視聴率、個人視聴率重視という時代の要請を受けて、テロップを駆使し始めた3番組。一体どれほどの効果があるのだろうか? それでも0.1%を削り出すべく、涙ぐましい努力が続いているのだ。(芸能ライター・玉置天津) 

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