『every.』卒業発表の陣内貴美子氏、14年半続けられた背景に努力を惜しまない“アスリート魂” 「喉を守るため1年中ストール」「“勉強ノート”を常に持ち歩く」

『news every.』のメインキャスターを卒業する陣内貴美子(インスタグラムより)

 元バドミントン選手でタレント、キャスターとしても活躍する陣内貴美子氏(60才)。『news every.』のメインキャスターを卒業することが明らかになった。陣内氏が14年半もメインとして求められ続けたのはなぜか? 放送作家でコラムニストの山田美保子さんが解説する。

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「今月27日をもって『every.』を卒業することになりました」

9日、14年半も出演した『news every.』(日本テレビ系)からの卒業を自ら発表したのは、同番組メインキャスターの陣内貴美子氏だった。

「番組が始まったばかりの頃は、スポーツだけをやってきた私が報道の分野で役にたてるんだろうかと、毎日不安を抱えていました」 

これに近い言葉を筆者は度々陣内氏本人の口から聞いたものである。

「もしも私がテレビを見ている側だったら、『なんで、こんな人が出ているんだろう』と思うだろうなって。私はバドミントン選手だったのでスポーツのことなら何とか話せるのですが」

後に記すが、この謙虚さと真面目さが陣内氏を『~every.』が14年半もの間、手放さなかった最大の理由だと思う。

9日の放送でも氏は続けて、「それでも『every.』の仲間やスタッフが私の居場所を作ってくれて、14年半という長い間、番組に出演することができました」「地震やコロナウイルスなど困難なことがたくさんありましたが、発する言葉一つで人の心に寄り添うことも傷つけることもできてしまうと知り、伝える言葉の重さと大切さを学びました」「間もなくゴールを迎えますが、『木原さ~ん、そらジロー』と全力で呼びかけつつ、見守ってくださった視聴者の皆さんに心をこめて、言葉を発していきたいと思います。残り3週間、どうぞよろしくお願いします」

この長文を原稿に目を落とすこともなく、一気に話し終えた陣内氏。自分の想いだけでなく、テレビの前にいる視聴者に寄り添い、気象予報士の木原実氏や番組のキャラクター、そらジローの名前や、おなじみの呼びかけも盛り込んだ完璧なコメントだった。

年下の共演者からは「every.のお母さん」

これはまるで、コロナ禍、藤井貴彦アナが視聴者に呼びかけ続けた真摯かつ温かみのあるメッセージとそっくりではないか。

そんな藤井アナが今年3月22日、14年間メインを務めた『~every.』を卒業した日のラストメッセージも甦ってきた。

「自分のことを言うことが苦手」「誰かの背中を押すことしか自分にはできないのかなと。だから一緒にいる仲間がすごくありがたかったです」と感謝を伝えた後、藤井アナは突然、
「特に陣内さん、本当に……」と彼女のほうを向き、「陣内さんがいなかったら私、『news every.』、14年間、やれなかったと思います」「結婚してるわけじゃないんですけど、本当に仲良くさせてもらって」と涙目で照れ笑いをした藤井アナ。

年少の共演者たちから「every.のお父さん」と呼ばれていたのが藤井アナ、そして「every.のお母さん」と呼ばれていたのが陣内氏だった。

その二人が半年と間を置かずに卒業してしまう。9日の氏による卒業コメントの後、堪らず入ってきたのは鈴江奈々アナで、「私たちが陣内さんに支えてもらっているので、たくさん感謝の気持ちを伝えたいんですけど、このタイミングで視聴者の皆さんにお伝えしたのも、『パラリンピックが閉幕したら』という陣内さんの強い想いがあって」と説明。「27日まで引き続き全力でお願いします」と言い、互いに頭を下げ合っていた。

 藤井アナに代わって、徳光和夫氏をはじめ同局のOBが「No.1」と絶賛する鈴江アナと、『スッキリ』で加藤浩次に鍛えられたオールマイティーな森圭介アナがメインとなり、斎藤佑樹氏や桐谷美怜らも加え、明らかな若返りを図った4月からの『~every.』。

 そんな彼らの重石となっていたのが陣内氏であり、多くのスタッフと共に番組を作り、伝える、いわば“団体戦”の監督をスタジオの内外で担っていたのも陣内氏であるように私には見えていた。

 とは言え、「お母さん」と呼ばれていたように、優しく見守るような面もあった陣内氏。振り返れば、バドミントンの後輩選手の不祥事や事故を伝えなければならないこともあったし、共演者の謹慎や、それが理由になった卒業もあったので、「お母さん」としては、気をもむことも多々あっただろう。

勉強し、熱心に取材を欠かさなかった

 そして、スポーツキャスターとして全種目の全選手のいいことにも悪いことにもコメントをする際、氏の言葉を借りれば、「なんで、こんな人が…」と一瞬でも視聴者に思われないよう、勉強し、熱心に取材を欠かさなかったのも陣内氏。

 実は“喋り手”としても、ともするとアナウンサー以上に努力と勉強をしており、喉を守るため、一年中、首にストールを巻き、正しいアクセントや、人名の読み方、ニュースのポイントなどをびっしりメモしたノートを持ち歩いている。やはり、根っこにあるのはアスリート魂なのである。

 還暦を迎えた今もチャーミングでスタイル抜群。現役時代、「バドミントン界のキョンキョン」と評したのは明石家さんまだが、恐らく、小泉今日子のように小顔でアイドルのようなルックスから、そう呼んだのだろう。

 ゆえに、氏のことをアナウンサーだと思っている若い視聴者も少なくないのである。テレビ局としては、本物のアナウンサーや報道局の記者らが年齢を重ね、陣内氏のように「お母さん」的存在として番組に残ってくれることが理想だと思う。だが日テレだけでなく、各局そういう女性はなかなか居ない。背景に様々な理由はあるものの、少なくとも陣内氏は、年下の男性スタッフや共演者に変な気を遣わせる存在ではなかったと思う。どちらがいい悪いは置いておいて、ここまで長く多くの年下スタッフとうまくやってきたのは、やはり陣内氏が謙虚で真面目だったからに他ならないのである。

 番組の外では、「オグシオ」の“オグ”こと小椋久美子氏をはじめ、コメンテーターやスポーツキャスターをしている後輩の仕事にも目を配り、関係者に「よろしくお願いします」と頭を下げ、何かにつけて、食事会や飲み会を開いてやるのも陣内氏。その証拠に、女性アスリートらがSNSにアップする食事会の集合写真の多くに笑顔の氏が加わっている。

夫が経営する店の“名女将”でもある

 プライベートでは、2000年に結婚した元プロ野球選手の金石昭人氏を支える良き妻であり、金石氏が経営する鉄板焼き店や寿司店の名女将でもある。

 番組スタッフや共演者、そしてシーズン中にはプロ野球選手も数多く訪れる両店に、『~every.』終了後、ほぼ毎日顔を出し、顔見知りであっても、初来店であっても、全てのテーブルを回り、「ありがとうございます」と笑顔で挨拶をする陣内氏。人気飲食店のオーナーが「ウチにもあんな女将が欲しい」と羨ましがっているのを聞いたこともある。

 

 実は先日、氏からLINEをもらった。「ニュースで御存知かと思いますが」から始まり、彼女はまた「報道番組に出演するなんて…しかもメインの席に…自分が一番向いてないとわかっていて…」と記した。そして、このような長文LINEをきっと多くの人に毎日少しずつ送っているのだろうなということも想像できた。どこまでも謙虚で真面目な人なのである。

 卒業まであと1週間。「every.のお母さん」陣内貴美子氏の珠玉のコメントの数々を心に刻みたいと思う。

◆山田美保子
『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)などを手がける放送作家。コメンテーターとして『ドデスカ!+』(メ〜テレ)、『1周回って知らない話』(日本テレビ系)、『サンデージャポン』(TBS系)に出演中。CM各賞の審査員も務める。

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