500万回超再生!ヒット曲歌唱動画で見せた「新たな中森明菜」、心理士は「マインドフルネス」に注目

4月17日には「ジプシー・クイーン-JAZZ-」が公開された(中森明菜公式YouTubeチャンネルより)

 1980年代にアイドル歌手としてデビュー、女優としても映画やドラマで活躍して今も多くのファンに愛されている中森明菜(58才)。2010年に芸能活動の休止宣言をして以降、なかなかファンの前に姿をあらわすことがなかったが、2022年8月に新しい公式ホームページと公式Twitter(現X)、2023年12月にYouTube公式チャンネルと少しずつ、活動が伝えられるようになってきた。臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、「マインドフルネス」実践との共通点を分析する。

【写真】ステージで近藤真彦と並ぶ中森明菜のレアショット。

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 公式YouTubeチャンネルから流れてくるしっとりとした歌声を聞きながら、自分の感覚にぴったりくる言葉を探した。2018年以降活動を休止していたというから、復活といえなくもないがこれまでとは全然違う。一皮むけたと言いたくなるほどの雰囲気と歌声に、出てきたのは”シン・中森明菜”だ。

 歌手、中森明菜が再始動した。59歳になる7月13日の誕生日に、ファンクラブ「ALDEA」の会員を対象にしたイベントを開催するという。彼女がライブを行ったのは2017年12月、6年半前だ。当時も復活かとメディアで騒がれたが、その後は目立った活動もなかった。歌謡界のトップにまで上り詰めていた彼女は、トラブルが続き転落してしまった。だがその歌声と才能を惜しむ声は多く、復活を期待され続けてきた。過去の栄光と周囲からの期待が重荷になったのだろうか。彼女は、メディアが取り上げても自然と表舞台から遠ざかることを繰り返してきたように思う。

 置かれた状況からなかなか回復しきれない、前を向いているようで過去から抜け出せない。その時々で報じられてきた姿を見てきたが、こちらがアイドルだった時代を重ねてしまうせいか、過去のイメージを引きずっているようでどこか痛々しく、脆くて壊れそうな感じがしたことを覚えている。

 だが見事に古い自分の皮を脱ぎ捨てたようだ。新生といったらいいだろうか。公式YouTubeチャンネル開設が告知されたのは2023年12月。新たな中森明菜がそこにいた。公開されたのは自身のヒット曲『北ウイング』のクラッシックバージョンを歌うモノクロ映像だ。4月15日の時点で580万回も再生され、反響を呼んでいる。固定マイクの前に座り、ゆっくりとバイオリンやピアノの音を確かめながら、右手でマイクを持っているかのような仕草を見せたりしながら歌いあげていく。当時よく耳にしたヒット曲が、落ち着いた大人の雰囲気を漂わせた低く響く歌声によって、まったく別の曲のように聞こえてくる。だがこれが今の彼女にぴたりと当てはまっているのだ。

 4月3日には『TATTOO』、10日には『BLONDE』のジャズバージョンを投稿、それぞれ500万回と270万回以上再生されている。これらは中森明菜デビュー42周年」特別企画with ZOZOで、5月1日のデビュー記念日に向けて、4月3日から毎週水曜日に公開されるセルフカバーの最新動画だ。こちらはジャズバージョンらしい色調の映像で、カメラ目線で笑顔も見せていた。

 映像の中でのびやかそうに心地よさそうに歌う彼女はとても自然だ。”今、ここに、あるがままに”という感じがする。何度も復活しようともがいていたようなイメージが強かったが、無理に変えようとせず、今この瞬間に意識を集中し、判断も評価もせずにありのまま、あるがままの自分を受け入れていることで気付くものがあるという「マインドフルネス」でも行ったのではないだろうかと思ったほどだ。

 臨床心理学の世界ではマインドフルネスという言葉をよく聞くようになった。イメージは禅や瞑想で、集中力を高めたりストレスを軽減させたりする方法のひとつで、パフォーマンスを上げる効果があるといわれている。肩に力を入れず、リラックスして歌う中森さんの姿は、今の自分にあった自分らしい自分を見つけて、新たな中森明菜という人生を歩み出したように思えた。

 しばらくは毎週水曜日に公開されるというセルフカバー動画でその歌声を堪能しよう。

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