爆笑問題が語る“ネット世論”との向き合い方 太田光「気にしないヤツはダメですよ。社会と繋がっているのが大衆芸能だから」

ネット上の世論も気にするという太田光

 テレビ、漫才、ラジオで時事問題に臆することなく斬り込んできた爆笑問題。時に炎上を経験しながらも、政治や社会問題を笑いに変えてきた太田光(58)と田中裕二(59)は、変わりゆく時代の中で、どのように出演番組と向き合っているのだろうか。聞き手は“テレビっ子”ライターのてれびのスキマ氏。【全3回の第3回。第1回から読む

【写真11枚】舞台上で漫才を披露する爆笑問題。他、インタビューのアザーカットも

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──時事問題も扱うバラエティ番組『サンデージャポン』(TBS系)は2001年に放送が開始しています。

太田:元々『サンジャポ』は、時事ネタにはコメントしないという話でMCを受けていたんだよね。当初は、くだらない話題が多い番組だった。でも『スタメン』と『太田総理』があって、徐々にニュースにどう思っているのかを言ってもらいたいというスタッフの要請があって、自分の意見も話すようになりました。

田中:常々感じますが『サンジャポ』は真面目な番組になってきていますよね。昔はバラエティが中心だったけど、今は自民党の裏金問題に圧倒的に食いついている。世の中の動きがそうだから、仕方ないですけど。

──太田さんの発言からは、世間で叩かれて窮地に立たされている人を救いたいスタンスを感じます。『サンジャポ』では時間が足りなくて誤解されがちですよね。

太田:まあでも誤解でもないんだよね。「信者を擁護している」って言われたけど、確かに擁護はしているんだよね。この問題に限らず、そこにしか居場所がない人、何かを信じなければ生きていけない人は一定数いる。彼らにある日突然「解散しろ」って言うのは理不尽じゃないのってこと。だからそれが果たして誤解かって言うと誤解でもないんだよね。切り取りとか時間の問題でもなくて、5分話して誤解されることを5時間話せば誤解されないかと言われればそうではないでしょう。真意のすべてが伝わるわけじゃない。

──田中さんも意見を言いたい時はありませんか。

田中:僕もたまに言いたくはなりますけど、下手なことを言っちゃうといろいろなところに迷惑がかかるから一切言わないです。

──田中さんが『サンジャポ』の進行で気をつけていることはありますか。

田中:デーブ・スペクターくらいですね(笑)。生放送なのにデーブさんが自由に話に入ってくるから、時間が足りなくてCM中にスタッフと話して調整するのが大変と言えば大変。

太田:デーブさんはああ見えて、ちゃんと構成考えて入ってくるけどね。実は流れを一番わかっている。

──放送後、SNSに視聴者からの意見や感想が数多く見られますが、ネット上の世論は気にされますか。

太田:もちろん気にしますよ。見てもろくなことはないっていうのはわかっているんだけど、気にしないほうが無理。漫才がウケたか気にするのと同じように、自分が出た番組がどのように世間に受け止められたかというのは気にします。気にしないヤツはダメですよ。社会と繋がっているのが大衆芸能だから。

──ネット上の感想や意見で嬉しかった反応はありましたか。

太田:いや、ほぼないよ(笑)。選挙特番の時とか、何を言われているのか気になって、もうノイローゼになっちゃうからね。

── 一方で、ラジオ番組にも数多く出演されていますが、テレビとは異なり、伸び伸びとした雰囲気で番組のファンを増やしていますね。

田中:やっぱりラジオはテレビとは違う感覚がありますね。どうでもいいようなことを公共の電波で言える場はあまりないですから。

太田:本当に深い話ができるのがラジオだから。俺らが一番影響を受けたのが『ビートたけしのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)なわけで。たけしさんがやってきた仕事の中で何が一番面白かったかって言ったら圧倒的に『オールナイトニッポン』。

 それに比べちゃうと、テレビではたけしさんの面白さは何分の一しか出てなかったと思うのね。テレビはチャンネルを変えさせないために面白いところだけつまんでいくものだから。

──そういう意味では、今の時代にテレビで闘い続けるというのは分が悪いようにも思えます。

田中:ラジオ番組もそうですが、他のテレビ番組もこっちから降りるみたいな感覚は一切ないです。

太田:関口宏さんみたいな?

田中:いいんだよ! あれもどういういきさつか知らないよ。

全部「老害」のせい?

──辞めるといえば、鈴木おさむさんが放送作家をお辞めになりました。

太田:あいつから、田中が「ソフト老害」で、俺は「ガチ老害」だって言われたんだよね(笑)。そういうお前はどうなんだっていう清々しさがあって笑ってしまったけど。

──若い人から“不適切”の烙印を押されるリスクとどのように向き合うのが良いのでしょうか。

太田:昔から年を取ると「クソジジイ」って言われていたし、逆に上のヤツは「今の若い連中は」って言い出す。その構図は人類が始まってからずっと続いていること。

田中:逆に世代間ギャップは時に面白かったりするしね。

太田:『ふてほど』でもクドカンはうまく描いていたけど、昭和は昭和でいいところがあって、今は今でいいところがある。若者が「パワハラ」「老害」って言っている印象もニュースによる切り取りの一部で、実際はそんなことないんじゃないのかなっていう気はするね。

田中:僕たちの頃に比べてお年寄りに優しい若者や親好きも増えている気はしますね。

太田:だから、そういう空気感に負けて「ダメだ、ダメだ」って思わないほうがいい気はしているけどね。二階俊博さんを見習おうぜ(笑)。「おまえもその年が来るんだよ、バカヤロウ」って。

田中:見習っちゃダメ!

(了。第1回から読む

【プロフィール】
てれびのスキマ/1978年生まれ。ライター。テレビ番組に関する取材を行なう。戸部田誠の名義での著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『タモリ学』(イースト・プレス)、『芸能界誕生』(新潮新書)など。

※週刊ポスト2024年4月26日号

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