堤幸彦監督、田中圭は「昔からとにかくうまい」 『私にふさわしいホテル』“昭和の男”を体現した場面写真も公開

（C）2012柚木麻子／新潮社　（C）2024「私にふさわしいホテル」製作委員会

　のん主演の堤幸彦監督最新作『私にふさわしいホテル』（12月27日公開）より、のん演じる新人作家・加代子の担当編集者・遠藤役の田中圭が、堤監督の求める昭和の男を見事に体現した姿を捉えた場面写真が解禁。併せて、コミカルな役からシリアスな役まで変幻自在に演じてきた田中の魅力や、本作での見どころに迫る。

　本作は、柚木麻子の同名小説を映画化した文壇下剋上エンタテインメント。新人賞を受賞したにも関わらず、未だ単行本も出ない不遇な新人作家・中島加代子（のん）。その原因は、大御所作家・東十条宗典（滝藤賢一）の酷評だった。文豪に愛された「山の上ホテル」に自腹で宿泊し、いつかこのホテルにふさわしい作家になりたいと夢見る加代子は、大学時代の先輩で大手出版社の編集者・遠藤道雄（田中圭）の力を借り、己の実力と奇想天外な作戦で、権威としがらみだらけの文学界をのし上がっていく。

　本作で田中は、新人賞を受賞したにもかかわらず、未だ単行本も出ない不遇な新人作家・加代子（のん）と大御所作家・東十条宗典（滝藤）の担当編集者・遠藤道雄を演じている。遠藤は裏で策略を練り、時には味方、時には敵にもなる、一筋縄ではいかないキャラクター。憎らしいところもあるが、頼りたくなるような信頼感を持ち合わせる役柄だ。

　今年映画とドラマで7本の作品に出演し、引っ張りだこの田中は、これまでも多くの異なる役を演じてきた。2016年から2024年まで長きにわたって放送されたドラマ『おっさんずラブ』（テレビ朝日系）では、女性にはモテないが人懐っこく、みんなに愛される子犬系男子・春田創一役で、社会現象を巻き起こすほどの人気を獲得。また三谷幸喜監督作『記憶にございません！』（2019）ではどこか抜けたところのある職務熱心な警官、瑠東東一郎監督作『Gメン』（2023）ではお茶目なリーゼントヘアーのヤンキー役をコミカルに演じ、笑いを誘う演技でも印象を残した。

　さらにコミカルな役柄にとどまらず、前田哲監督作『そして、バトンは渡された』（2021）で心優しい義理の父親役、城定秀夫監督作『女子高生に殺されたい』（2022）で女子高生に殺されたいという願望を持つ高校教師役、水野格監督作『あの人が消えた』（2024）では主人公の頼りになる先輩配達員役など、真面目な役やシリアスな役まで幅広い役柄をこれまでに演じてきた。

　そんな田中が本作で演じる遠藤は、常にクールで飄々（ひょうひょう）としている一方、カラオケで熱唱したり、時折見せる笑顔などで人間味を垣間見せるキャラクター。田中の多面的な演技が光る役柄だ。遠藤の内に秘めた編集者としての野心が、表情などからにじみ出るところが見どころとなっている。

　堤監督は、田中について「付き合いも長く、ドラマも映画も一緒にやりましたが、昔からとにかくうまい方という印象です。遠藤には、『売れてなんぼ』という信念もあり、ヒットの力学と個人の究極の芸術である文学との狭間で生きている人。多分彼も大学の時は小説を書いていたけれども、早々に筆を折って編集者になったのかもしれない。その歪みみたいなものが、田中さん演じる遠藤の目線から見えるんです」と、その演技力に太鼓判を押す。

　今回解禁された写真には、遠藤が、オフィスで電話をする姿や、山の上ホテルにいる場面などを収めている。豊富なキャリアを誇る田中が、どこか昭和の雰囲気を漂わせながら、多面的な遠藤という役に一層の深みを与えていることが感じ取れる写真の数々となっている。

　映画『私にふさわしいホテル』は、12月27日より全国公開。