神木隆之介、「ちょっと弱気…」「どういうこと?」“若きベテラン”が抱えるプレッシャー
(C)TBSスパークル/TBS 撮影:佐藤俊斗
10月20日スタートの日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系/毎週日曜21時)。『アンナチュラル』(2018年)、『MIU404』(2020年)など数々のヒット作を生んだ、脚本・野木亜紀子×監督・塚原あゆ子×プロデューサー・新井順子が再集結する作品ということで、第1報から大きな話題となっている。今作の主演を務めるのが、俳優・神木隆之介だ。巨大すぎる期待を背負う若きベテラン俳優は、放送目前の今何を思うのか。作品への思いをたっぷりと聞いた。
本作は、1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島と現代の東京を舞台にした、70年にわたる愛と友情、そして家族の壮大な物語。戦後復興期から高度経済成長期の“何もないけれど夢があり活力に満ちあふれた時代”にあった家族の絆や人間模様、青春と愛を紡ぐと同時に、現代の“一見して何でもあるけれど若者が夢を持てない時代”を描き、過去から現代に通じる希望を描き出す完全オリジナルのヒューマンラブエンターテインメントだ。神木は、端島の炭鉱員の家で生まれ育った明るくまっすぐな主人公・鉄平と、現代の東京に生きる冴えないホスト・玲央(れお)を演じる。
■31歳での日曜劇場主演には「ちょっと弱気なところも」
今回、神木の主人公への抜てきは制作陣の満場一致だったという。実際にオファーを受けた際の心境はどうだったのか。「お話をいただいて、すごく嬉しい気持ちと、大きなプレッシャーもありました。実際に野木さんや塚原監督、新井Pにお会いして、疑問点や仮の台本の時点で何を思ったかを伝えさせていただいて、すごく親身にすべて答えていただけました。話している時の塚原監督たちの目が自信に満ちあふれていたのが印象的だったんですよ。信念を持って、私たちはこうしたい、こういうことを表現したいっていう強い意思をその時強く感じて」。
プレッシャーとなったのは、本作の放送枠に掛かる大きすぎる看板のせいでもあった。「日曜劇場というと『集団左遷!!』や『あいくるしい』に出演させていただいて。『集団左遷!!』なんか、当時の事務所の大先輩の福山(雅治)さんが真ん中に立って、みんなを引っ張っていく姿を見ているので、(日曜劇場の主演は)役者として、アーティストとして、表現者として培(つちか)ったものがある方が背負う重いものだって思っていました。まさか31歳で僕が選ばれると思っていなかったので、正直不安というか、ちょっと弱気なところもあったんです。でも、塚原監督たちの目を見て、僕はこの人たちについていこうって思えて、参加させていただきますというお返事をしました」。
“31歳で”とはいうものの、子役時代から第一線で演じ続けてきた神木は来年で芸能生活30周年を迎えるベテランだ。これまでの経験が本作に活かせそうかという問いには「『挑戦してみよう』って思うことはあります」と明かす。「塚原監督の撮り方のせいか、演じていて、ドラマだけどドキュメンタリーっぽさも感じるんですよね。セリフを変えていいって言われているんですよ。『(役同士の)関係性で、会話のテンポももちろん変わるよね。だから変えていいよ。何かしながら喋っていいし、相手が喋っている時に喋りたかったら喋っていい。相づちも打っていいよ』と言ってくれる。なかなかそういう現場がないんです。ドラマのキャラクターではあるけど、実際にそこで生きた1人の人間として、その心の動きの生々しさを表現できたらいいなって。それは今まで僕もなかなか挑戦できていなかったことなので、今回は思いっきりやってみようと思いました」と少し特殊な撮影環境での挑戦を誓った。
■キャリア初の“一人二役”に「どういうこと?」
ベテラン俳優・神木隆之介だが、本作では初の“一人二役”に挑む。「純粋に、一人二役ってどういうことですか? と思いました」と初めて脚本を読んだ時のピュアな感想を教えてくれた。「端島パートの舞台は、僕が生まれる前の高度経済成長期、人口が最大で5000人ぐらいの小さな島。限定された空間の中での人間関係っていうのは、多分特殊なものもいっぱいあると思うんですよ。その島ならではの悩みや、はたまた喜びや安心を理解するのはすごく難しかったです。各キャラクターとの関係性や、各キャラクターが持っている葛藤がやはり難しいなと思いましたね。1つの表現じゃ多分ダメなんだなっていうか。なんて言うんでしょうね……悩みがいくつも絡まってるような。繊細な表現が必要とされてくる作品なんだろうなって」。
高度経済成長期の端島を生きる鉄平について、神木は人気コミック『ワンピース』の主人公、ルフィのようなキャラクターだと語る。一方で、現代の東京でホストをしている玲央は「まったく無気力、無感動、無関心の男」ととらえていることを明かしてくれた。「役作りは、監督たちから言われた言葉を、自分の第一印象でこういう喋り方かな、こういう姿勢なのかなっていうのを現場で実際やってみて、やりながら構築していってっていう感じですね」。
ちなみに、自身はどちらのキャラクターに近いかという問いには「テンションが上がるとルフィっぽいですけどね。家で引きこもってると、本当に堕落した生活になりますからね(笑)。僕、しばらく休みが続くと朝6時とかに寝るようになっちゃう。昼夜逆転になってて。だから基本は鉄平ですけど、チラチラ玲央が見える感じ。両方持ってるので良かったですけどね。どっちも分かるので」と答えてくれた。
■無人の端島に息づくかつての活気を感じ取り……表現者として熱い思いを語る
本作の撮影のため、自身も実際に端島に赴いたという神木。「迫力あります。初めて行ったんですけど、軍艦みたいなシルエットが急に出てくるんですよね。その時に鳥肌が立つんです。なんか、異空間に行ったような……今は入れるところが限定されていて、まったく奥に入れない状態で。建物は残ってるけど、壁沿いに緑が生い茂ってる感じなんです。今、もちろん誰も住んでないですし、危険区域もいっぱいあります。ただ、活気はあったんだろうなっていう面影がなんとなくあるんですよね。ここにいた人たちって多分、楽しい活気があったんだろうなって。なんとなく生き生きはしてるなって思いました」と印象を語る。
端島を初めて本格的にドラマで描く本作。神木自身、その正式名称は本作を通して初めて知ったという。「今は“軍艦島”と認識されていて皆さん知ってはいるけど、どんな島だったのか、どういう方たちが当時過ごして暮らしていたかっていうのは、あまり知らないと思う。僕は知らなかったんです。このドラマを通して、当時の生き生きとした時代の中でどういう人間ドラマが生まれていたか、そして時代とともにどんなふうに駆け抜けていったかっていうのを見ていただけたら。僕らも今、撮影で一生懸命頑張って表現しているところなので。そしてパートが変わり、現代の方でももちろん見どころがいっぱいあるので、同時平行で楽しんでいただけたら嬉しいなと思っております!」と熱く呼びかけた。(取材・文:小島萌寧)
日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』は、TBS系にて10月20日より毎週日曜21時放送。
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