「悪寒が全身を這い回った」「観る側が問われ続ける作品」 『ありふれた教室』絶賛コメント&イラスト到着

映画『ありふれた教室』場面写真

(C)if… Productions/ZDF/arte MMXXII

 第96回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたドイツの新鋭イルケル・チャタク監督最新作『ありふれた教室』(5月17日公開)より、内藤瑛亮、アキラ100%、武田砂鉄らによる絶賛コメントが到着。また、榎本マリコ、柳智之によるイラストも公開された。

 “学園もの”の映画について誰もが連想するのは、教師と生徒の心温まる交流をつづった感動作、少年少女の友情や成長を描いた青春ドラマなどだろう。ドイツから新たに届いた本作は、まさしく現代の中学校を舞台にした学園ものだが、このジャンルのポジティブなイメージを根こそぎ覆す破格の問題作だ。ある新任女性教師の視点で進行する物語は、校内で発生した小さな事件が予想もつかない方向へと激しくうねり、わずか数日間で学校の秩序が崩壊してしまう異常な事態へと突き進んでいく…。

 仕事熱心で正義感の強い若手教師のカーラは、新たに赴任した中学校で1年生のクラスを受け持ち、同僚や生徒の信頼を獲得しつつあった。そんなある日、校内で相次ぐ盗難事件の犯人として教え子が疑われる。校長らの強引な調査に反発したカーラは、独自の犯人捜しを開始。するとカーラが職員室に仕掛けた隠し撮りの動画には、ある人物が盗みを働く瞬間が記録されていた。

 やがて盗難事件をめぐるカーラや学校側の対応は噂となって広まり、保護者の猛烈な批判、生徒の反乱、同僚教師との対立を招いてしまう。カーラは、後戻りできない孤立無援の窮地に陥っていくのだった…。

 本作は、第73回ベルリン国際映画祭パノラマ部門でワールドプレミアされダブル受賞を果たしたのを皮切りに、ドイツ映画賞最多5部門(作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、編集賞)の受賞を達成。米辛口映画レビューサイト「ロッテン・トマト」では、96%FRESHという高得点を獲得した。さらに、世界の映画祭を席巻し、本年度の第96回アカデミー賞国際長編映画賞ノミネートを果たした。

 これが長編4作目となるドイツの新鋭イルケル・チャタクは、教育分野で働くさまざまな人々へのリサーチを行い、自らの子供時代の実体験も織り交ぜてオリジナル脚本を執筆した。誰にとっても馴染み深い学校という場所を“現代社会の縮図”に見立て、正義や真実の曖昧さをサスペンスフルに描ききったその試みは、ミヒャエル・ハネケやアスガー・ファルハディといった名匠の作風を彷彿とさせる。

 主演のレオニー・ベネシュは、ハネケ監督の代表作『白いリボン』で注目され、『THE SWARM/ザ・スウォーム』『80日間世界一周』などのテレビシリーズで活躍する実力派女優。次々と重大な選択や決断を迫られるカーラの葛藤を生々しく体現した本作でドイツ映画賞主演女優賞の受賞を果たし、ヨーロッパ映画賞女優賞にもノミネートされた。

 本作が追求した多様なテーマは、教員のなり手不足や過酷な長時間労働、モンスター・ペアレンツなどの問題がしばしば報じられる日本社会とも無縁ではない。教育現場のリアルな現実に根ざし、世界中の学校やあらゆるコミュニティーでいつ暴発しても不思議ではない“今そこにある脅威”を見事にあぶり出す。

 この度、本作を鑑賞した著名人たちより、第2弾応援コメントが到着した。映画監督の内藤瑛亮は「この映画は冷徹な回答を差し出す。ラストカットを目にして、悪寒が全身を這い回った」と驚がくのラストを絶賛。教員免許を持っているお笑い芸人のアキラ100%は「これは【学校】だけじゃない、誰にも起こる物語だ」と本作の題材が他人事とは思えないほどだと声を寄せた。他、樋口毅宏、ISO、榎本マリコ、柳智之、マライ・メントライン、武田砂鉄、小野正嗣、長島有里枝らから、絶賛のコメントが届いた。また、イラストレーターの柳知之、画家の榎本マリコからは、コメントと併せてイラストレーションも到着。柳は真っすぐこちらを見つめるカーラを描いており、彼女の意味深な眼差しに目が合うと吸い込まれそうになる。榎本からは、カーラが生徒たち起立させるシーンを連想させる、彼女の後ろ姿を切り取ったイラストが寄せられ、まるで「正しさ」と「歪み」が共存しているかのような物差しも印象的だ。

 映画『ありふれた教室』は、5月17日より全国公開。

※著名人コメント全文は以下の通り。

<著名人からのコメント>

■樋口毅宏(ハードボイルド育児作家)

大傑作! 最高! 凄い! 面白い!
息詰まる緊張感。「正しさ」と「民主主義」が衝突し、教室は戦場に変わる。小さくても独立した「個」が尊重される国ゆえに、甘口の着地にはならない。問題作にして名作!

■ISO(ライター)

政治腐敗、メディアの暴走、法の欠缺、差別に分断…問題が山積する国家の脆弱さを、鋭利な脚本が寓話を通じ白日の下に晒す。まさか中学校の窃盗事件を題目に、これほど心掻き乱されるスリラーが生まれるとは。

■榎本マリコ(画家)

“正しさ”とは、向けられた人の物差しによって時に凶器にもなり得ることを見せつけられた。
学校という特殊な場所においても、結局"本当の正しさ"など誰も教えてはくれないし、存在しないのかもしれない。

■柳智之(イラストレーター)

1と0.999...は同じか? という問いがある
私たちはその不確かな狭間で動揺して理解を拒み、憎しみを募らせたりする
学校という箱の中は世界という象徴で満たされていて
この作品を考えることは世界を考えることに繋がる
傑作だと思います

■マライ・メントライン(ドイツ公共放送プロデューサー)

極端化が進むご時世、「ごく普通の」生き方はバランスの崩れた「何か」に遭遇することで、無自覚に確実に破滅コースに陥ってしまう! という、現代人の多くが内心抱えている恐怖を最高の表現で具体化した傑作!

■武田砂鉄(ライター)

先生の都合、保護者の都合、生徒の都合。
先生の主張、保護者の主張、生徒の主張。
すべて正しいように見える。
すべて間違っているように見える。
観る側が問われ続ける作品だ。

■内藤瑛亮(映画監督)

求めれば求めるほど、正義は遠ざかっていく。
「じゃあ、どうすれば良かったのか?」と戸惑う観客に、この映画は不条理で冷徹な回答を差し出す。ラストカットを目にして、悪寒が全身を這い回った。

■小野正嗣(作家、フランス文学者)

教育を守る、職場を守る、名誉を守る、仲間を守る、わが子を守る、母を守る……。異なる正義がたがいの声に耳を塞いで、叫びはじめる。他人事ではない。この映画は、私たちの誰もが、〈真実〉の学級崩壊を前に困惑する教師になりうるという事実を、息苦しさとともに突きつけてくる。

■長島有里枝(アーティスト)

学校という閉じた空間を描きながら、いまの社会を生きるうえでの問題や矛盾を見事に描き出す、静かな恐怖とともに長く心に留まるだろう作品。
近道のない心の繋がりしか勝たん! と思わせるラストに勇気をもらった。

■アキラ100%(お笑い芸人)

今にも千切れそうな綱で綱渡りするような不安、焦燥。俳優、映像、音、全てが化学反応を起こして心に迫ってくる。これは【学校】だけじゃない、誰にでも起こる物語だ。

ジャンルで探す