山崎賢人、『陰陽師0』VFXシーン挑戦で感じた面白さ「俳優業もみんなで『呪(しゅ)』にかかっているようなもの」

山崎賢人

 クランクイン! 写真:高野広美

 山崎賢人が、実在した<最強の呪術師>安倍晴明の若き時代を演じる映画『陰陽師0』。晴明や源博雅らが織りなす人間模様や、華麗なるアクション、さらには圧倒的スケールに惹きこまれるVFXなど見どころ満載の本作で、原作者も絶賛する“晴明像”を築き上げた山崎に本作に込めた思いを聞いた。

◆“事実だけを見ようとする”晴明に共感

 本作は、大ベストセラーシリーズ『陰陽師』の原作者・夢枕獏の全面協力のもと、平安時代に実在した呪術師・安倍晴明が陰陽師になる前の知られざる学生時代を、『エコエコアザラク』や『アンフェア』などを手掛けた佐藤嗣麻子監督の手により映画化。完全オリジナルストーリーで描く呪術エンターテイメントだ。人気作家の加門七海が呪術監修を担当するほか、『ゴジラ-1.0』で米アカデミー賞・視覚効果賞を受賞した「白組」を中心とするクリエイターが手がけた、平安時代の再現や龍や大樹などの独創的なVFXも注目を集めている。

 呪術の天才と呼ばれながらも、陰陽師になることに興味がなく、友人も持たない変わり者の安倍晴明は、ある日、貴族の源博雅から皇族であり博雅の従姉妹の徽子女王を襲う怪奇現象の解決を頼まれる。衝突しながらも真相を追う2人だったが、ある学生の変死をきっかけに、凶悪な呪いと陰謀に巻き込まれていく―。

 キャストには、若き安倍晴明を確かな演技力で体現した山崎賢人を中心に、晴明と衝突しつつもバディ的存在となる貴族・源博雅に染谷将太、博雅の思い人・徽子女王に奈緒。さらには安藤政信、村上虹郎、板垣李光人、國村隼、北村一輝、小林薫ら実力派が顔をそろえた。

 「方角などから国の動きなどを占っていたという実在の職業で、しかも実際に呪術が使えて、目に見えないものを操ったり支配できた」陰陽師・安倍晴明には興味があったという山崎。「何度も映像化されていますが、今回は陰陽師になる前の“学生(がくしょう)”の頃の安倍晴明を演じるので、シンプルに嗣麻子さんが書かれた台本の中の、陰陽師になる前の、自分の中にあるさまざまなことを乗り越える前の晴明を意識しながら演じました」と語る。

 学生時代の晴明は周りとつるまず、お世辞にも性格がいいとは言えないキャラクター。演じるにあたり気を付けたことを尋ねると、「事実だけを見ようとしていることですね、そこが面白いなと思って」との答えが。「性格を悪くしすぎないようにしようというのもありましたが、周囲からすると(晴明に)『ばか』って言われたら『性格悪いじゃん』と感じると思うんですけど、晴明からしたら事実を言っているだけなので」と笑う。「でも、いろんな考え方を持っている人がいっぱいいる中で、自分の信じるものはやっぱり、“今”という事実でしかない。いろんなことを考えたところでやるしかないとか、結構自分が普段から大切にしている考え方でもあったので、晴明に共感する部分がありました。事実だったり今だけを感じて、今頑張ればいい方向に行くんじゃないかなというメッセージを、観た方に感じ取ってもらえたらうれしいなと思いますね」。

◆俳優業もみんなで「呪」にかかっているようなもの


 「博雅とのやりとりが、見ていて『いいな』と思ってもらえるようなバディになれたらいいなと思って演じていました」とも明かした山崎。その言葉通り、最悪な出会いから衝突を繰り返しつつも、お互いを認め合い、唯一無二の結びつきとなる晴明と博雅のバディ感はエモさと羨ましささえ感じるものに映った。

 共演の染谷とは3度目の共演ということもあり、今回の関係を作り上げるにあたり、特別な話し合いなどはしなかったそう。「染谷君も変に繕ったり、嘘の感情でコミュニケーションを取る人じゃないので、すごく2人で自然でいられたというのがそのまま出てたかなと思います。バディ感は2人で生み出すものなので、乗馬の練習も一緒にたくさん経てから現場に入りましたし、ワークショップみたいな感じで晴明と博雅の役を入れ替えてやってみたり、そういう準備期間がたくさんあったのもよかったです。そんな中でコミュニケーションを取れたので、あとは自然になんということのない話をして過ごしていました。晴明と博雅が2人でお酒を飲んでいるシーンとかには、染谷君と過ごした時間の空気感が自然に出ているんじゃないかなと思います。僕と染谷君は、方向や空気感が似た感じなのかなと思うんですよね」。

 本作は、圧倒的なVFX表現も見どころのひとつだ。完成した映像を見て山崎は「素直にすごいなぁと思いました。現場では想像でしかなかったものが、あれだけリアルに表現されていて、自分から龍が出た時はテンションが上がりましたね(笑)。水の龍出したわ~ってすごくうれしかったです」と気持ちが躍ったそう。

 劇中、陰陽師が修める学問の1つである「呪(しゅ)」は、意識に作用を及ぼすことで肉体にも影響を与える“暗示”や“催眠術”“思い込み”のようなものとして描かれるが、「VFXシーンで演じる時は、自分で自身に呪をかけている感じですね。自分から龍が出ていると思ったり、ケガをするシーンでは本当に痛いと思ったり、『俳優業って呪をかけてるよね』って現場でも染谷君や嗣麻子さんと話していました。集団で呪にかかって作品を作っているから、みんなで同じものが見えているんだという話がとても面白かったです」と楽しそうに振り返る。

 これまでさまざまな作品でパワフルでダイナミックなアクションを魅せてきた山崎だが、本作でも華麗なアクションを披露している。平安時代の狩衣姿でのアクションはこれまでとは違う難しさもあったのではないだろうか?「袖や袴の裾を踏んじゃったり、烏帽子が高いので頭をぶつけたり大変でした。でも、いなすアクションというか、誰も倒さず傷つけず逃げていく。そんな晴明っぽい無重力感というか、人間業じゃないような動きを晴明のアクションという形で表現できたのはすごく楽しかったです」と笑顔。「呪文や印のシーンも、手の形や位置、体の形など細かいところで意識することが多かったです。美しく見えるように正しい姿勢で演じていくというのを体に染み込ませるのは大変でしたね」と語るが、出来栄えには自信を見せる。

 数々の難問をクリアし、山崎が作り上げた晴明をもっと見てみたい。染谷演じる博雅とのコンビももっと見てみたい。そう思い、続編への期待を伝えると、「そうですね、やりたいですね」ときっぱり。「いろんなことが起きても、晴明と博雅だったら解決できるなって思うようないいバディだと思うので、新たな問題が起きた時に、この2人がどう解決していくんだろうというのはすごく楽しみです」。(取材・文:近藤タイスケ 写真:高野広美)

 映画『陰陽師0』は、4月19日より全国公開。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

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