表現しきれない悔しさ…『仮面ライダーガッチャード』で本島純政が直面した厚い壁

スターの登竜門と呼ばれるものはいくつかあるが、なかでも『仮面ライダーシリーズ』は今も昔も非常に大きな存在。2023年9月から今年の8月までの1年間、令和第5作となる『仮面ライダーガッチャード』の主人公、一ノ瀬宝太郎(いちのせ ほうたろう)かつ仮面ライダーガッチャードを演じて、大きな支持を集めたのが本島純政(もとじま じゅんせい)。2023年の3月に事務所に所属し、その半年後には仮面ライダーになっていた。

そんな逸材にニュースクランチがインタビュー。『仮面ライダーガッチャード』が放送されたときのこと、終了を迎えた現在の気持ち、さらにこの先、俳優として生きていく覚悟を語ってもらった。

▲本島純政【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-Interview】

アーティストよりアナウンサー向きじゃない?

「ガッチャ!」が口癖の天真爛漫な一ノ瀬宝太郎を魅力的に演じ、人気を博した本島純政。自身の素顔の愛らしさもファンにはよく知られており、所属事務所アミューズの公式YouTubeチャンネルの人気コンテンツ「BUKATSU」での放送回も、かなりの反響を集めた。

「X(旧Twitter)でもかなり話題になったみたいです(笑)。最初に車に乗ってシートベルトをするところから、変なシートベルトの付け方になっちゃって。“あれ?”って。周りのスタッフの方に突っ込まれたんですけど、自分ではどこが変なのか全然わからなくて……。いやぁ、ロケバスのシートベルトはつけ慣れているんですが……。送迎車に乗らせていただくのがほぼ初めてだったので、シートベルトをするのも緊張しちゃってました。アハハ!」

普段から全開の愛されキャラだが、事務所のオーディションでは、ガチガチに練習を重ねて、「アーティストではなく、アナウンサーのほうが向いているんじゃないか」と事務所の方から言われるほど真面目に取り組んだ。そして、じつはオーディションはギリギリの合格だったのだとか。

「ダメなところを一切見せちゃいけない、と思ってしまったんです。ダメな部分をいかに隠そうかと必死で。ちょっと早めの就活をしていたような状態でした。そのせいなのか、アナウンサーっぽい受け答えになっていたみたいなんですけど、じつはヌケているところも見抜かれていたんでしょうね(笑)」

『仮面ライダー』第1話は見直してヘコんだ

そんなギリギリの合格にも、同年、スター街道の第一歩といえる『仮面ライダー』への出演を手にする。歴史の続く大きなコンテンツでの主演である。第1話の放送を見たときには、感激MAXだったに違いないと思いきや……。

「もちろん、うれしさはありました。でも、悔しさも大きかったんです。本当に、台本もボロボロになって破けるくらいまで読んで、現場でも体当たりで全てのシーンに全力で臨みました。だけど、第1話を見返すと、そのたびに、自分が表現したかったことが表現しきれていないことに直面して、“うわー”となって……。これで俳優をやっていけるのだろうか、と思うくらいヘコみました」

ヘコんだり悔しいと思うのは、それだけ高い目標があるからに違いない。単にうれしいからではなく、“自分が表現したかったこと”を確認するために何度も見返すことからも、演じることへの真摯な態度が伝わってくる。

「常に自分の中で目標は決めていて、“今日の自分を、明日の自分で越えていこう”と思っています。仮面ライダーのように、自分が主人公としてカメラの前に立てることって、俳優業をやっていてもそうそうない機会だと思うんです。だから、学べるものは全部学ぼうという気持ちでした。そのためには、自分が多くのものを準備していかないといけないから、死ぬ気で準備していく毎日でした」

『仮面ライダー』で演じた宝太郎も高校生だが、本島自身、まだ10代。だが、大役をつかんだことの幸運を客観的に捉え、それを生かしていこうとする貪欲さを持っている。1年間、同じ役をみっちり演じる。俳優にとってそんな貴重な機会を新人で体験した今、実際にこの仕事を始める前と、自分自身に変化はあったのだろうか。

「僕、これまでずっと一夜漬けのタイプだったんです。夏休みの宿題も、休みが終わる直前まで何もしないタイプ。でも、お芝居を始めて、一夜漬けでは通用しないことに直面しました。

俳優業は、一夜漬けどころか、ずっと継続。それも簡単な継続じゃなくて、死ぬ気で継続をし続けることによって、やっと現場に立つことができる……最近、そう感じています。ただの憧れではなく、ゴールの見えない、本当の難しさを感じるようになったことが変化かもしれません」

ファースト写真集は将来の自分に見せてあげたい

本島に多くを教えてくれた『仮面ライダーガッチャード』は、8月に終了。1年にわたるプロジェクトだったわけだが、この期間をまるまるカバーしていたプロジェクトがもうひとつある。11月に発売となる本島純政ファースト写真集『』(小社刊)だ。

事務所への所属が決まってすぐの2023年2月から、仮面ライダーの撮影期間中、クランクアップ直後の2024年8月までの約1年半を追った膨大なカットから厳選された写真と、ロングインタビューが掲載されている。

「ファースト写真集だからということだけじゃなく、僕にとって、一生大切にしたいものになると思います。ここには、僕の初めての経験がたっくさん詰まっているんです。だから“僕自身”、このときの気持ちを一生忘れないでほしいなと思っています。

俳優というお仕事をしていて、“辞めたいな”と思うことがこれからあると思います。でも『仮面ライダーガッチャード』をやっているとき、すごく楽しかった。これからも、楽しいことだけではないだろうけれど、絶対に楽しいこともあると思うんです。

だから、役者を続けていて大きな壁にぶち当たったときにも、“本島純政、お前は幸せだぞ!”と改めて感じるために、自分自身でも見返したいと思ってます。それくらい、自分にとっての節目だったし、感情が鮮明に映し出されている写真集になっています。本当に、将来の自分に見せてあげたいです」

そんな熱い思いが詰まった写真集から、特に思い入れのある1枚を選んでもらった。

「やっぱり最後のカットです。仮面ライダーがクランクアップした次の日に撮ったんですが、最後、泣き出してしまったものが、そのまま収められています。カメラマンの増田彩来さんに、“いま思っている感情を、全部出してみて”と言われて、思わず涙してしまったカットです。

そのとき、『仮面ライダーガッチャード』を無事にクランクアップできた達成感と同時に、この先の不安も大きくあって、いろんな感情が渦巻いていました。それが素直に出てしまった。1年半、ずっと一緒だった増田さんじゃなかったら、絶対に出なかった涙だと思うので。この写真は、自分の中ですごく印象に残っています」

▲ファースト写真集に込められた気持ちを教えてくれた

「不安もある」と素直に吐露した本島。しかし強い思いで、これからも新たなキャラクターをどんどん見せていってくれるはず。最後に「俳優として生きていくことに今、感じている思いと目標」を聞いた。

「ロングインタビューでもお話しているのですが、『仮面ライダーガッチャード』を見てくれた方から、すごく思いの込もったお手紙をたくさんいただきました。そのとき、俳優という職業の尊さというか、言葉では言い表せないくらいパワーのある仕事なんだと感じました。

これからも僕は俳優を続けていきたい、僕のお芝居を通して、ひとりでも多くの方に“この作品を見ることが楽しみ”だと思ってもらいたい、ちょっとした毎日の光のようなものになってくれたらと。

もちろん、生半可な気持ちでやれる仕事じゃないと思っていますし、本当にすごい仕事だと感じています。そのうえで、僕も成長していって、いつか、日本アカデミー賞を取れるような俳優になりたいと思っています」

(取材:望月 ふみ)


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