ベールに包まれた美女・金井球「取材の冒頭で“見透かされてるな”って思いました」
ネットを徘徊していて、“この子なんだろう?”と思って検索したことは誰しもあるだろう。その場合の多くは、公式サイトや事務所のプロフィールが引っかかって、その全体像を知ることとなるが、この金井球(かない・きゅう)という人物は謎である。
ミスiDのグランプリを受賞したこと、ロフトグループなどでトークイベントなどしていること、そして『週刊プレイボーイ』で水着を披露していること以外は、全体像が見えてこない。googleで金井球と検索すると、サジェストで「何者」と出てくるほどだ。
もしかすると、どこかで彼女のことを見かけて、同じように検索して同じような感想をもった人は多いかもしれない。ニュースクランチ編集部は彼女とコンタクトを取り、その全体像を掴むためのインタビューを敢行した。
私もミスiDを受けたら女の子たちを家に泊められる!?
まずは、謎多き彼女のパーソナルな部分に迫ろうと試みた。が、野良猫のように、こちらが前のめりで矢継ぎ早に質問をすると、逃げていってしまいそうな雰囲気がある。そこで、“金井球”という名前の由来について聞くと、困った表情を見せた。
「あんまりはっきりと覚えてないんです。金井、というのは本名です。最初にミスiDを受けたのが2020年、そのときは書類審査で落ちたんです。漢字一文字で球(きゅう)って名前で、あ、いや……ひらがなだったかな? 本当によく覚えてなくて(笑)。私が9月生まれで、芸人の“キュウ”さんが好きで、動物の鳴き声みたいで可愛いなと思った、それだけの理由です。それで、次の年から金井球で応募したんです」
ミスiDは2013年から2022年まで開催されていた。モデルやグラビアなどでよくある、雑誌の冠がついたオーディションとはまったく違う、今までにないタイプの女の子、ジャンルを超越した女の子を探して世に出そうという、個性派女子のためのオーディションだ。
金井は2020年、2021年、2022年と応募。2020年は書類審査で落ちたが、2021年にはセミファイナリストになり、2022年にはグランプリを獲得した。普通であれば、2021年にセミファイナリストになった時点で、ある程度の目的は果たされたはずだ。そこまで、ひとつのコンテストにこだわった理由はなんだったのだろうか。
「初めて自分で行ったイベントが、ミスiDのイベントだったんです。もともと可愛い女の子が大好きなんですけど、ミスiDのハッシュタグを見ていたら、なんか刺さる女の子がいて。それが、るかぴ(2019年「きみがいる景色が、この世界〜昼〜」賞を受賞)でした。
この子に会いたい! と思って、渋谷のLOFT9 Shibuyaに行ったら、ほかの出演者の女の子たちが会場の外で溜まっていたんです。そこで、私が普通にお客さんとしてウロウロしていたら、その子たちから“ここで待ってるので合ってますよね…?”って話しかけられて、“えっ、私って出演者に間違えられるくらいなの!? やったぁ! じゃあ、私も受けてみよう!”って。
あとは、私は都内住みなんですけど、ミスiDって地方からの上京組もいるんです。“私もミスiD受けて、上京組の子たちと仲良くなったら、その子たちを家に泊められるじゃん!”みたいな、よこしまな考えもありつつ……フフフ。
1度目は、ミスiDっぽくないほうが逆にウケるんじゃないか、と思って、“サブカルに興味ありません! 大森靖子って誰ですか?”みたいなプロフィールを書いたら、見事に落ちて(笑)。そもそも大森さんは好きで知ってるのに、もはや私ですらない作られた履歴書で落ちたので、次の年からは嘘をつかずに、正直にプロフィール書いたら受かりました」
動機は単純な思いつきであっても、どうしてもミスiDになりたかった彼女は、3度目でグランプリに輝いた。
「おかげで、るかぴともイベントができたし、プライベートでもお会いできるようになったし、たくさんの可愛い女の子と知り合いになれたので、とてもうれしかった!」
母は画家で父は記者…普通の家庭に憧れていた
ミスiDでグランプリを取る、というのは簡単なことではない。それを“可愛い女の子と仲良くなりたい”という気持ちで受賞した彼女の軽やかさ、そのミステリアスさの根源はなんだったのだろうか。彼女の幼少期に迫った。
「とても老成した、達観した子どもだったと思います。保育園の頃はクラスの中心にいて、みんなと仲良くて、めっちゃ楽しかったんですけど、それも俯瞰で見ていたような記憶があります。
その後、小学生になったら、急にイジメられるようになって。最初は私もやり返してたんですけど、途中で、出る杭だから打たれるのかと思って、“これ、めっちゃ不毛だな”と気づいて、そのやり返す気力もなくなっちゃったんです。
そこからは、ずっと本を読んでいる、とても内向的な子どもになっていきました。その頃は推理小説が好きで、江戸川乱歩とか、図書室にあった推理小説を片っ端から読んでましたね。
あと、お母さんが画家なんですけど、よくレセプションを開いていたんです。そこへ一緒に行って、大人の方たちと話すのがすごく楽しくて。そうなると、相対的に同級生とかと話すのがどんどん苦痛になってきて……そんな子どもでした」
活発な子どもから、なるべく目立たない子どもへと変わってしまった金井。そんな彼女が表に出る仕事に興味をもつまでの過程には何があったのだろうか。
「母親が画家で、父親は記者だったんです。それこそ、父はジャーナリストとして戦地などにも行くような記者で、何か月も海外へ行って帰ってこないとか、両親の思いつきで神戸に引っ越したりとか。父がサラリーマン、母がパートや専業主婦、みたいな一般的な家庭とは全然違ったんです。
そういう環境で育ったので、普通の家族、普通の母親に憧れがありました。その一方で、小さい頃から絵本を声に出して読むのが好きで。授業とかでも、音読が回ってくると“やったー!”みたいな。だから、普通のお母さんへの憧れと、表現することへの欲求という気持ちの真ん中で揺れ動いてました」
水着のグラビアは最初で最後?
そんな彼女がミスiDをきっかけに、表現者としての活動をスタートさせたのが数年前。「最初で最後」という触れ込みで、水着のグラビアにも挑戦した。
「それは当時のミスiDのスタッフの方が勝手につけたんです。でも、確かに当時は“もうこれで最後でもいいなぁ”と思いながらやっていました。撮影ではステキに可愛く撮っていただいたし、仕上がりも好きなんですけど、グランプリをいただいたからこその副産物みたいなもので、水着になったりするのはこれで最後かなって。
そもそも、能動的に動けば動くほど、“金井球って単なる自撮り界隈の人かと思ってたけど、へぇ~こんな感じでガンガン働くんだねえ(疑うような目つき)”って見られちゃうかも!ってのが……もう恥ずかしくて! 頭の中で勝手に思ってるだけかもですが。
ミスiDに出たのも、表現者になりたい! 何者かになりたい! というよりかは、“可愛い女の子と仲良くなりたい!”が本当に強かったんですけど、どこかに言い訳を残しておきたかったというのも、あったのかもしれないと思います。
関係しているかわからないですが、小さい頃から大体のことはちょっとやると、すぐにコツを掴んで、次から上手にできちゃうんです。だから、好きなことを好きなペースでやりつつ、あまり悪目立ちしないように活動してきた、というのがこれまでの私ですね」
「本気を出せば!」と、ずっと思っているタイプですか? と聞くと、金井は笑いながら頷いた。ただ、5月から事務所への所属を発表したという彼女、これまで通り、自由にのんびりと好きな仕事だけをしていく、とは相反する決断のように思える。
「事務所に入るなんて、さっきみたいに疑って見てくる人にとって、格好の餌食ですよね、“なんだよ、結局は有名になりたいのかよ~”っていう視線に晒される。でも、まず大きな一つの信念として、シャバいヤツだと思われたくねえ!ってのがあるんですよ。ヒヨってると思われたくない。
あと例えば、私は23歳なんですけど、このまま金井球(32)になりたくないな、と急に思ったんです。別に32歳がダメとかじゃなく、今パッと浮かんだ数字を言っただけなんですけど(笑)。要するに、このまま本気にならないまま、年を経ていくのがイヤだなって。
これまでは、前のめりじゃないことを美徳として捉えていたけど、その二つを天秤にかけたとき、事務所に入って頑張ってみようと思いました。誘っていただいたのが一緒にイベントをやっていて信頼している方だったのと、本っっっ当に連絡を返したりとか、そういう作業が苦手でして…(笑)。そこを補助してもらえるのは本当にありがたいです」
“何をしているかわからない人”がカッコいい
たしかに、当日まで本当に取材現場に来るだろうか……という危うさは彼女のひとつの魅力ではあるが、事務所に入ったことでオファーなどが受けやすくなり、さまざまな媒体で見られるようになるかもしれない、というのはかなり大きなトピックである。これまでもイベントなどに出演していた彼女。今後やってみたい仕事はあるのだろうか?
「映画のエンドロールに名前が出るような人になりたいです。お芝居? そうですね、挑戦していけたらと思います。お笑いも好きなので、芸人さんとイベントをやったり、大喜利をやったりもしていたんですけど、そういうのも続けてやっていきたい。
芸人さんでは、特にガクヅケというコンビが好きで、船引さんの『完熟トマト新聞』という漫画を買いに行ったり、木田さんのnoteを購入したりしています。最近は日プ女子を見て泣いています、周りからは“今?”と言われているんですけど、今まさにハマってますね」
ここで改めて彼女のパーソナルな部分が気になった。というのも、これまで金井球の人生は、金井球本人がすべて決めているように思えたからだ。誰かに強く影響を受けてとか、誰かの言葉に救われて、ということが少ないように感じたからだ。
「たしかに、あまり思いつかないですね。人生で一番印象に残っている言葉? 何かあったかな……あ、中学のときに付き合ってた彼氏に言われた“横顔がキレイだね”です。そこから、私は横顔はキレイなんだと思って、いろいろなイヤなことを乗り越えてきました。え? その彼氏ですか? 1か月くらいで別れちゃいました(笑)」
中学の頃の彼氏に言われたセリフを印象的な言葉として挙げる、やはり掴めそうで掴めない。それが魅力なのかもしれないですねと問うと、「そうですかね?」と不思議な表情。
「自分的にはあまりわからないんです……でも、撮影の被写体としては褒めていただくことが多くて、最近は肌を褒めていただけることが多くてうれしいです。でも、こうやって説明すると、“何か特別なことしてますか?”と言われるんですけど……私から言えるのは“自転車に乗れ!”と“パンよりご飯を食べろ”ですかね」
最後に、目標とする人物について問うと、“うーん……”と言ったきり口をつぐんだので、取材はそこで終了したが、後日メールで“あれからずっと考えてたんですが……”という前置きとともに、こう答えてくれた。
「インタビューの最初に、何をしているのかわからない、ベールに包まれた……みたいに言っていただいたんですけど、見透かされてるなと思ってたんです。たしかに、私は“何をしているかわからない人”がカッコいいと思ってて、その頂点に立ちたいと思っているんです。じつは、小学生からずっと憧れているのはリリー・フランキーさんです。
小学生の頃、家にあった『SPA!』のグラビアン魂を見て、みうらじゅんさんと二人で話して、グラビアをプロデュースしてて、“そういう仕事をする人”と認識してたんですけど、たまたま見た映画で俳優として出てきて、すっごく驚いたんです。そしたら、小説もエッセイも書いてらっしゃるし、もともとはイラストレーターでもある。そこからずっと憧れなんです。
だから、これからも“金井球ってなんだ?”と思ってもらって、実際に調べてもよくわかんないなって思ってもらえるのが、私の理想です」
07/25 18:00
WANI BOOKS NewsCrunch