映画『乱歩の幻影』で初主演の結城モエ「私と似ている弓子に共感しながら演じてます」
ドラマ『脳にスマホが埋められた!』(日本テレビ系)で女優デビューを果たし、『恋する母たち』(TBS系)や『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』第7シリーズ(テレビ朝日系)など、数々のドラマに出演してきた結城モエ。
そんな彼女が主演を務める映画『乱歩の幻影』が7月26日に公開される。今回、結城が演じるのは、江戸川乱歩の魅力にとりつかれた弓子。ニュースクランチでは、初の主演を務める彼女に、映画の見どころや文学との出合いについて聞いた。
好奇心旺盛な弓子の感覚が私と似ていた
結城モエにとって映画『乱歩の幻影』は初主演作。最初にオファーをもらったときは、どのように感じたのだろうか。
「最初は信じられなくて、しばらくは実感がわかなかったんですけど、家族に話してみると、“え、すごい!”と言ってくれて、ようやく主演としての実感がわいてきました」
この映画は幼い頃に見た1枚の写真によって、江戸川乱歩の小説にとりつかれたように成長した女性が、夫の書棚で発見した1本のエッセイに導かれるというストーリー。完成した映画についての感想を聞くと、秋山純監督と原作者・島田荘司氏とのエピソードを話してくれた。
「秋山監督と島田先生とは初めてお仕事をさせていただいたんですけど、好きな世界観や考えることが似てるんです。話していても昔から知り合いだったのかなと感じるぐらい、感性が一致しました。
だから、完成した映画を見たときも、とても好きな世界観に仕上がっていて。“あ、そうだよね監督!”みたいな気持ちで、すごくうれしかったです。お二人と共通点があるからこそ、この映画に携わることがことができたんだな、と感じました。
私は本を読んだりとか、何かを学ぶことが大好きで、監督はそういう部分をすごくよく思ってくださっていて。“結城さんのいろいろと考えたり、なんでも学ぶ姿勢はとてもいいよね”と褒めてくださいました。私も監督や島田先生の何かを学ぶ姿勢を尊敬しています」
『乱歩の幻影』は、文学がひとつのテーマにもなっている。幼い頃から文学に親しんでいたという結城。文学との出合いを聞くと興味深い答えが返ってきた。
「小学生の頃に『怪談レストラン』という本が学校で流行っていて、読み始めたのが最初の出合いでした。私は読んで面白かったことを人に話すのが好きなんですが、子どもたちのあいだで怖い話って流行りますよね。なので、夏休みで遊び来てたイトコによく話をしていました。
大人になってからは、時代小説とか、世の中で実際に起こった話とか、そのときに気になった本を読んでいます。最近、読んで興味深かったのは日航機の墜落事故に遭われた方が書かれた本です。重い話ではあるんですけど、実際に起こった話を読むと感情がうごめき、心が動かされました」
彼女の心を引きつける読書の魅力とは?
「ひとつは好奇心です。こういうときに私も悩んだり乗り越えたりしたなとか、昔の人の話だと、なぜ時代は違うのに人は同じことで悩むんだろうとか、そんなことを考えたりしながら、自分の人生で取ってきた選択や考え方と照らし合わせて、答え合わせみたいにしていきます」
結城が演じる弓子は江戸川乱歩の愛読者で、好奇心が旺盛な女性。そんな弓子との共通点を聞いた。
「映画に出てくる江戸川乱歩の『蟲』という作品を読んだことがあるんですけど、私は『蟲』のような狂気じみた作品であっても共感できるタイプなんです。人を殺してしまって、近くに置いていたら虫がわいてしまって、その中で埋もれるようにその人も死んでいく、という衝撃的な内容ではあるんですけど、人間は誰しもそういう要素を持ってるんじゃないか……など考えてしまって。
弓子は本を読んでいくなかで、のめり込んで“こうなんじゃないか、ああなんじゃないか”と、自分なりにいろんな空想や考えを膨らまして、普段の私よりもさらにもう一歩踏み込んだところに行ってしまうんです。その弓子の感覚が、私と少し似ているなと感じるところもあって、弓子という存在が近くに感じられて、これだったら弓子を演じたいと思えました」
現場の空気を柔らかくすることを意識していた
好奇心旺盛な彼女の一面を知ることができたが、さらに深堀りしてみた。
「テレビのニュースでは、毎日いろんなことが報道されますけど、限られた時間のなかで伝えなければならないこともあって、表面のみが報道されることもあると思うんです。でも、私はその先のことが気になってしまって、実際に海外のサイトを調べたり、さらに深く知りたくなってしまうんです。その結果、すごく悲しい気持ちになってしまうこともあるんですけど……。
外で起こっていることや、他人に起こってることに対して、私には関係ないと思えないタイプというか。もし、これが私の家族に起こったらどうしようとか、全部当てはめて考えてしまうところがあるんです」
今回は座長という立場でもある。撮影現場ではどのようなことを意識していたのだろうか。
「いろんなタイプの座長さんがいらっしゃると思うんですけど、今回に関しては(高橋)克典さんや常盤(貴子)さんのように、しっかりされている方々が周りにいらっしゃったので、私に求められていることは、空気を柔らかくすることだと思いました。
緊張したりピリピリしていると、やるべきことに集中できなくなることもありますよね。なので、私だけは何があっても動じない、くらいの寛容なスタンスでいることを心がけました。周りからしたらわかりづらいとは思うんですけど、それが逆に自分らしいやり方なのかなって」
福岡から上京したのは“負けず嫌い”だったから
ドラマ『脳にスマホが埋められた!』で女優デビューした結城。これまでの活動を振り返ってもらった。
「小さい頃から、いろんな事務所の方に声をかけていただくことが多くて、ずっと頭の片隅には芸能界という選択肢がありました。大河ドラマを家族でよく見ていたので、出演している俳優さんが所属している事務所にスカウトしていただいたこともありました。
もし事務所に入ったら、私もこういう仕事をするのかな……なんて思いつつも、習い事のピアノのレッスンもあるし、勉強もあるしで、やらなければいけないことがたくさんあったので、そのときは芸能界に入ることは考えていませんでした。
でも、大学生の頃、就活に向けてインターンに参加させてもらったんですけど、自分のなかで芸能界で活躍する姿が脳裏をよぎるんです。演技への好奇心がどんどん膨らんできて、これだけ気になるんだったら、やりたいことをやろうと思って、事務所に所属することに決めました」
周りの友人たちが一般企業に就職するなかで選んだ芸能界への道。不安はなかったのだろうか。
「東京に出てくるときもそうだったんですけど、不安はめちゃくちゃありました。私の地元の福岡では、九州大学を目標に頑張ってる人が多かったので、東京の大学に行きたいと伝えると驚かれほどでした。両親も“別に東京まで行かなくていいんじゃない?”というスタンスだったので、私一人で東京に行って大丈夫かなって。でも、自分の気持ちには逆らえないので、不安と戦いながら乗り越えてきました」
なぜ東京という街を選んだのか。質問をぶつけてみると、負けず嫌いな彼女のパーソナリティが浮かび上がってきた。
「すごく負けず嫌いなんだと思います。特に、結果が出せなかったという自分に対しての負けず嫌いがあって、その悔しさがバネになっていました。私は小・中・高・大と全て受験したんですが、一番悔しかったのは高校受験でした。周りの友達は第一志望に合格した子が多かったんですけど、私は行きたい高校に落ちてしまって……。
私が行きたかった高校の制服を着ている子たちを見て、すっごく羨ましくて、どうしても負けたくないと思ったんです。あまりにも悔しくて、あの子たちが目指すような大学に行ってリベンジしよう、と。それができるのは東京の大学でした」
大学で勉強した法律に関わる作品に出てみたい
そんな結城が役者として大切なことはなんだろうか。
「今まで“色のついた役”を演じることが多かったんです。でも、いろんなお芝居をするにつれて意識するようになったのは、自然であること。強いキャラであろうと、本来の人間らしさもみたいなものを、みんな持ってると思うんです。私自身が持っている人間らしさを忘れてはいけないなと、最近になって思うようになりました。
役として作ったものは、やっぱり周りにバレてしまうんですよね。だから、とにかく自分自身に似てるものを探して、自然な人間を表現していくことが、見ている人にも寄り添うことなのかなって」
最後に、これから挑戦してみたいジャンルについて聞いた。
「大学で法律の勉強していたのですが、法律が絡んでくる場面って、人間ドラマがあるんです。それは被害者であっても加害者であっても、それをジャッジする裁判官であっても弁護士であっても、みんなそれぞれの感情がうごめいているんですよね。被害者であれば苦しさだろうし、加害者であれば弱さかもしれない。それを平等に見なければいけない裁判官や弁護士にも葛藤がある。そういう人間の根底にある人間らしさを題材にした作品に出演したいです」
07/20 18:00
WANI BOOKS NewsCrunch