Cody・Lee(李)が語る、最高に盛り上がった台湾でのライブと『最後の初恋』
Cody・Lee(李)が6月12日にメジャー2ndアルバム『最後の初恋』をリリース。本作にはドラマ『秀吉、スタートアップ企業で働く』の主題歌である「さよuなら」、ドラマ『恋愛のすゝめ』のエンディングテーマ「涙を隠して(Boys Don't Cry)」。さらに映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』の主題歌となった「イエロー」など既発曲を含む全12曲を収録されている。
代表曲である「我愛你」のミュージックビデオは、YouTube再生1000万回を突破し、2024年には海外フェスへの出演や台湾でのワンマンライブなど、今や国内外問わず破竹の勢いで駆け抜ける彼ら。今回のインタビューでは、そんな彼らがライブ史上、最もエキサイティングした台湾でのワンマンライブでの話や、最新アルバムで「生活を歌う」という原点に立ち返った話などを語ってくれた。
エキサイトした台湾でのワンマンライブ
――4月に台湾でワンマンツアーを実施されましたが、その感触についてまずは伺いたいです。
高橋:台湾で演奏するのはMVの撮影を含めて5回目ぐらいなのですが、東京よりもアットホームなのでは、と思うくらいオーディエンスがものすごく歓迎してくれたんです。正直、自分が演奏したなかでは、過去一番にエキサイトしたと言ってもいいくらいの経験をさせてもらいました。ライブが終わったあとも放心状態みたいな感じになって、いい夜でした。
力毅:台北でのライブは、今までで一番盛り上がったと感じるくらいすごかったですね。あと、台湾では普段のライブとは違い、オーディエンスがそれぞれ好きなポイントで盛り上がっていたのが印象的でした。
ニシマ:僕は海外でライブをするのが夢でした。去年、台湾の浮現祭EMERGE FESTで演奏したのですが、それが海外での初ライブでした。そこから1年経って、ワンマンができるとは思ってもいなかったし、あと台湾の方だけでなく、いつも見に来てくれる日本のお客さんも来てくれて、自分たちが好きな台湾をみんなで共有できたのもよかったです。
原:ワンマンだったということもあり、自分たちを好きな人だけがいる空間だったので、すごくアットホームな雰囲気でした。向こうの人たちもオープンで、明るく、熱量を感じられるライブになった気がしました。
――そもそも、なぜ台湾でワンマンをやろうとしたのですか?
高橋:ニシマさんも言っていた通り、海外での初ライブが台湾だったんです。その後、国外で何本かライブをやってきたなかで「最初の場所に立ち返り、ワンマンをしよう」という話が出て。そこで、現地のイベンターと相談してライブ会場を選びました。
台北はTHE WALLというライブハウスで、日本だとSHIBUYA CLUB QUATTROぐらいのキャパがあるハコでした。自分たちも「売り切れてほしい」と思っていたのですが、すごい勢いでチケットが売れていって、ソールドしたのでびっくりしました。
台湾への興味とアジア圏バンドへの愛
――台湾との接点は昨年、浮現祭EMERGE FESTからだと思いますが、それ以前から台湾という場所を意識していましたか?
高橋:じつは自分がCody・Lee(李)を始めようとしたぐらいに、台湾の曲を作っていたんですよ。その曲は、台湾のことを詳しくは知らないけど、バイトを辞めて『千と千尋の神隠し』のモデルになった九份に行きたいという内容だったんです。その頃から、うっすらと意識はしていたような気がします。
でも、改めて意識したのは、浮現祭EMERGE FESTかな。そこで友達ができて、交流が深まっていき、台湾への思いが強まっていった感じですね。
――台湾での自分たちの人気は肌で感じていますか?
高橋:それこそ、国内を含めても「我愛你」を一番聞いてもらえたのが台湾だった、という説があるので、その感覚はあります。
――今年1月に配信リリースされた「烏托邦」はオール台湾ロケを行い、映像作家・劉立さんと彼のチームが制作しました。今回のワンマンに先駆けて作ろうとした部分はありましたか?
高橋:いや、それは全くなくて。そもそも、劉立さんは自分が好きな監督なんです。有名なところだと、今度フジロックに出るNo Party For Cao Dongの「大風吹」や、僕の好きなバンドLily Chou-Chou Liedの「愛人」とかを手がけていて。「その人にMVを撮ってもらいたい!」という気持ちだけで突っ走ったので、結果的にいい布石にはなりました。
――お話を聞いていると、台湾のバンドに詳しい感じがします。アジア圏のバンドとか気にされていますか?
ニシマ:僕はアメリカやイギリスの音楽を聴いていたので、台湾へ行く前からアジアの音楽も掘りたい気持ちがあって、No Party For Cao Dong、Four Pensとかは好きでした。でも現地の友達もできて、よりコアなバンドとかも教えてもらいました。
――去年、Cody・Lee(李)も出演もされていましたが、日本のインディーレーベルであるThistime Recordsが、『BiKN SHIBUYA 2023』というライブサーキットを渋谷で開催していました。また、今年は韓国のバンドSilica Gelの公演が即日完売するなど、この2年ほどでアジア圏のバンドが日本でも盛り上がっている印象を受けます。
高橋:コロナ禍が明けて、アジアからの来日が増えていますよね。自分たちも、5月にタイの Serious Bacon と Copter との対バンや、6月には台湾のイルカポリスとツーマンをしました。
こういう来日イベントで僕らを呼んでくれるのはうれしいですし、そこでまた新たな交流が生まれて、関係性が深まるのはいいなと感じます。だから、このままのペースで海外のバンドとの対バンができたらうれしいです。
「生活を歌う」という原点に立ち返った最新作
――新しいアルバム『最後の初恋』についても伺いたいのですが、本作は冒頭に「NOT WAR, MORE SEIKATSU」から始まり、「イエロー」や「生活」など生活をテーマとされた楽曲が多い印象を受けました。
高橋:この1~2年で身近な人に急に会えなくなったとか、そういうことが重なって。そんなときに“最後に話した会話ってなんだったっけ?”と思い返しても、思い出せなくて……。そのときに“本当に適当な会話しかしていなかった”と気がついて、平凡な日々がいかに大切かと思ったんです。
そこから何気ない日々の大切さに気づくような、そんな歌を作っていきたいという意識が強く生まれて、それがアルバムとしてまとまったという感覚はあります。
――高橋さんはInstagramでも、「生活を歌う」ことが自分の根幹だと明言されていますよね。自分の生活を歌おうと考えたのは、いつごろですか?
高橋:Cody・Lee(李)を始めた頃からですね。SFとかファンタジーみたいな歌詞は全く書けなかったので、自分の身の回りを歌にして、タイムカプセル的に閉じ込めようとしたのがきっかけです。
僕が最初に作った「キャスパー」「drizzle」という曲は、ロックよりもヒップホップ的なアプローチで、固有名詞が多く出てきます。それも、自分の身の回りを歌にしていくためには必然的なことだと思っていて。
――例えば今回のアルバムだと、監督の大根仁さんや雑誌のユリイカ、さらにフィッシュマンズの『宇宙 日本 世田谷』など、さまざまな固有名詞が当たり前のように出てきます。そこも、日常を意識してワードを入れている感じですか?
高橋:そうです。曲を作るときに考えるのは「いかにリスナーに聴いてもらうか」ではなくて、「いかに自分が届けたい人に届くか」ということを意識しています。その人に向けた曲は、具体性を帯びていたほうが届くと思うので、固有名詞が必然的に入ってきてしまう。
――今回のアルバムも届けたい人はいますか?
高橋:自分はずっと家族と彼女と友達。そこの3つは根本にあるので、その人たちに届けたいという気持ちで作っています。
――今回「生活」というワードが強調されていて、個人的に思い当たった節があって。自分が初めてCody・Lee(李)のライブを見たのは2019年8月で。大阪のライブハウスでした。
力毅:その日はメンバーが変わる前の、最後のライブだった気がします。
――高橋さんがMCで「頑張ります」と言ったのが、今でも印象に残っています。でも新しいメンバーが入り、リリースされたアルバム作品が『生活のニュース』(2020年)だったんです。そう考えると、Cody・Lee(李)は節目となるタイミングで、生活という原点へ立ち返っているのかなと。
高橋:……意識はしていなかったですけど、言われてみるとそうだなと思いました。
武道館よりも地元の文化会館でライブがしたい
――「下高井戸に春が降る feat. GOMESS」では、ラッパーのGOMESSさんをフィーチャーしていますよね。
高橋:僕が一緒にやりたかったので誘いました。高校生の頃からGOMESSさんはずっと好きで、当時やっていたバンドの入場SEに「LIFE」を使っていました。下高井戸は、ポエトリーリーディングのセクションがありきで作っていたので、そこに当てはまるのはGOMESSさんだろうとなり、オファーに至りました。
――「キャスパー」「drizzle」をヒップホップ的なアプローチで作ったこと。さらに「DANCE風呂a! feat. SIKK-O」では、TOKYO HEALTH CLUBのSIKK-Oさんとコラボレーションをするなど、高橋さんはヒップホップに関心があると思うのですが、いつごろから興味を持たれていたのでしょうか?
高橋:ヒップホップというよりも、ゆるっとしたJ-ラップが好きで。高校生から大学生になるころぐらいに“上京して聴く音楽ってなんだろう”と思って。その頃に出会ったのがTOKYO HEALTH CLUB、Enjoy Music Club、underslowjamsとかだったので、そこからハマっていった感じですね。
――それは「生活を歌う」という部分にもリンクしますか?
高橋:めちゃくちゃあると思います。彼らは、クラブに行って朝になり「さてどうしよう?」みたいなことを歌っていて。そういうのが身の丈に合っている生活という感じがして僕は好きです。
――最後に、Cody・Lee(李)をどのようにしていきたいですか?
原:Cody・Lee(李)のメンバーは、それぞれがそれぞれにカルチャーが好きという共通点があるので、それを音楽とうまく絡めながら、これからも面白いことができたらと思っています。
力毅:今回のアルバムで、さまざまなフレーズを試行錯誤したこともあり「まだこんなことができるんだ」という発見があったので、追求することを諦めずに続けていけたらなと思います。
ニシマ:これまで銭湯でライブをやったり、芸人さんと共演をしたり、面白いイベントを組んできたと思うんです。ただ、まだまだ面白いことができそうだなと思っていて。動物園や映画館とかでもライブをやりたいし、それこそ芸人さんがよく出る劇場とかでもライブをやってみたいと思っています。
高橋:自分はさっきも話したように、家族とか友達とか彼女を大事にした音楽をやっていて、地元(花巻)での文化会館でワンマンライブがしたいという思いはずっとあって。それを叶えるために挑戦していくというか、そこへの布石を打っていくステップなのかなと今は思っています。
――例えば、武道館と地元の文化会館ならば、どちらが先にライブをしたいですか?
高橋:地元の文化会館でやるなら、武道館でやって地元に帰れたほうが、より故郷に錦を飾れる感じがしますよね。ただ、どちらか一つ選べと言われたら、余裕で地元を選びます。
(取材:マーガレット安井)
06/27 18:00
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