由美かおる73歳でもY字バランス「健康と体型維持の秘訣は呼吸法。ストレスで呼吸が浅くなっている人の不調に、座ってでもできる《コア呼吸》を」
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30代から90代までの女性にレッスン
雑誌やテレビに出るとき、「Y字バランスができる70代」と紹介されることもあります。最近もアルバムのレコーディングをしたり、定期的に呼吸法のトークセッションを開催したりと、いろいろ忙しく活動しているんですよ。
やはり自分の健康は自分で守ることが大切ですよね。そのために、私が長年実践しているのが呼吸法。12歳のときに西野バレエ団に入団して、その後、西野皓三先生から学んだのが「足芯呼吸」で、私の健康の土台となりました。
さらに私は、おへその下にある丹田を意識して行う「コア呼吸」とストレッチを組み合わせた、「由美ブリージング」を考案しました。これを毎朝行うのが日課です。
私は呼吸法を実践してきたからこそ、73歳の今に至るまで健やかに過ごせているのだ、と確信しています。
最近は、全国で「由美ブリージング」のレッスンを開催して教えているんですよ。参加なさる方の年齢層は幅広くて、30代の方もいれば、90代の方も。
ご高齢の方のなかには、「立っているのがつらい」とおっしゃる方もいますが、腰かけて行うこともできるので大丈夫。
呼吸法はご自宅でもどこでも行えますし、実践して1ヵ月程度で徐々に効果を実感できるでしょう。体の不調によっては即効性がある、という点でも優れています。
たとえば先日、原因不明の腹痛に悩まされているという50代の女性が私のレッスンに参加なさいました。そこで、その方のペースに合わせてゆっくりと2時間にわたるブリージングの指導を行ったところ、すっかり腹痛がとれたと驚いていました。
おそらく、疲労やストレスによって「気」の巡り、「血」の巡りが悪くなっていたのでしょう。
体がガチガチで、指先が痺れているという80代の女性も、ブリージングをしているあいだ、お顔に血色が戻り、レッスンが終わる頃にはお肌がつややかに。体中がほっこりと温かくなったと話しておられました。
「続けているうちに、夜はグッスリ眠れるようになり、諦めていた指先の痺れも薄れてきました」と後日ご報告いただき、私もとても嬉しかったです。
現代人は、忙しさに追われて呼吸が浅くなってしまい、いわゆる胸式呼吸になりがち。ですが、深い呼吸、つまりコア呼吸を意識的に行うことによって全身の血行がよくなり、体がほぐれてくるのです。
リラックスして心身のバランスを整える
体形や姿勢をバランスよく保つことも、私がお教えする呼吸法の目的の一つ。
40代の娘さんと一緒に参加なさった70代の女性は、猫背で腰椎が前傾しているため、横から見るとS字体形でした。脂肪がついているわけではないのにお腹がポッコリ出ているように見えてしまう、と悩んでおられたのです。
姿勢を意識して深く呼吸することによって、体の緊張が緩んで、姿勢も整う、といった好循環が生まれます。ブリージングを習慣化することによって、歪んだ体が元の状態へと整い、見た目にも美しい姿を取り戻すことができるのです。
足腰が弱くなると、筋力をアップしたいと考えがちですが、骨が脆くなっていたら、うまく歩くことはできません。もちろん筋トレも大事とはいえ、それ以前に、呼吸を通して骨や筋肉や内臓、血液で体全体の細胞に酸素を届けることが大切なのです。
呼吸法を行っていると代謝がよくなって、食べても太りにくい体になるので、私には冷えや不眠の悩みがありません。
ストレスや疲労感に悩む声も、とても多いですね。ストレスは心も体もこわばらせて、老化を早め、さまざまな病気を引き起こすこともあるので要注意です。
だからといって「リラックスしてくださいと言われても、難しい」とか、「そもそもリラックスした状態がわからない」という方もいます。
その場合にもやはり、呼吸法がおすすめです。呼吸に集中することで、「XXしなければいけない」というような雑念や思い込みを打ち消す。
そして、何ものにも縛られない無重力のような感覚をイメージする時間を1日に5分でもいいから取り入れることで、次第に緊張とリラックスの切り替えスイッチを備えられるようになるでしょう。
多くの人がストレスのない暮らしを望みますが、現代社会に生きている限り、まったくストレスのない毎日を送ることは不可能。大切なのは、それにどう対処するかなのです。
私だって、いいことばかりではありません。迷うこともあれば悩むこともあるし、ときにはカチンとくることも(笑)。
でもそんなとき、私は間髪を入れずにブリージングのコア呼吸を行います。これがメンタルの切り替えスイッチになって、悪い出来事ではなく、いい出来事を見つめようと気持ちを切り替えることができるのです。
自分で自分の気持ちをポジティブなほうへとコントロールする。これこそが明るく生きるための秘訣だといえるでしょう。
11/15 12:30
婦人公論.jp