内野聖陽さんが『あさイチ』プレミアムトークに登場。草笛光子さんと語った、年齢差35歳の2人を結ぶ絆とは「昔からの知り合いみたい」
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25年前、初対面ながら「昔からの知り合いみたいな気がする」と草笛光子さんが感じたという俳優の内野聖陽さんが、今回のゲスト。年齢差を忘れるほど打ち解けた関係性は微笑ましくも、「俳優」としての経緯が互いの絆を深めてきたことが伝わってきます(構成:篠藤ゆり 撮影:天日恵美子)
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はじめてのミュージカル出演の前に
草笛 お久しぶりね。あなたと会うの、どれくらいぶりかしら。
内野 やだなあ(笑)、去年、草笛さんのおうちに行って飯食ったじゃないですか。草笛さんの撮影中、楽屋にも少しだけ伺いましたし。
草笛 そうだった? 私たちってなんていうのかしら、朋友でもない、幼馴染でもない……、
内野 幼馴染ということはないですけど(笑)、はじめてお会いしたとき、草笛さんは「あなたとは昔からの知り合いみたいな気がするわ」とおっしゃったんです。印象的な言葉でしたね。
草笛 ニール・サイモンの『裸足で散歩』で共演したのよね。もうずいぶん前のことだけど。
内野 25年前です。
草笛 はじめて会うような気がしなかったのは、仕事への向き合い方が似てると思ったからかな。あと、舞台で歩んできた人の匂いがしたんじゃないかしら。
内野 以来、フランクにおつき合いさせていただいているので、年齢差を意識することがなかった。それで改めて、草笛さんと僕はどのくらい違うんだろうかと調べてみたんです。そしたら、親と子くらい違いましたよ。35歳ですって。
草笛 へー。私、そんなに上?
内野 いや、僕も「そんなに下?」と思いましたけどね(笑)。いつも草笛さんがフレンドリーな雰囲気で接してくださるからでしょう。
草笛 「くださる」なんて、いい言い方しちゃって。(笑)
内野 ミュージカル、舞台、ドラマ、映画……芸能史の中心を歩いてこられたような大先輩なのに、まったく垣根をつくらない。そう、草笛さんは先輩というオーラを共演者に出さないんですよね。
草笛 『裸足で散歩』では宝田明さんも一緒だったじゃない。楽屋にピアノがあって、一緒に発声練習したの覚えてる? ♪ハ、ハ、ハ、ハ~って。
内野 そのときの僕はF(高音のファ)までしか出なかった。「もう、これ以上は出ませーん!」となって、宝田さんから「君はFまでだね」と言われたのを覚えています。
草笛 でも、よく声が出ていたわよ。宝田さんも「ミュージカルに出たほうがいいよ」と勧めてたもの。
内野 ちょうどその舞台を、ミュージカル『エリザベート』のトート役を探していた演出家の小池修一郎さんが観にいらしていて、声をかけていただいたんです。それでおふたりと発声練習をすることになったのか、前後関係は忘れてしまいましたけど、僕にとっては初のミュージカルへの挑戦で。
草笛 私、観に行ったわよね。
内野 終演後、「もっと自分自身が作品に酔わなければダメよ。自分が酔わないと、人を酔わせられない」とアドバイスされました。
草笛 ずいぶん偉そうなこと言ってるわね、私。
内野 2000~05年の間にトート役を何回か務めたんですが、05年くらいのトートは、やっと自分らしさを出せるようになって。エロくてカッコよかったんじゃないでしょうか(笑)。でも00年のときはだいぶ堅かった。草笛さんのアドバイスは、そのとおりだと思いました。
リラックスできる間柄だから
草笛 その日だったか、後日だったか、一緒に食事をしたらあなたが食べ過ぎて、倒れちゃったことがあったでしょう。
内野 終演後、草笛さんが焼き肉屋さんに連れていってくださったのに、舞台への緊張のせいか、その日は体調がいまひとつだった。一口目のビールが全然おいしいと思えなくて、自分でも「あれ?」と感じてはいたんですよね。でもお肉はおいしいからどんどん食べて、飲んでいたら、突然トイレから出られなくなっちゃって。
草笛 私、すごく責任を感じたわけ。それで知っている病院に運んだの。院長先生に「すみませんけど、私の友人がどうもダメになっちゃったので、一晩面倒みてくださいますか」って。
内野 目が覚めたら、ものすごい美人のお医者さんが目の前にいたことだけよく覚えています。(笑)
草笛 私、あなたのマネージャーさんにも、「明日ここに迎えに行ってくださいね」って連絡したのよ。
内野 草笛さんにはなにからなにまでお世話になったと思いますけど、失礼ながら僕は一切覚えてないんですよ。
思い出せるのは、「あなた~、大丈夫~? どうしたの~?」ってトイレのドアをノックする、心配そうな草笛さんの声だけ(笑)。「苦しいです……」と答えながら意識を失ったので。
草笛 あなたの気持ちいいところは、本当によく食べるところ。そして、よく飲む。私が飼っていたゴールデンレトリバーのシャーリーの上に覆いかぶさったまま、うちの長椅子で寝ちゃったこともあったじゃない。
内野 大酒くらっちゃうのは、草笛さんといるとリラックスできるからでしょうね。あのころご自宅に遊びに行くと、よく部屋で音楽をかけて、それに合わせて即興で体を動かしてらっしゃいましたね。
「私たちは音楽が聞こえてきたら、こうやって自由に動けなくちゃダメなのよ」とか言いながら。
草笛 文学座で正統派の演技を身につけてきたあなたを、少し揺さぶりたくなったんじゃないかしら。
10/11 08:15
婦人公論.jp