惜しまれて姿を消した歌手・ちあきなおみ。デビュー55周年、NHK特番放送で再注目!若い世代や外国にも人気の理由は

今年デビュー55周年を迎えたちあきなおみ(写真提供◎テイチクエンタテインメント 以下すべて)
歌謡曲好きなら誰もがその名前と歌声を知るちあきなおみさん。1969年「雨に濡れた慕情」でデビューし、今年55周年を迎えた。だが、1992年に活動を休止し、公の場に姿を見せることはなくなった。にも関わらず、彼女の存在感は薄れるどころか、むしろ年を追うごとに高まっているという。『ヒットソングを創った男たち~歌謡曲黄金時代の仕掛人』著者の濱口英樹氏が、ちあきさんの魅力を綴る。

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【写真】1992年に活動を休止。憂いのある表情で

「喝采」「黄昏のビギン」「紅い花」がトップ3を

「素晴らしかった」「表現力に圧倒された」「すごい迫力で見入ってしまった」――。連休最終日の9月16日の夜、そう絶賛する声がSNS上に溢れた。NHK BS特集『ちあきなおみ ~NHK秘蔵映像で贈るデビュー55周年~』が放送された直後のことだ。

同番組は『The Covers』(NHK BS)のMCを務めるリリー・フランキーのナレーションで進行。代表曲「喝采」(1972年)の紅白歌合戦における映像から始まり、デビュー曲「雨に濡れた慕情」(1969年)、初ヒット「四つのお願い」(1970年)、鬼気迫る歌唱が話題を呼んだ「夜へ急ぐ人」(1977年)、現時点のラストシングル「紅い花」(1991年)など、全11曲がNHKに残る貴重映像でオンエアされた。

放送後はSNS上の反響にとどまらず、各種ランキングでちあきの作品が急上昇。Amazonの演歌・歌謡曲部門ではコンセプトアルバム『微吟』(2019年)、『残映』(2022年)、『銀嶺』(2024年)など5作品がトップ20に入り、『微吟』は発売6年目で再び1位を獲得した。一方、配信のデイリーチャートではレコチョクの歌謡曲/演歌部門のトップ100に14曲がランクイン。放送前の5曲から大幅に増加し、「喝采」「黄昏のビギン」(1991年)、「紅い花」がトップ3を独占した。いずれも“特番効果”と言えるだろう。

Googleの検索数でも放送前の20倍を記録。番組で紹介された11曲から成るプレイリストが「ちあきなおみ Official YouTube Channel」で公開されたこともあり、YouTubeの検索数も放送前の4倍に跳ね上がった。これらの現象から、番組を視聴したユーザーがネットでちあきの情報や音源、映像を検索し、CDの購入にまで繋がっていることが見てとれる。

特番効果で、Googleの検索数でも放送前の20倍を記録

若い世代や海外のリスナーにも魅力が伝わる

1969年「雨に濡れた慕情」でデビューしたちあきは今年が55周年。とはいえ1992年に活動を休止したため、すでに休止期間の方が長い状態が続いている。にも関わらず、彼女の存在感は薄れるどころか、むしろ年を追うごとに高まっている。

再評価の機運を高めたのは2005年11月にNHK-BS2(当時)で放送された90分特番『歌伝説・ちあきなおみの世界』で、同番組はアンコールに応えて繰り返し再放送。その後はBSテレ東やBS-TBSでも大型特番が制作され、いずれも再放送を重ねている。

人生の機微や哀歓を巧みに表現する唯一無二のボーカルが、聴く者を魅了してやまないからだろう。

アニバーサリーイヤーの今年は3月にテイチクから発売されたコンセプトアルバム第3弾『銀嶺』が前2作同様、ロングセールスを記録。6月より、ほぼすべての音源のデジタル配信を開始したことから、今まで彼女の歌声に接する機会がなかった若い世代や海外のリスナーにも、時代やジャンルを超えた魅力が伝わり始めている。

コンセプトアルバム第3弾『銀嶺』

9月23日にはBSテレ東で『ちあきなおみ デビュー55周年~心を照らす不滅の歌声~』(初回放送:5月26日)が17時56分から再放送される。歌姫・ちあきなおみの存在感はさらに増していくに違いない。

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