SixTONES・松村北斗のシングルファーザー役にほっこり。『西園寺さんは家事をしない』「家族とは何か」「普通の幸せって?」を考えさせられるドラマ

イメージ(写真提供:Photo AC)

仕事はバリバリやるけれど家事は一切しないーー。そんな38歳独身女性と、彼女の家にお世話になるシングルファーザーとの日常が話題の夏ドラマ『西園寺さんは家事をしない』。現在話題沸騰中のこのドラマを、ライター・上田恵子が紹介します。

【画像】ひうらさとるさんの原作。再現度は…?

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徹底して「家事をしない」生活を送る西園寺さん

今年の夏ドラマで、「元気がもらえて癒される」「パパと娘のコンビが最高」と話題になっているのが、松本若菜さんとSixTONESの松村北斗さんが主演を務める『西園寺さんは家事をしない』(TBS系・火曜夜10時)だ。

仕事ができて情に厚く、保護犬・リキを飼うために一軒家を購入する甲斐性もある38歳独身の西園寺さん(松本若菜さん)。「掃除なんてしなくても死なない(家事代行サービス頼み)」「服は乾燥機付き洗濯機から取り出してそのまま着る」「料理はしない」「食器は紙皿、紙コップ!」という具合に、徹底して「家事をしない」生活を送っている女性である。

そんな西園寺さんが働くアプリ制作会社に、妻を亡くし、4歳の娘・ルカ(倉田瑛茉ちゃん)と暮らす、アメリカ帰りの有能なエンジニア・楠見くん(松村北斗さん)が転職してくる。帰国早々自宅が火事になって途方に暮れていたところ、西園寺さんの提案で「大家と間借り人」としてひとつ屋根の下に暮らすことになり、やがて「偽家族」をつくっていく…というストーリーだ。

原作は『ホタルノヒカリ』等を手掛けた、ひうらさとるさんによる同名コミック。自分から言い出したこととはいえ、偽家族として楠見父娘と生活を共にすることで、これまで避けてきた「家事」や「家庭」と向き合わざるを得なくなる西園寺さん。明るくポップな展開ながら、あらためて「家庭とは、家族とは何か?」を考えさせられる奥行きのあるドラマだ。

本物の家族、普通の家族とは?

西園寺さんが自身の家を購入したのは、「家庭」から自由になり、自分が「やりたいことだけをやって」暮らすためだった。

西園寺さんの母親は家事をしっかりする、いわゆる「いいお母さん」だったが、ある日突然、家を出て行ってしまった。原作では、もともと優秀な教師で、結婚して専業主婦になった女性として描かれている(そしてそんな母親について西園寺さんは、「家族のため家族のためって 我慢して我慢してブチ切れたんだったら “家事”って 家庭ってなんなんだろうなあ……」と振り返っていた)。

また、ドラマのなかで楠見くんが西園寺さんに対して「家族でもないのに」という言葉を口にするが、一緒にご飯を食べ、仕事が早く終わったほうが保育園にルカを迎えに行き、互いを思いやり、協力して家事と育児をこなす様は、じゅうぶん良い家族に思える。

そもそも偽家族に対する「本物の家族」って何だろう。法的な届けを出していること? 血が繋がっていること? 本物の家族だからといって上手くいくとは限らないことは、すでに西園寺さんの家庭が証明しているではないか。

第4話では、「普通の家族とは?」というテーマが描かれた。ルカの保育園の保護者仲間の家庭環境が、「夫の連れ子を育てている」「女性どうしでパートナー」「妻が単身赴任中」とさまざまであることを知った西園寺さんと楠見くんは、「普通の家族なんて存在しない。自分たちは存在さえしないものに振り回されているのでは?」と思い至るのだ。まさに令和を感じさせるいいシーンだった。

太陽のような明るさの松本若菜さん、涼し気な佇まいの松村北斗さん

ストーリーの良さもさることながら、このドラマのもうひとつの魅力は俳優陣にある。まず、西園寺さんを演じる松本若菜さん。「よくぞキャスティングしてくださいました!」と制作サイドに言いたくなるくらい、陽気で豪快で頼りになる西園寺さんをイキイキと演じている。今となっては、彼女以外の西園寺さんは想像できない。

心の声がダダ洩れのクルクルと変わる表情、周囲を元気にする太陽のような明るさ、オンとオフどちらも素敵なファッション。どの西園寺さんもすごくいい。松本さんは芸歴18年目にしてゴールデンプライム帯連続ドラマ初主演だそうだが、本作を機に引っ張りだこになることだろう。

そしてそんな松本さんと対峙するのが、シングルファーザーの楠見くんを演じる松村北斗さんだ。画面に涼し気な佇まいの彼が登場すると、この夏のとんでもない暑さが少し和らぐような気がする。クールに見えてどこか天然なキャラクターも、松村さんに合っているように思う。

娘のルカ役を演じる瑛茉ちゃんとの父娘感も素晴らしい。少し前に、ドラマの公式インスタグラムに松村さんと瑛茉ちゃんのオフショットがアップされていた。それは少し俯いて抱っこ紐を直す松村さんと、松村さんに抱っこされたまま口を開けて熟睡している瑛茉ちゃんのツーショットだったのだが、見た瞬間あまりの可愛さに「ひゃー!」と声が出たくらいだ。

幼い子はシビアなので、本当に心を許していないとこうはならない。同じくこのドラマにハマっている友人に「西園寺さんのインスタ見て!」とLINEで知らせたところ、間髪入れず「ひゃー、なにこれカワイイ!」という返信が来た。同様に感じた人がたくさんいたのだろう、このショットの「いいね!」数は他のそれより1桁多かった。

「稔さんロス」という言葉も生まれた『カムカムエヴリバディ』

松村さんには、過去何度か本誌に登場していただいている。なかでもNHK朝ドラの『カムカムエヴリバディ』で「稔さん」を演じた際のインタビューは、かなり長い間、当サイトのランキング1位をキープしていた。

放映中の稔さん人気はすさまじく、稔さんが戦死した時は、ショックを受けた視聴者の間で「稔さんロス」という言葉が飛び交ったくらいだ。

この時のインタビューで、筆者が「朝ドラに出たら知名度がさらに幅広い層に広がるのでは?」と言うと、「えー、どうでしょう……。上がるかなあ……上がったらいいですよねえ、知名度」と、遠慮がちに答えていた松村さん。

あれから3年。SixTONESはドームツアーを行うグループになり、松村さん個人もドラマや映画への出演はもとより、アニメ映画『すずめの戸締り』で声優としても見事な演技を見せるなど、幅広い層から高い評価を受けている。

デビュー直後にインタビューさせていただいた際、「SixTONESはハードなダンスをする一方で歌にも力を入れているので、あえて歌をちゃんと拾ってくれるハンドマイクを使っています」と話してくれたのも印象的だった。2024年の今も、彼らは当時と変わらずハンドマイクで歌っている。

嫌な人が出てこない、先の展開が楽しみなドラマ

家中をくまなく掃除し、シワシワの服(西園寺さんの)にアイロンをかけと、張り切って「家事の恩返し」をしてくれる楠見くんに対し、「こっちが気を使う。(すると)あっちが気を使い返しをする」「くつろげない」「ほんの少しだけど疲れちゃって……」とため息をつく一方で、「でも人と住むのっていいなと思った」と涙する西園寺さん。

亡き妻がやっていたように、家事も育児も完璧にこなさねばと無我夢中でやってきたが、西園寺さんと暮らすようになって「一人で抱え込まず、困った時は誰かの手を借りてもいいのだ」と肩の力を抜くことを覚え始めた楠見くん。

この原稿を書いている時点でドラマは第4話の放送を終えたところだが、ルカの誕生パーティーを経て「西園寺さんと楠見くんの距離が少し近づいた!?」と思いきや、2人の変化に気づいたルカが不穏な雰囲気に……。果たして偽家族プロジェクトは続くのか!? 西園寺さんと楠見くんの関係はどうなるのか!? 

嫌な人が出てこないところも好ましい『西園寺さんは家事をしない』。これから先の展開が楽しみなドラマだ。

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