小泉孝太郎さんが『A-Studio+』に出演。中学生時代野球部で…「なりたくなかった政治家に、役として60代で挑戦したい」

2024年7月5日の『A-Studio+』に小泉孝太郎さんが登場。3歳からの幼馴染上地雄輔さんが語る小泉さんの素顔や、中学生の部活動仲間が語る学生時代が明かされます。今回は、小泉さんが演技や家族、結婚観などについて語った2023年11月のインタビュー記事を再配信します。

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日本の眼鏡の95%を生産する福井県で、ゼロからメガネ作りに取り組んだ兄弟と、 二人を支え続けた妻の物語を描いた映画『おしょりん』が11月3日から全国公開されます(福井県では10月20日から先行上映中)。本作で、メガネ作りに情熱を燃やした兄・増永五左衛門役を演じる小泉孝太郎さんに、作品のことや人生観、結婚観などをうかがいました。(構成◎かわむらあみり)

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【写真】夫婦役の小泉孝太郎さんと北乃きいさん。2人並んでメガネの出来を確かめる

演じるとき、実在する人物が一番怖い

増永五左衛門役のオファーをいただいた時は、正直、ひるみました。メガネ産業の礎を築かれたこんなに偉大な方を演じるなんて、僕でいいのだろうかと。さらに僕は神奈川県民なので、福井県出身の役者さんがされたほうが地元の方が納得するのではないか、僕が演じるのは失礼に当たるのではないかと、本当に僕にお話が来たのかとマネージャーに確認したほどです。すると、「孝太郎さんに、増永五左衛門役でオファーが来ています」と言われて、これは責任重大だと実感しました。

さまざまな役を演じさせていただく機会がありますが、実在する人物が一番怖いんです。増永五左衛門さんやこの作品の素晴らしさをわかっているからこそのプレッシャーもあったので。僕は増永家を背負わなくてはいけない、日本のメガネのシェア95%である福井県を背負うわけです。

そんな役だからこそ最初は弱気でしたが、お引き受けすると決めてから、実際に福井県へ撮影に行くと、初日から現場では「小泉さん、増永五左衛門さん役でうれしい」とエキストラの方を含めていろいろな福井県の方々がウェルカム状態で受け入れてくださったんですよ。そこで、一気に変わりました、「よし」と。それまではまるでアウェイに行く気持ちでしたから。(笑)

福井県のみなさんがあたたかく迎えてくださり、僕も全身全霊を込めて演じなくてはとスイッチを入れてもらった感じがして。全部の撮影が終わるまでに増永五左衛門役をしっかりと自分の中で完全燃焼させて、公開が終わったところで、みなさんから合格点をもらえるようになりたいと思いました。

(c)「おしょりん」制作委員会

福井弁の耳心地の良さが一番印象に残った

増永五左衛門さんを演じるにあたって、まずとても人間力がある方だと思いました。怠けている、だらしない男だったら、まわりの方々に信頼されていない。それがなぜ仲間を動かしたり、みんなを説得したり、「五左衛門さんのためなら」と多くの方たちが彼と共に人生を賭けたかと言えば、私利私欲のない男だったからですよね。もし私利私欲のために、自分は庄屋の跡継ぎをやめて、金儲けをしたいだけだったら、一家は終わっていたと思うんです。でも、五左衛門さんは精神性の高い男だった。

明治時代のお話なので、今、映画を観ると驚くほど頑固な男に映るかもしれません。昭和初期の男でさえ頑固な部分はあるので、 明治時代はなおさらのこと。でも、メガネをもし世の中に広めることができたら、どれだけのメガネを必要としている人たちを救うことができるんだろう? という純粋な思いで突き進む。自分の田畑や資材を投げ打って、うまくいくかどうかわからないメガネ作りに人生を賭けるという情熱。そこに一番、心を打たれました。

少なからず、「この人のためだったら」という思いは、日本人のDNAとして、みなさんの中にも流れていると思っています。日本人が持つ組織力の強さということにもつながっていくのかなと。僕が同じ立場だったら、もしかしたら地獄に落ちるかもしれないし、ご先祖さまに怒られるかもしれないけれど、五左衛門さんのように「よし!」と決めたらやり抜いたでしょうね。

五左衛門さんは、当初メガネ作りに反対しますが、視力の弱い子どもがメガネをかけて「見える」と喜んでいる姿を目の当たりにして、メガネ作りを決心します。やっぱり、誰かのためにという気持ちは、地域のためにもなるから。五左衛門さんは偉大な方ですよね。

今回、唯一大変だったことといえば、方言です。方言指導の先生もついてくださり、少し大阪弁に聞こえるような感じだけれど、その中間と標準語をまじえての福井弁はこうです、という具合に教わって。今回は、若い人たちがわからなくなるから、あえて完璧な明治時代の福井弁にはしなくていいとも言われて、救われました。地元のエキストラの方含め、「小泉さあん(「あ」を強調する後ろ上がりのイントネーション)と言ってくれて、福井弁の耳心地の良さが一番印象に残りましたね(微笑)。福井弁はとてもぬくもりがあって、優しいんです。

(c)「おしょりん」制作委員会

森崎ウィンくんと北乃きいちゃんは似ている

作中で五左衛門に弟の幸八がメガネ作りを持ち掛けますが、その幸八役を森崎ウィンくんが演じています。実は、ウィンくんとは2013年のTBS系ドラマ『名もなき毒』で共演したことがありました。その時の印象とまったく変わらず、ずっと弟のような雰囲気があって、人懐っこい愛されキャラ。今回、ウィンくんが弟役ですごく良かったですし、居心地もよかったです。兄弟といえば、実際に僕も弟の進次郎がいますが、兄弟にしかない関係性というものがあって、10代や20代の時はこうだったなと思い出すこともありました。

僕がやったら確実に父に怒られるようなことも、進次郎がやったら怒られないということがあるわけです。今作も、兄としての五左衛門の気持ちがよくわかって。弟の幸八は、何年か前に事業も失敗して、家を出ているのに、ある時のこのこと実家に顔を出すなんて、この野郎と(苦笑)。自分がこの家を背負っている重圧や責任がどれだけのものかわからないだろうと、幸八の顔を見るだけで怒り心頭。でも、兄弟だから、そんな厳しい顔が出せるんですよね。そこは僕も男兄弟がいたから、よくわかりました。

五左衛門の妻である、むめ役の北乃きいちゃんも、明るい方です。もしかしてウィンくんときいちゃんのタイプは似ているかも。二人とも、ポップで弾けるようなところがあります。きいちゃんとお話しするのは初めてだったんですが、奇跡的に同じ神奈川県横須賀市出身で、すぐ横須賀の話になりました。きいちゃんは「いつかお話ししたかったんですよ」と言ってくれて。

さらに「母と祖母と孝太郎さんの実家を見に行ったことがあるんです」と(笑)。実は近所だったんですよね。「警察官の方が立っているから、そっと見ながら、小泉純一郎さん家だ!」と何回か見学に行っている、と言われました(笑)。きいちゃんから「孝太郎さんもご実家の近くの動物病院だったんですよね?」と聞かれて、「なんで知ってるの?」と返すと、「私も犬を飼っていて、動物病院に孝太郎さんの写真が飾っていたので」と教えてくれて、すぐに打ち解けました。「どこどこのお店に行っていました」とか、マニックな地元の話が尽きなかったです。

(c)「おしょりん」制作委員会

結婚相手は一生かけてサポートしてくれる女性がいい

『婦人公論』でインタビューしていただいたのが16年前なんですね。2007年6月7日号掲載だったので、28歳の終わり頃です。当時、結婚相手はサポートしてくれる女性がいい、と話していますが、今も変わらないですね(笑)。タレントとマネージャー、政治家と秘書のような関係が理想。自分を支えて、一生かけてサポートしてくれる女性がいいんです。当時から、結局はものすごく寂しがり屋だと言っていますが、そこも変わっていないですね。(笑)

父は政治家だったので、政治家と秘書の関係や、夫婦も男と女で、親戚含めいろいろな人たちを見て育ってきました。子どもの頃から、大人と触れ合う機会が多かったので、何事もバランスで成り立っているんだと理解しています。たとえばテレビで小泉孝太郎のことを観てくださる視聴者の方がいて、でも僕の裏にはマネージャーやプロダクションがあるわけで、表裏一体なわけですよ。夫婦もそうです。結婚は、その表裏一体のようなところがうまくいかないと、僕は成り立たないと思っていて。

いろいろな夫婦の形があって、十人十色ですよね。ただ、僕という人間には、マネージャーのように「あなたを支えます」という女性じゃないと成り立たないとわかっているから。「私もあなたと同じで戦いたいの」では、ぶつかってしまう。もしも同業者で「一緒にやっていきましょう」となるんだったら、結婚しないほうがいい。あなたはあなたで、僕は邪魔になるかもしれないし、あなたに求めてしまうこともあるだろうからと。

僕がもしも結婚したいと思う女性と出会ったとしたら、そこをまずうまく話し合って、わかってくれないと無理ですね。「わかりました。私の第一優先はあなたです」という女性。ある意味、古風というのか、昭和的な考えがあるんだと思います。こういった女性に出会わないのなら、無理に結婚することはないでしょうね。

仲間と出会えたことが一番の幸せだと実感

俳優生活は、22年目になりました。みなさん、生きていると恋愛がうまくいかなかったり、離婚したり、大切な人の死に直面したりと、それぞれが何かしらの抱えきれない場面に直面することもあるかもしれません。僕も振り返ると苦しい時もあったはずですが、今はもう人生で幸せを十分得られたと思っていて。それは、仲間と出会えたことが一番の幸せだと実感しているからです。

マネージャーは20年以上、僕と家族以上の時間を費やしてきています。僕も何かを犠牲にしなくてはいけない時がたくさんありましたが、マネージャーも家族との時間を犠牲にし、僕との仕事の時間を優先して、ずっと一緒にいる。芸能界では、ムロツヨシや上地雄輔もそうですが、学生時代の友人や、地元の知り合い、進次郎や父親との関係で出会えた人たち。もうこれ以上ない恵まれた人生だと感じていて、今まで人を大切にしてきた自負もあります。

もしも人生で苦しいことがあって悩んでいる方がいたら、どれだけ本音で人と向き合ってきたかによって、乗り越えられるかどうかが変わってくるはず。誠意を持って生きてきた人ならば、どんな困難も乗り越えられると思います。でも、人をないがしろにしてきた人は、苦しい時や辛い時を乗り越えられないかもしれない。人に真摯に向き合って、心をオープンにしていないと、誰も助けようと手を差し伸べてくれないと思うんです。

人と真剣に向き合い、僕は本音で話します。このインタビューもそうです。結婚観にしても、今の時代では男尊女卑だと言われるとしても、仕事観や人生観も含め、この僕と仲良くなってくれた人たちもいる。僕が困った時、苦しい時にそれを感じ取ってくれたり、救ってくれる親友たちや家族、仲間がいたから乗り越えられたこともたくさんあったと思うんですよね。

婦人公論.jpをご覧になっている読者の方も、苦しい時こそ、自分はあの人に何ができるんだろう? という考えを持っておくと、それは自分のためにもなると思います。本気で人や何かと向き合うと、自分の夢に一緒に乗ってくれる人も現れて、幸運が訪れるから。本気で生きないと、自分のことすらわからないですし、うまく物事は好転していかないのではないでしょうか。

50代か60代で政治家の役をやってみたい

僕はバラエティ番組にも出演させていただくことがありますが、芝居の時とオンオフが自然と切り替わるんですよね。『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS系 毎週木曜午後8時)などは、もう小泉孝太郎のままで出てしまえばいいですから。でも、ドラマや映画はセリフがあって、違う人物を演じる小泉孝太郎というところが、面白くもある。自分だけれど、違う人物として言葉が決まっていますよね。

バラエティ番組や生放送、情報番組は小泉孝太郎のままで出られるから、それは大きな責任になるところもありますが、全部自分の言葉で話せる。人が集まるエネルギーも好きですし、両方ともすごく楽しいです。

今45歳ですが、今後この役をやりたい、という願望はあまりなく。それは、小泉孝太郎にこれを演じさせたい、と思ってくださる方がいるから仕事があるので、これからどんな役と出会えるかワクワクしています。ただ、そうですね……。僕は本当に政治家になりたくなかったから(苦笑)、いつか歳を重ねた時に、なりたくなかった政治家の役はやってみたいですね。

でも、今じゃないですよ。50代か60代になった頃ならいいかなと。自分の生まれ育った環境も、その時「無駄じゃなかった」と思えるだろうし(笑)。役に生かされるわけですから、きっと、面白いでしょうね。

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