『虎に翼』「優三さん役が太賀さんでよかった」主人公・寅子役の伊藤沙莉が怒涛の8週・9週を振り返る。印象深かったシーンは

《社会的信用を得るため》に結婚したつもりの寅子だったが……(『虎に翼』/写真提供:NHK)
現在NHKで放送中の伊藤沙莉主演・連続テレビ小説『虎に翼』。数々の困難を乗り越え、日本初の女性弁護士となった伊藤演じる主人公・猪爪寅子だが、この2週間は、妊娠によって仕事をあきらめ、戦争で大切な人を亡くし…とつらい出来事が続く展開となった。

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【写真】「虎は千里を走る」お守りに込めた思いは届かず……

独身では弁護の依頼を任されないからと、「仕事のため」に優三と結婚したはずの寅子だったが、優三の気持ちを知り、本当の夫婦になっていく。愛する娘も生まれたが、仕事はやめざるを得なくなり、終戦間際、ついに優三にも赤紙が来た。

数々のつらい出来事の中、優三との結婚を機に、愛する人との幸せを感じる瞬間も多くあった。色々な感情が渦巻く寅子をどんな思いで演じていたのか。

主人公・寅子を演じる伊藤沙莉さんのオフィシャルインタビューが発表された。

裁判には勝訴したが、依頼人・満智の嘘を見抜けず、自分の甘さを痛感したことも(写真提供:NHK)

まず、依頼人の嘘、同士の離脱、恩師からの言葉に弁護士を辞め、出産するも戦争で優三は出征…と怒涛の展開となった第8週の内容について、

妊娠中無理をして倒れた寅子への、恩師からの言葉に…(写真提供:NHK)

「寅子にとっては理想や夢が打ち砕かれて、試練と挫折の連続。演じていてとてもつらかったです。

やっと弁護士になれたのに辞めることになったり、やっと恋をして相手を大事に思えるようになったところで戦争へ行ってしまったり。いろいろなものを得ると同時に、失っていく週でした。

1週目の第5回(4月5日放送)で、お母さんのはる(石田ゆり子)が予言のように『でも、(弁護士に)なれなかったときは?』『なれたとしても、うまくいかずその道を諦めることになったときは?』と寅子に問いかけていましたが、まさしくその通りになって。寅子としては一番悔しい展開だったと思います。

つらいことも多かったですが、優三さん(仲野太賀)との愛が深まり、すごく幸せなときもありました。その幸せな時間があまりに短いという切なさも、物語としては好きなんですよね。」

と、仲野演じる優三との幸せな時間についてもコメント。優三を演じる仲野太賀との掛け合いについては、

「ご本人にも何度伝えたか分かりませんが、本当に優三さん役が太賀さんでよかったと心から思いましたし、互いにそうした言葉を掛け合ううちに、より絆が深まりました。

太賀さんはお芝居についていろんな提案をしてくれながら、私の考えを整理させてもくれて。

特に第8週で寅子として演技が自然とできたのは、優三さんが太賀さんだったというのがとても大きかったです。改めて振り返ると、演じていてすごくいい時間でした」

と、コメントを寄せた。

また、第9週で、優三の死の知らせを隠していた父・直言(岡部たかし)が倒れ、寅子が発見してしまう。余命わずかな直言が、優三の死だけでなく、今までの数々の懺悔や正直な思いを家族の前で一気に吐き出す。あろうことか「花岡くんのほうがよかった」という告白までしてしまうのだ。

「この週はもう、感情がぐちゃぐちゃで。このシーンでは、寅子の気持ちを整理したくて演出の方に相談したんです。

なかでも『でも、お父さんだけだったよ……家族で女子部に行っていいって言ってくれたのは』というセリフを言うときは、寅子としてあふれてくる感情が、喜怒哀楽のどこに属しているのか分からなくなって。

感情の焦点をどこにも合わせられなくなってしまったんです。そこで『答えなんか出そうと思わなくていいよ、もうぐちゃぐちゃのままでいい』とアドバイスをいただいて。その通りに、あえて特定の感情に焦点を定めずに演じたからこそ、違和感のない自然な表現ができたと感じています。」

と、色々な気持ちが渦巻き、整理のつかないままもがく寅子と一体となった演技の舞台裏を語った。

優三の死を隠していた直言との対面は、色々な感情がごちゃ混ぜになり…(写真提供:NHK)


そして、印象深かったシーンとしてあげたのが、昨日5月30日放送の第44回。母に「お父さんのカメラを売った。このお金で、心が壊れる前に贅沢をしてきなさい」と送り出される寅子。屋台で焼き鳥とどぶろくを頼むも、「おいしいものを一緒に食べよう」と言ってくれた優三を思い出し、手を付けずお金を置いて店を出た。そこへ店の女性が追いかけてきて、新聞紙につつんだ焼き鳥を渡してくれた。河原に座って優三を思い出しながら一人焼き鳥をかじる寅子。すると、その新聞紙には「日本国憲法」が書かれてあった。バックには「話題の歌入りの曲」がまた流れている。

「第1回(4月1日放送)につながる河原のシーン!優三さんの幻影に「トラちゃんができるのは、トラちゃんの好きに生きることです」と改めて励まされて、それと同時に新しい日本国憲法を手にするという、終わりと始まりがリンクするところが物語の造りとしてもおもしろいと思いました。続く10週からも、楽しんでいただけたらうれしいです!」

と、SNS等でも話題となった、ドラマ初回のオープニングシーンとのリンクを語った。

何か吹っ切れた寅子。優秀で、戦争前には帝大を目指しながらも「家族を背負うため働く」と言っていた弟には「自分の幸せのために大学へ行け」と諭し、自身は裁判官を目指す。「女性の権利拡大」だけでなく、「男も荷を下ろしていいんだ」というメッセージが込められている。

次週第10週からは、いよいよ寅子が新たな道へと踏み出していく。松山ケンイチが演じる桂場等一郎との再開、沢村一樹演じる久藤頼安との出会いなど、新たに踏み出した世界で寅子にどんなことが起こるのか。今後の展開も楽しみだ。

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