今田美桜「〈お言葉を返すようですが〉って使ったことないです」山本耕史「僕は〈お言葉を返す〉ほうなんです」

(後列左から)山本耕史さん、上川隆也さん、飯尾和樹さん(前列左から)池井戸潤さん、今田美桜さん
現在放映中の『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)。原作者の池井戸潤さんが、ドラマの収録現場に「陣中見舞い」に訪れました。和気藹々とした雰囲気の中で行われた、出演者との本音トークをお届けします。(取材・文◎吉田大助)

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【写真】第一銀行のエリート紀本と昇仙峡

原作者と出演者4名によるクロストーク

4月某日、日本テレビ系連続ドラマ『花咲舞が黙ってない』(土曜21時〜)の撮影現場を、原作者の池井戸潤さんが訪れた。

今田美桜さん演じるヒロインは、メガバンク・東京第一銀行の臨店班に所属する花咲舞。上司である相馬健(山本耕史)と共に銀行内で起きたトラブルを次々に解決し、密かに進行する陰謀に立ち向かう──。

本作はかつて杏さんと上川隆也さんのコンビでドラマ化されている(2014年/2015年)が、今回キャストを一新。過去2回のドラマ放送後に発表された新作小説(中公文庫・講談社文庫『花咲舞が黙ってない』)を原作に、ドラマオリジナルの展開も盛り込んだ内容になるという。

池井戸さん、今田さん、山本さんに、次長役の飯尾和樹さん、今回は舞の叔父で居酒屋「花さき」店主役を演じる上川隆也さんを加えて、「花さき」の撮影セットの中でおこなわれたクロストーク。舞の「お言葉を返すようですが」というキラーフレーズについて盛り上がった。

居酒屋「花さき」の入り口に立つ原作者の池井戸潤さん

今田さんはプライベートでは「お言葉を返すようですが」を一度も使ったことがないという

舞は誰かのことを常に思って発言している

今田 私は、プライベートでは「お言葉を返すようですが」って、一度も使ったことはないので……。

上川 これからもあんまり使わないでいいんですよ?(笑)

飯尾 でも、結構みんな心の中では思っていますよね。「それを言うんでしたら」、みたいな。

上川 だからこそのカタルシスが、この作品にはあるんじゃないでしょうか。

今田 「お言葉を返すようですが」もそうですが、その後に続く舞の言葉に対して、同じことを感じているという方がたくさんいらっしゃると思うんです。その言葉を伝える相手との向き合い方によって、「お言葉を返すようですが」の意味がどんどん変わっていて、今3話まで撮影が終わりましたが、舞は自分のためというよりは誰かのことを常に思ってそう言っているんだなと感じていて、だからこそグッときました。

池井戸さんからは「花咲舞が黙ってない」というフレーズの誕生秘話が…

ドラマタイトルの由来は

上川 池井戸先生は前回のドラマの原作となった『不祥事』という原作をお書きになるに当たって、先生の中にもなかなか思っていることを言えないとか、現状を突破できない、変えられないという思いはあったんですか?

池井戸 そうですね。会社って、理不尽なことがいっぱいありますよね? そういったことを、権力も地位もない、何もない女性行員がどんどん解決する小説って面白いんじゃないかなという着想で書いたものでした。それが1冊目の『不祥事』です。実は、ドラマのタイトルになった「花咲舞が黙ってない」というフレーズは、講談社文庫版『不祥事』のオビのキャッチコピーからきているんです。

一同 へーー!!

池井戸 それがドラマのタイトルになって、それを今度は続編のタイトルにしたんです。小説とドラマが、お互いに影響を与え合いながらできあがっている作品なんですよ。

上川 幸せなやり取りの中で生まれていった作品だと思います。

山本さんの「鍛える」姿も見どころのひとつ

いまも続く忖度社会

池井戸 ちなみに、「お言葉を返すようですが」は、前のドラマオリジナルのセリフなんです。シーズン1が放送されたのは2014年ですが、当時はなかなかそんなことは言えなかったと思います。それが10年経った今もまだ売りになっている。いい加減、世の中も変わらなきゃいけないですよね。

今田 なかなか難しいですよね。

池井戸 忖度社会、未だに続いているじゃないですか。そろそろ、今回のドラマをきっかけにして変わってほしいなと思います。

山本 僕はですね……実を言うと普段わりと「お言葉を返す」ほうなんです。

一同 (笑)

実を言うと普段わりと「お言葉を返す」ほうだと語る山本さん

大きな権力に対し、舞が証拠を突き付ける緊迫した場面

舞ちゃんの存在によって気づかされる

山本 今、話を聞いていて気づくことがあって。舞台や撮影の現場などで、僕がお言葉を返したことによって、他の人が違う意見を言い出したり、それでその場がクリエイティブになったりする時もある。誰かが悪者になって矢面に立たないと何も変わらない時ってあるんです。それによって敵もできるけど、団結力も生まれて、みんながどういうふうな角度で目の前の出来事と対峙しているのかが明確になっていく。もちろん言ったことで後悔することもあるんだけど、黙ってられない自分のほうを僕は大切にしているんです。だって、僕たちって黙って生きているでしょう。なるべく怒らないように、なるべく人に対して余計な一歩を踏み込まないように生きているけど、どうしても踏み込まないといけない瞬間ってあるんです。結果、「この人とはもう一緒に仕事することはないんだろうな」となることも……。

上川 そんなに思い切ってるんですか!?(笑)

山本 舞ちゃんが言うことによって拍手が起こったりとか、周りの人たちが「そうだった、そこにやっぱり気づかなきゃな」ってなるじゃないですか。それで良かったのかなって、舞ちゃんの存在によって気づかされるところがありました。 

飯尾 素晴らしいです。僕は疑問がある時などはスタッフさんに質問して、その答えによっては「あっ、もう好き勝手やろう」と思っちゃいますね。損するのは自分だから、自分の思うようにやっちゃいます。

舞と相馬を「いい感じ」に見守る臨店班次長を務める飯尾さん

上川 なんだか、お酒が飲みたくなってきました。(笑)

第5話では池井戸作品のあの“半沢直樹”が登場するという噂も? 気になる方は、ひと足先に原作をチェックしてみるのも手かもしれません。

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