「芦田愛菜さんのモノマネでスルメの食リポを…」高1の井上咲楽が「受からない」と思っていたオーディションを突破した“意外な決め手”とは

「よかったら話しませんか?」怪しいDMを信じて親に内緒で東京へ…芸能界を夢見る中学生の井上咲楽がした「ちょっと危険な」体験〉から続く

『新婚さんいらっしゃい!』(ABCテレビ・テレビ朝日系)を始め、数多くのバラエティ番組で活躍する、タレントの井上咲楽さん(24)。今年に入ってからは、NHKの大河ドラマ『光る君へ』への出演や、YouTubeチャンネルの開設、レシピ本『井上咲楽のおまもりごはん』(主婦の友社)の出版など、バラエティ以外での活動も注目されている。

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 ここでは、そんな井上さんが半生を赤裸々に綴ったエッセイ『じんせい手帖』(徳間書店)より一部を抜粋。「私なんか受からない」と思っていたホリプロスカウトキャラバンのオーディションで、井上さんが披露した驚きの特技とは……。(全4回の2回目/続きを読む

井上咲楽さん 撮影/荻原大志

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中学の時の先生と職員室でお茶を飲みながら作戦会議

 ホリプロスカウトキャラバンに応募したのは、完全な勢いだった。

 高1の私は、高1なりに冷静で、「私なんかは大手事務所には受からない」と思っていたから、履歴書を送る先はいつも小さめの事務所のオーディション。でも、ホリプロスカウトキャラバンの応募締め切り日、バイト先でその話をしたら「出すだけ出してみたら? 無料なんでしょ?」と言われて、「それもそうか」と思った。

 家に帰って机の前で自撮りをして、締め切り直前にオンラインで履歴書を送った。あとで聞いたらその年の応募総数は3万9702人。書類審査を通過して、地区予選に出られることになったけど、突破できるイメージは全然湧かなかった。

 困った私は芸能界を目指すのを応援してくれていた中学校の先生のところに遊びに行って、職員室でお茶を飲みながらこんな話をしたのを覚えている。

「私、今度スカウトキャラバンの地方予選に行くんですよ」

「すごいじゃん!」

「でも過去のグランプリ受賞者って、石原さとみさんとか綾瀬はるかさんとかなんですよ。私、どうしましょう。予選の本番で何したらいいですかね?」

「モノマネをやればいいじゃん」

「受かんないですよ、そんなの!」

「何万人も受けて本選まで残るのが10人くらいなんでしょ? 落ちる人が大半なんだから、そこで見ていた人に、『落としたけど、ヘンなモノマネやっていた子いたな』となるだけで意味はあるんじゃない?」

 歌やダンスはできない。小学生の頃から習っていた空手を活かして、演武……とも思ったけど、とにかく周りと違う面白いことをして印象を残せたら、と決意して会場に向かった。

決め手になったのは、モノマネ&スルメと眉毛

 地方予選は10人くらいのグループ審査だった。審査員の前で横一列に並んで、30秒間の持ち時間でそれぞれが「歌います!」「ダンスやります!」「〇〇が得意です!」と、特技を披露していく。

 私はギリギリまで演武と悩んだ末、先生のアドバイスを活かして芦田愛菜さんのモノマネをしながら、スルメの食リポをした。

 これだけを書くと、「うまく想像できない」と思う人もいるかもしれない。でもとにかく、芦田愛菜さんのモノマネをしながらスルメの食リポをしたのだ。

 30秒後、私はしっかりとした手応えを感じていた。

 なぜなら、審査委員長がひっくり返って笑っていたからだ。それを見て「自分、ハマっているな!」と確信した。

 ただ、これに関してあとから事務所の人に聞いたら、モノマネがウケていたわけではなかったらしい。

 30秒しか持ち時間がないのに、わざわざ立ち位置から離れ、ステージ後方に置いたカバンまで物を取りに行き、「何が出るんだ!?」と期待値を上げながら、取り出したのがただのスルメだったことがツボにハマっただけだったという。とはいえ好感触は好感触なのだから、問題なしだ。

 予選突破の決め手になったのは、眉毛だったという。

 ステージを降りる時、「最後に前髪を上げてください」と言われ、かき上げたら審査員がどよめいた。

「え、あの眉毛は何?」

 当時の私は重たい前髪で、手入れをしてない眉毛を隠していた。その髪型が一番自分の顔が映えると思っていたのだ。

 審査員の人も前髪の下からそんな眉毛が出てくると思っていなかったのだろう。思わぬギャップになって「ヘンな間でモノマネをする、すごい眉毛の子がいる」と印象に残り、最終審査に進めることになったのだ。

 人生、本当に何が功を奏するかわからない。思いついたことはやるだけやったほうがいいとしみじみ思う。

この子はなんで地方予選に通ったのかな?

 そこからは急展開だった。

 予選が終わって埼玉のおばあちゃんの家に泊まっている時、「サイパンで合宿があるので、今すぐパスポートを取ってください」と電話がかかってきた。ホリプロスカウトキャラバン40周年だったこともあり、公開で行われる東京での決選大会の前に海外合宿が行われる年だったのだ。

 サイパン? 合宿? パスポート?

 山奥育ちの私は海外に行ったことがなかった。突然のことに軽いパニックだった。

 埼玉から急いで実家に帰ってパスポートを申請。旅行用のスーツケースさえも持っていなかったから、親とイオンに買いに行った。

 だけど、売り場の前で何がきっかけだったか覚えていないくらいしょうもないことで親とケンカになった。

「そんな態度ならスーツケース買ってあげないよ」

「じゃあいい!」

 ごめんと言えばいいのに、謝れない。出発日まで意地を張ったままの私は、結局スーツケースがなくて、ゴミ袋に着替えを詰め込んだ。台車にそれをくくり付け、集合場所である目黒駅に向かった。

 パンパンのゴミ袋を2つくくり付けた台車を引き、キョロキョロしながら自動改札を抜けてくる私を見て、事務所の人は「この子、なんで地方予選を通ったのかな」と心底、疑問に思ったという。

撮影=荻原大志

(井上 咲楽/Webオリジナル(外部転載))

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