スマホを紛失したお詫びに夜の街に誘い…偶然出会った若い男女3人が過ごした数日間 「国境ナイトクルージング」を採点!

〈あらすじ〉

 上海に暮らすハオフォン(リウ・ハオラン)は、友人の結婚式に出席するため、中国と北朝鮮との国境の街、延吉(えんきつ)を訪れた。帰りのフライトまでの暇つぶしにバスツアーに参加するも、運悪くスマートフォンを紛失してしまう。そのお詫びにと観光ガイドのナナ(チョウ・ドンユイ)はハオフォンを夜の街に誘い、男友達のシャオ(チュー・チューシアオ)も加わって3人は夜通し飲み明かす。

 翌朝、フライトを逃してしまったハオフォンは、シャオの提案でバイクに乗り込み、3人で国境クルージングに出かけることにする。

〈解説〉

 競争社会でそれぞれに挫折した中国の若者3人が、極寒の国境の街で偶然出会い、数日間を過ごす青春ドラマ。監督・脚本は『イロイロ ぬくもりの記憶』のアンソニー・チェン。第96回アカデミー賞国際長編映画賞シンガポール代表。100分。

  • 中野翠(コラムニスト)

    ★★★★☆画面の清潔感、話の省略の仕方も適切。若者であることの矜持と不安。野生の動物たち。終盤のアリランの歌、胸にしみる。

  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★★☆すぐに下敷の見える3人の関係だが、温め合う形が親密。車やバイクでの移動にも抑えた抒情が漂う。隅に置けぬ感性だ。

  • 斎藤綾子(作家)

    ★★★★☆誰もが抱えていそうな悲しみ。その具体性が薄いのがいい。恋愛の枠に囚われず3人それぞれの辛さと慈しみを感じた。

  • 森直人(映画評論家)

    ★★★★☆青春映画の様々な紋切り型が瑞々しい輝きを帯びることに驚嘆。浮遊する生の在り様が延吉の特殊な地理性と絶妙に絡む。

  • 洞口依子(女優)

    ★★★★☆中国北部延吉を舞台に3人の男女が醸し出す感情が時に冷たくも熱くも伝わる。あの空気感は三宅唱が描く若さを想起。

©2023 CANOPY PICTURES & HUACE PICTURES
配給:アルバトロス・フィルム
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国境ナイトクルージング(中国・シンガポール)
10月18日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
https://kokkyou-night.com/

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年10月24日号)

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