《『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』誕生秘話》「縁起が悪いから冗談にしたんだよ」監督が明かす続編を決意した“世界的事件”
今から4年半前、ホアキン・フェニックスは、『ジョーカー』のアーサー・フレック役でオスカー主演男優賞を手にした。キャリア4度目の候補入りにして、初の受賞だ。
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「縁起が悪いから冗談にしたんだよ」
「あれは素敵だったね。僕はあの仕事に全力を注いだ。それを人々が受け入れてくれたのは、素直に嬉しい。とは言え、受賞は何も変えていないよ。僕が求めるのはいつも、優れた人たちとのすばらしい製作体験。僕にとって成功のバロメーターは、それなんだ」(フェニックス)
そう語るフェニックスは、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』でも、同じ体験ができたと満足そうな笑顔を浮かべる。『ジョーカー』北米公開時、トッド・フィリップス監督は続編の可能性を否定していたのだが、実は撮影中からふたりは半分冗談で今後についても話していたとのこと。「僕はまじめだったんだけど」とフェニックスがいうと、「縁起が悪いから冗談にしたんだよ」とフィリップスは笑いながら返す。
ホアキンは一度も続編に出たことがない
「公開されてもいない続編の話をインタビューで語るのも傲慢じゃないか。でも、頭の中にはあの頃からあったんだ。具体化したのには、パンデミックも関係している。ロックダウンでどこにも行けなくなった時、共同脚本家のスコット・シルバーと僕は、映画について全般的なことを毎日話していた。そんな中で、『ジョーカー』の続きを作るとしたらということについても話すようになったんだ。ホアキンはキャリアで一度も続編に出たことがないと、僕らは知っている。同じようなことを繰り返す映画なら、彼は絶対に出てくれない。彼を興奮させ、怖いと感じさせるものでないと。それは難しかったよ」(フィリップス)
アーサーがどう歌うかは、誰も知らない。
フェニックスをとりわけ興奮させたのは、ミュージカルの要素。彼はジョニー・キャッシュの伝記映画『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』でも歌っているが、今回は状況がまるで違っていた。
「『ウォーク・ザ・ライン~』では、ジョニー・キャッシュのように歌うことが要求された。人々は彼がどんなふうに歌うか知っているからね。でも、アーサーがどう歌うかは、誰も知らない。トッドは、『アーサーは歌わずにいられないような感情を抱えている』と言った。指針のない中、どうやるべきかを見つけていくのはプレッシャーだったが、逆に大きな自由もあったね」(フェニックス)
アーサーの新たな葛藤
今回、アーサーは、ようやく自分を愛してくれる人を見つける。だが、そのせいで、新たな葛藤が生まれることになる。その女性リーは、1作目に出てきたテレビ出演時のアーサーの行動を見て、彼のファンになった。彼女が知っているのはジョーカーであり、アーサーではない。
「彼は複雑な状況に置かれている。アーサーは何を望んでいるのか? ジョーカーは? そのふたりの目的は同じなのか? そこに矛盾はないのか? 1作目には出てこなかったことを、今作は掘り下げていく。しかも、トッドはすごく興味深いアプローチを思いついてくれたんだよ」(フェニックス)
このふたりはまたもや痺れる映画体験を与えてくれるだろうか。
ホアキン・フェニックス 1974年、プエルトリコ生まれ。8歳から子役として活動を開始。『グラディエーター』(00年)で評価を確立し、『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』(05年)ではゴールデングローブ賞主演男優賞とグラミー賞を受賞。前作『ジョーカー』でアカデミー主演男優賞を受賞した。
トッド・フィリップス 1970年、アメリカ生まれ。ニューヨーク大学在学中に、ドキュメンタリー『全身ハードコア GGアリン』(93年)を監督し注目される。『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』(09年)が大ヒット。『ジョーカー』でヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞した。
INTRODUCTION
ひとりの大道芸人が社会の理不尽と孤独にさらされ、暗黒のカリスマ・ジョーカーに変貌していくさまを描いた『ジョーカー』(19年)。トッド・フィリップス監督がそれから2年後の世界を描いたのが『フォリ・ア・ドゥ(二人狂い=ひとりの妄想が感染し、その妄想を共有する)』だ。同じくジョーカーを演じるホアキン・フェニックス、そして新たに登場する謎の女性をレディー・ガガが演じる。
STORY
恐怖のショータイムで社会を混乱に陥れたジョーカーことアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は、アーカム州立病院に収監され、裁判の時を待っていた。そんな彼の前に、リー(レディー・ガガ)という謎の女性が現れ、ジョーカーの言動を褒めたたえる。いつしか彼もリーの存在が大きなものとなっていき──。
STAFF & CAST
監督:トッド・フィリップス/出演:ホアキン・フェニックス、レディー・ガガ、ザジー・ビーツ/2024年/アメリカ/138分/配給:ワーナー・ブラザース映画/©&TM DC ©2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories
(猿渡 由紀/週刊文春CINEMA)
10/18 06:10
文春オンライン