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元日恒例『おもしろ荘』で分かった“2021年に伸びるコンビ”の実名〈今年ブレイクするのは「東京っぽいのに関西出身芸人」〉

 おかずクラブ、ブルゾンちえみ、ぺこぱエイトブリッジなど、これまで数々のブレイク芸人を輩出してきた元旦の恒例企画『ぐるナイおもしろ荘』(日本テレビ系)。

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 今年2021年は、Everybody、エルフ、オフローズ、さんだる、戦士、ダイヤモンド、野田ちゃん、フタリシズカ、やす子、ワラバランスの10組が参戦し、ダイヤモンドが優勝を飾った。

『おもしろ荘』は毎年キャラの濃い面々を選出しており、そのほかのネタ番組とは一線を画す番組だ。ネタの面白さを堪能できるだけでなく、露出の少ない芸人の“秘めたタレント性”を想像する楽しさも味わえる。

毎年元旦に放送される「ぐるナイおもしろ荘」は若手の登竜門的番組だ(Hulu公式サイトより)

 言い方を変えれば、賞レースとは異なる“リアルな実力”が試される場なのだ。

 2018年の放送では、3位だった宮下草薙が強烈なインパクトを残し、その後はジワジワと人気を獲得していった。私が直接彼らにインタビューしたところ、事前の観客を入れたライブ形式のオーディションでは宮下草薙は、はじかれていたそうだ。しかし、番組スタッフが「面白いから」と本番にねじ込んでくれたことでチャンスを掴んだ。

 このエピソードからも、『おもしろ荘』という番組がいかに“伸びしろのある面白さ”で選んでいるかが窺える。観客の反応という評価に頼るだけでなく、新たな可能性を感じる芸人には“蜘蛛の糸”を垂らす番組なのだ。

 そんな2021年の“新たなブレイク芸人”を占う元旦の放送で、私は、優勝した「ダイヤモンド」と、「オフローズ」の2組に注目した。

 彼らはどのようなキャリアを積んできたのか。そして、2組に共通する魅力とは何なのか、見ていきたい。

芸歴10年でやっと注目された実力派

 まず、優勝した「ダイヤモンド」(吉本興業)とは、どんなコンビなのか。2人はコンビ歴こそ浅いがどちらも芸歴は丸10年。すでに同業者から実力を認められていた存在だった。

 ツッコミ・野澤輸出(34)はNSC東京校出身。同期はニューヨーク、マテンロウ、デニス、鬼越トマホークなど個性派ばかりだ。その中でも、野澤が当時組んでいたコンビ「エレーン」は、飄々としたボケを特徴とする芸風で、一目置かれる存在だった。

 一方のボケ・小野竜輔(30)はNSC大阪校に通っていた。2010年に同校で知り合った元ジョッキーという異色の経歴を持つ松下慎平と「アルドルフ」を結成するも2016年3月に解散。その後、山口ゆきえとのコンビ「セクシーパクチー」での活動を経て、2017年に当時ピン芸人として活動していた野澤を誘い、コンビを結成した。小野は、かねてより野澤を「面白い」と感じていたようだ。

 2人が『おもしろ荘』で見せたのは、コーヒーのサイズにまつわる漫才だった。小野が「コーヒーショップのサイズを間違えて恥をかいた」と口にすると、野澤が体を使ってコーヒーショップごと異なるサイズ名の覚え方を披露していく。

 しかし小野は、どの店も「スタバと一緒じゃない?」と腑に落ちない。このやり取りが飛躍し、サイズと関係ない「相撲の番付」まで発展する、ほのぼの感とシュールさが同居したネタだった。

 小野は山口県出身で微妙に方言も混じるが、永山瑛太のような爽やかなシュッとした見た目、落ち着いた声のトーンも相まって関西の匂いを感じない。それは、YouTubeチャンネル『ダイヤモンドお笑いチャンネル』のネタ動画を見ても明らかだ。彼らのネタや芸風は実に“東京っぽい”のである。

 野澤だけがしゃべって動き、小野は一言も発することなく終わる「手漫才」、小野が無表情のまま、あらゆるランキングの1位を「ダンカン」と発表し、ひたすら野澤がノリボケを続ける「気になるランキング」などの漫才が代表的なところだ。

『おもしろ荘』では、平場でのトークにも安定感があった。一発芸で爆笑を巻き起こすのではなく、しっかりとクロストークできる芸人が優勝したことの意味は大きい。今後、ジワジワと味のある芸風で人気者になっていく可能性を感じた。

もう一組の「大阪出身なのに東京っぽい」

 もう1組、大阪出身でありながら東京っぽさを感じるのが「オフローズ」(吉本興業)だった。

 カンノコレクション(25)、宮崎駿介(28)、明賀愛貴(24)の3人はNSC大阪校で知り合い、2015年に「マイマイジャンキー」を結成。同校を首席で卒業後、コントを主体としたトリオだったこともあり、すぐに上京している。

 2年前、次長課長の河本準一から「ジャンキーやったら、テレビに出られへんぞ」とのアドバイスを受け、現在の名前に落ち着いた。

 ちなみに「オフローズ」の由来は、よく一緒に銭湯に通っていたヒップホップ好きの同期芸人から「フロー」(ヒップホップ用語で“歌い回し”の意)というワードを勧められたため、“お風呂”と“フロー”をかけたものらしい。明賀は、オフローズになってからサウナ・スパプロフェッショナルの資格も取得している。(「ラフ&ピース ニュースマガジン」インタビューより)。

 そんな彼らが『おもしろ荘』で見せたのは、「何者かが女子生徒のリコーダーを舐めている」という切り口から始まる学園モノのコントだ。

 設定そのものはオーソドックスだが、「こんなことが2度と起こらないように、リコーダーに毒塗っときました」と平然と語る教師という少々突飛なキャラクターによって展開が飛躍していく。教師に翻弄されつつ、犯人だとバレたくない男子生徒の心情描写が実に滑稽なネタだった。

 2020年3月22日、YouTubeチャンネル「ニューヨーク Official Channel」内のラジオ番組「ニューラジオ」にオフローズが出演した際、メンバー共通で影響を受けた芸人に「さらば青春の光」を挙げている。目を引くアイデアや構成力は、彼らから引き継がれているのかもしれない。

 ここ数年で頭角を現している「ファイヤーサンダー」(ワタナベエンターテインメント)も、関西出身でありながらネタに東京っぽさを感じるコント師だ。この路線に乗り、オフローズが飛躍する可能性も十分ある。今年は「キングオブコント」やネタ番組で彼らの活躍に期待したいところだ。

「独特の関係性」持つコンビ、トリオに注目

 ピックアップした2組以外で、今年の『おもしろ荘』で気になったのは、ギャルキャラの漫才を披露した「エルフ」(吉本興業)だ。ギャルの荒川(24)もいいが、何より相方・はる(24)のツッコミがうまかった。間の取り方、声のトーン、話の運びにわざとらしさがなかった。まだ若い世代だけに、今後の活動にも注目していきたい。

『おもしろ荘』は若手の登竜門的な番組だが、今回のメンバーを見ると20代前半~40代と年齢の幅が広くなった。昨年、40代コンビの錦鯉が活躍した影響からだろうか。テレビ局のターゲットが世帯視聴率から個人視聴率へと移ったことで、年齢に対するハードルがグッと低くなったように思う。幅広い世代に対してではなく、若年層をターゲットとした番組作りが主流になったことで、「馴染みのあるタレント」よりも、「フレッシュで個性の強いタレント」を目にする機会が増えた。そこに年齢は関係ない。むしろ、中年の安心感が武器になっている気さえする。今後、若手と併せて遅咲きの芸人を目にする機会も増えそうだ。

 また、『おもしろ荘』で2位となった「フタリシズカ」(ワタナベエンターテインメント)のように、「相方に好意を寄せる男女コンビ」といった特徴のあるグループも珍しくなくなるかもしれない。

 人気ドラマやアニメ・漫画でも、長く支持される作品の主要人物には必ず、“ひょんなきっかけで同居することになった男女”や“闇の組織に人生を狂わされた兄妹”など「独特の関係性」があるものだ。近年は、コンビ仲の良い芸人が評価される傾向があるが、それだけではなく、個性的な関係を持ったコンビやトリオが注目を浴びるに違いない。

 今年はどの芸人がどんな笑いを見せてくれるのか。依然としてコロナ禍は続いているが、暗い空気を絶ち切ってくれるような新たなスターが生まれることを切に願いたい。

 1月10日(日)21時から放送するYouTube「文春オンラインTV」では、筆者の鈴木旭氏が出演。「おもしろ荘」に出演したダイヤモンド、オフローズら、今年活躍が期待される芸人について解説する。

(鈴木 旭/Webオリジナル(特集班))

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