松岡茉優『ギークス』謎解きが雑すぎて、もはやミステリーとして成立せず…キャラも「悪い意味で普通」の設定負け
なんかもう……雑すぎる。
事件解決もののミステリーとして、もはや成立してないんじゃないかと感じるほどだ。
8月29日(木)に第8話が放送された、松岡茉優主演の異色の警察ドラマ『ギークス ~警察署の変人たち~』(フジテレビ系)。メインを張るのは主人公含む女性キャラ3人なのだが、第8話は事件解決にほとんど役立っていなかったのである。
■「GEEK(ギーク)」とは “賢いオタク”
「GEEK(ギーク)」とは “賢いオタク” といった意味があり、興味のある分野にはとことん好奇心旺盛で、卓越した知識や技術を持っている人のこと。そのぶん、人間関係に苦手意識がある人が多いようだが、本作は警察署内の飲み仲間である3人の女性(GEEK)にスポットを当てた物語だ。
松岡が演じる主人公・西条唯は鑑識官。頭脳明晰で優秀なのだが、ムダな労力が大嫌いで、サクッと定時に帰りたいコミュ障。
田中みな実が演じる吉良ます美は警察署内の産業医。相手の行動や表情を見て心の内を読み取ることを得意としたイケメン好き。
滝沢カレン演じる基山伊織は交通課員。地図が大好きで、警察署管内の地理はもちろん、全国の地理にも詳しい生真面目女子。
この3人が飲み仲間で、週末に行きつけの居酒屋に集まって飲み会をしながら、それぞれの得意分野を活かし、井戸端会議のノリで、事件解決へのスーパーアシストをする。
……という触れ込みだったのだが、あまり活かされていないのだ。
■主人公が謎解きにいっさい役立っていない
前述したこの設定やアイデアはとてもおもしろそうなのに、もったいなさすぎる。
特に先週放送の第8話はひどかった。
「ジャッジマン」と名乗る人物から、企業宛てに脅迫状が届く事態が多発しているという事件。結論から言うと、主人公はほぼ何の役にも立っておらず、残り2人も素人でもわかるようなアドバイスをしただけだったのだ。
まず基山伊織が、脅迫状が届いた企業が約10km圏内にまとまっていることに気づく。そして吉良ます美が、そのエリアが犯人にとって心理的に安心して行動できるコンフォートゾーンで、その圏内に家や職場があると推理。
って、そんなの捜査の初歩の初歩で気づくことだと思うのだが、得意気に刑事へアドバイスしていた。今回の2人の活躍はほぼここだけ。
真犯人はマッサージサロンの従業員で、主人公・西条唯は鑑識中になにかからアロマの香りがして違和感を抱いていた。けれど、匂いの発生源が脅迫状だとは気づかず、自分の行きつけのお店のアロマだとも気付かず。
西条唯がその事実に気づくのは店で犯人に監禁されてからで、けっきょく謎解きに一切役立っていなかったのだ。
ちなみに犯人を突き止めたのも偶然の産物で気づいただけで、変人の才能はろくに活かされず。事件解決もののミステリーとして考えるとあまりにも適当すぎた。
■抱える悩みも対応も、悪い意味で普通
それならば、せめて3人の変人的個性が際立っていて、キャラとして魅力的だったり、ガールズトークの掛け合いでクスクス笑えるおもしろさがあったりすれば、コメディ作品として楽しめただろうが、そこも激薄。
彼女たちが抱えている悩みや問題は、よく言えば共感できる内容なのだが、普通の悩みすぎて変人らしさを感じられない。
吉良ます美は離婚した元夫と暮らしている一人娘との関係性に悩み、基山伊織は親代わりで育ててきた弟妹の問題で頭を悩ませる。西条唯にいたっては、たいてい職場環境に不満を垂れているだけ。
その直面している悩み・問題・不満に突拍子もないリアクションを見せるとか、浮世離れした対策を取るなんてこともなく、想定の範囲内の言動に終始。悪い意味で普通すぎるのである。
公式サイトには、《“はぐれ者トライアングル”が織りなす、キュートでちょっとだけこじらせた日常&痛快な謎解きストーリー》と謳われている。
しかし、そのもともとのやりたかったことが全然できていないように感じる。まさに「設定負け」だ。
今夜放送されるのは第9話。物語も佳境に入ってきているので、ここからの事件は彼女たちの変人的才能を活かした謎解きになることを期待したい。
堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中
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