「尾行」「脅迫まがい」松本人志の代理人による女性への「妨害工作」は許されるのか? 「懲戒事由に該当する可能性もある」紀藤正樹弁護士が指摘
7月10日、ダウンタウン・松本人志が起こした文藝春秋社などとの裁判で、代理人を務める田代政弘弁護士が声明を発表した。同日の「週刊文春電子版」で田代弁護士は、「性加害報道」の告発者・A子さんに対して妨害工作をおこなっていたことを報じられた。A子さんと親交の深い男性・X氏への接触や探偵業者を駆使して、A子さんに出廷させないよう試みたという。その報道に対し、田代弁護士は反論したのだ。
声明では、《先生(X氏)もご存じの女性が文春の記事に出ている(中略)女性に連絡を取っていただけませんか》とX氏に接触したことを認め、さらに《先生とその女性が不倫関係にあり、そのことを記事にしたいとなどと言っているマスコミがいます(原文ママ)》とX氏に伝えたものの、文春が報じたような“脅迫まがい”の言動はまったくなかったと否定している。
そして、探偵業者によるA子さんへの尾行の一部については、田代弁護士の事務所に彼女の不貞行為を示唆する匿名の投書が届いたことで《信憑性が高いと判断し、資格を有する調査会社に依頼して調査を実施した》と探偵業者への依頼を認めた。しかし、匿名投書そのものの《作成に「週刊文春」が関与していたのではないか》と疑念がある、と主張した。
声明発表後、各スポーツ紙は「完全否定」「反論」という見出しをつけて報じた。また翌11日、田代弁護士は報道陣の取材に対し、あらためて「まったくの事実無根」と述べ、A子さんへの提訴も考える意向を示した。
『文春』の記事では、何者かに監視され生活を脅かされるA子さんの体験が綴られている。いくら法律の専門家とはいえ、ここまで相手方を追い込むような行為をすることは許されるのか。「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の活動で知られる紀藤正樹弁護士は、Xでこう発信している。
《事実関係の多くを認められており今後その評価、こうした弁護活動の当否が法廷内外で問題になると思います》
田代弁護士の行為の具体的な問題点について、紀藤弁護士が本誌に語った。
「探偵業者にA子さんの尾行を依頼する行為をすれば、プライバシーの侵害になる可能性があります。担当裁判で出廷する可能性がある相手を脅かす行為にもなりかねません。
これらの田代弁護士による行動は、弁護士の倫理を拘束力のある形で定めた『弁護士職務基本規程』に抵触する可能性があります」
たとえば、同規程の第1条では「弁護士は、その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現にあることを自覚し、その使命の達成に努める」と記されている。
「勘違いしている方も多いと思いますが、弁護士は依頼者の利益のためになんでもやっていいというわけではありません。依頼者の“正当な利益”はいいですが、“不当な利益”を目的とすることはダメなんです。
それは訴訟相手に対しても一緒で、相手方の権利を不当に侵害したり、相手を貶めるような形で弁護活動をおこなうことはできません。第1条の《社会正義の実現》に反する行為だからです。
田代弁護士の行為はまず、第1条に反している恐れがありますが、それ以外の規程にも抵触する可能性があります。
結果、田代弁護士の行為は懲戒事由に該当するかもしれません。私の所感としても、普通の弁護士ならここまでやらないだろうなと思いました」(紀藤弁護士)
また、紀藤弁護士は田代弁護士が依頼した探偵業者についても「探偵業法(探偵業の業務の適正化に関する法律)」に違反する恐れがあると話す。
「現在、探偵業は届出制になり、公安委員会の所管になっています。探偵業法の第14条では探偵業者が法令違反をした場合、公安委員会が必要な措置を取るよう指示することができると定められており、探偵業は法令違反を犯してはいけません。
今回の件では、A子さんが探偵業者を特定できれば、公安委員会にプライバシー侵害による法令違反を申し出ることができる可能性があります。もしかすると依頼された探偵業者は、業務停止や営業廃止処分になるかもしれません。
『文春』記事内で“下請け”とされた探偵業者が『巻き込まれたくない』と言ったと書かれていましたが、これはまともな探偵業者の反応なんです。クライアントの方針がわかる形で依頼された業者のほうは、かなり問題が大きいと思いますね」(同前)
日本中が注目する裁判は思わぬ方向に転がり始めたのかもしれない。
07/12 07:13
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