『ふてほど』クドカンと名タッグのプロデューサーが退社で局員が憂う「ドラマのTBS」“終わりの始まり”

ドラマ『不適切にもほどがある!』がギャラクシー賞2冠を受賞し、阿部サダヲ(中央)らと贈賞式に出席したTBSの磯山晶プロデューサー(左)

 

 6月10日、『ふてほど』の愛称で人気を呼んだドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)を手がけた、磯山晶プロデューサーがTBSを退社することが分かった。磯山氏は、ネット配信サービス「Netflix」で作品を手がけることが、すでに決まっているという。

 

『ふてほど』は、「クドカン」こと宮藤官九郎氏がオリジナル脚本を担当したコメディ作品で、阿部サダヲ演じる“昭和のおじさん”小川市郎が、コンプライアンスに縛られた令和の時代に奔放な言動を繰り出す内容が話題となった。磯山氏と宮藤氏は、プロデューサーと脚本家としてタッグを組み、『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)『木更津キャッツアイ』(2002年)など、これまで多くのヒット作を生み出している。なかでも『ふてほど』は、タッグの最高傑作ともいわれるほどの評価を受けた。

 

 

 第61回ギャラクシー賞では、同作はテレビ部門特別賞、マイベストTV賞グランプリの2冠を達成。5月31日におこなわれた贈賞式に出席した磯山氏は、続編について聞かれ「宮藤官九郎さんが、この企画を書くときに“大きい声では言えないことを代弁して、溜飲を下げる”ということを目指しているとおっしゃっていたので、まだ大きい声では言えないけど、代弁してみなさんの溜飲が下がるようなことが見つかれば、ぜひとも制作したいと思っております」と条件付きながら意欲を見せていた。

 

 磯山氏の退社を報じたYahoo!ニュースには

 

《またまた優秀なひとがテレビ局を離れるのか 管理職で座って定年を迎えるより、現場でいい仕事し続けたいってカッコいいよなあ》

 

《「ふてほど」面白かったもんなあ ネトフリ行ってもぜひ磯山さん面白いドラマ作り続けて下さい 新作品楽しみにしてます》

 

《TV局が今だに旧態の体制の中、本当に面白いドラマを作ろうとする脚本家やプロデューサーがフリーを決断するのは当然の流れだし、それだけ視聴者を大事にしてくれていると感じます。これからのドラマ作り、まさに不適切にもほどがあるくらいやっちゃってくれる事を期待します》

 

 と、退社を惜しむ声と、新天地での活躍を期待する声が集まっている。

 

 今回の退社が、テレビ業界の深刻な人材流出の象徴と語るのは、あるテレビ関係者だ。

 

「民放キー局の、20代から40代の若手局員や、実績のある優秀なテレビ局員らは、NetflixやAmazon Prime Videoなどの大手外資系配信メディアに転職しています。彼らが転職する最大の魅力は、日本の10倍から30倍は当たり前といわれる莫大な制作費、それに加えて年収アップなどの好待遇です。

 

 かつて民放キー局の年収は、30代で1000万円を優に超えていましたが、現在はよほどの抜擢やインセンティブがつかない限り、1000万円超えが難しい状況です。外資の場合は、実績次第で2000万円、3000万円も夢ではない、と聞きます」

 

 TBS局関係者は、磯山氏の“流出”について「正直、しんどい」と胸の内を明かす。

 

「これまでの人脈やドラマのノウハウを、すべて持っていかれてしまうわけですから。TBSは属人主義が強く、『この人と仕事をするにはこの人を通して』という意識がまだ残っています。磯山さんの退社で、クドカンさんの作品をTBS独自のルート、パイプで制作するのはかなり困難になりました。『ドラマのTBS』と言われたのもいまは昔、次の人材が育っておらず、“終わりの始まり”といった感じです」

 

『ふてほど』の続編については、「磯山さんは円満退社で、決定すればやってくれるのでは」(別のTBS関係者)という話も一部ではある。配信メディアのなかった昭和から来た市郎には、理解しがたい話だろう。

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