ダウンタウン浜田の「WOW WAR TONIGHT」はなぜ泣けるのか

日頃から頑張る自分を応援するために、サラリーマンが歌うと元気が出る曲TOP5を発表。90年代以降のシングルチャート、配信チャートで上位にランクインしたヒット曲を中心に、多少キーが高くても気合を入れてカラオケでも熱唱できる曲を集めた。

男性歌カラオケ

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サラリーマンの胸に響く応援ソング第1位は

働き盛りのサラリーマンが、中・高校生から社会人になりたてだった時代にヒットした曲。時を経て改めて聞くと、「俺のための応援ソングじゃないか!」と胸が熱くなる曲が多くあります。

その筆頭は『WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント』(H Jungle with t)です。学生時代と、社会に出てからとでは、聞いたときに大きなギャップを感じるはずです。この曲の発売年は1995年、いま40歳の人なら中学生の頃です。当時は小室哲哉のTKプロデュースブームで、テレビはダウンタウンで回っていたともいえる時代。時代の寵児がタッグを組んだことで大きな話題となりました。

この曲は、ダウンタウンの浜ちゃんが歌っていることもあり、コミックソングだと思っていたり、「ウォウ、ウォウォ~」というサビの印象が強い人もいるでしょう。

しかし、それ以外の歌詞にご注目を。気の知れた仲間と、肩を並べて酒を飲むという歌い出しから始まり、ふと電車の窓に映る自分を褒めてあげよう、という内容。この曲は、真面目に頑張っている人への応援ソングなのです。改めて聞けば「この歌詞、泣ける」と目頭が熱くなりますよ。

まだ若かったあなたがこの曲を聞いたとき、これほどの感動を覚えたでしょうか。私自身、中学生だった頃にこの歌詞は刺さらなかった。それはまだ自分が幼く、人生経験も少なかったからでしょう。

この曲について小室哲哉は、意外にも吉田拓郎の世界観をイメージして作ったと明言しています。Aメロに出てくる「温泉」は、吉田の『旅の宿』に出てくる温泉のこと。70年代のポップアイコンであり、到底かなわないと思っていた吉田へのリスペクトを込め、小室が当時の世界観を90年代に持ってきたというわけです。

かつて小室がMCを務めた音楽番組では、ゲストの吉田が「おまえの曲で1曲だけすごくいいと思うのがある。俺は『WOW WAR TONIGHT』が大好きだ」という発言をしています。のちに小室自身も、「温泉を『旅の宿』で知り、吉田さんが好きな世代にも刺さるように選んだ」とのエピソードを語りました。

H jungle with tがダブルミリオンを遂げた12年後に、また社会人たちの胸を熱くさせるヒットソングが誕生しました。

『俺たちの明日』は、男の人生そのものだ

エレファントカシマシがリリースした『俺たちの明日』。「さあっ」という掛け声とともに、頑張ろうと直接エールを送る歌い出しが印象的です。タレント・加藤浩次が出演した「ウコンの力」のCMソングとしてもおなじみでした。この曲も、30代後半以降の、一生懸命働く人へ向けて歌っている曲です。

歌詞を紐解いていくと、1番は、学生時代の友達と同窓会でもしているような内容。「俺たち、昔はもっとギラギラしてたよな」と思い出を語っているような雰囲気です。働く男性が特にグッとくるのは2番の歌詞で、10代、20代、30代の生き様を、ストレートな言葉で歌い上げます。10代は「世の中なんかクソだ」ととがっていた、20代は毎日がうまくいかずにスレた心で街を彷徨った。30代で、愛すべき家庭を持ったのでしょう、その人ための命だ、と歌っています。これぞまさに、結婚をして子供を持ち丸くなった自分ではあるけれど、昔の気持ちを忘れずに頑張っていこう、という感動的な応援ソングなのです。

2番を聞いて「昔の俺だ」と思う人は多いようです。実際に街を彷徨った経験を持つ人もいたり、似たようなマインドは誰でも持っているでしょう。歌詞の奥深さは、絶対に10代、20代にはわからないでしょう。

この歌詞は、エレファントカシマシというバンド自体にもリンクしているところがあります。彼らのデビューは88年で、『悲しみの果て』(96年)、『今宵の月のように』(97年)などのヒット曲を生むまで道のりが長かった。デビュー当時は、こだわりが強すぎるあまりヒットが出ず、一旦レコード会社から契約を切られていたんです。それから「たくさんの人に知ってもらわないとダメだ」というマインドに切り替わり、レコード会社を移籍して、ヒット曲が生まれるに至りました。そこから紆余曲折あって、再度レコード会社を移籍。それがこの『俺たちの明日』を出すタイミングだったのです。

彼らのヒストリーは、2番の歌詞にぴったりと重なります。最初のレコード会社でやりたいことをやったけど売れず、その後自分の中の変化もあり曲が売れて、30代を超えてやっと『俺たちの明日』のような曲が作れるようになった。これをサラリーマンに置き換えてみてください。泣けてきますよ。

ドリカムファンからも大切にされている

女性ボーカルの応援ソングといえば、DREAMS COME TRUEの『何度でも』。これはわかりやすい応援ソングですよね。いろんな失敗を繰り返していても、とにかく諦めないでチャレンジしようと歌っている曲です。

この曲は、ただ「頑張れ」と応援しているだけではありません。何度でも頑張ってトライして、報われる日は明日かもしれないよ、と前向きな終わり方をしています。具体的に「明日に報われる」と希望を感じさせているのは、他の応援ソングと一線を画します。たとえば、家に持ち帰ってきちゃった明日までの企画書を、「もしかしたら今頑張ればなんとかなるかも」と行動に移せることも後押ししています。

『何度でも』の、シングル売り上げは19万枚。ミリオンヒットが多いドリカムの中では、意外にもセールスはそこまでよくありません。しかし、4年に1度開催しているドリカムのイベント『史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND』で公募されるリクエストランキングでは、2007年・11年・15年で1位を獲得。コアなドリカムファンの中でも、大切な曲として広く認知されています。

この曲が05年に発売される前までは、『うれしい!たのしい!大好き!』『LOVE LOVE LOVE』『未来予想図II』など定番のラブソングがランキングの上位を占めていました。しかし、このようなメッセージソングに人気が集まるのは、ドリカムの音楽性の幅が広がったことの証明だと思います。メンバーの中村正人自身も、ドリカムの歴史において重要な意味を持つ楽曲だと語っています。

あのミスチルがゲスい曲を歌った!

さて、ここまできれいな歌詞の応援ソングを紹介してきましたが、続いて登場するのはMr.Childrenの『everybody goes~秩序のない現代にドロップキック~』。今回の5曲の中では、一番ゲスい歌詞を持つ、異質な曲といえるでしょう(笑)。ここまで紹介した曲は「とにかく前を向いていこう」という内容ですが、4位はエネルギッシュなストレス発散ソングです。社会の中で、みんなが病んでいて、必死に生きている、ということを歌っています。「おまえも病んでいるんだよな」と理不尽なこととも共存できる曲。共感とはまた別のものです。

2番の歌詞にも注目を。幸せな家庭かと思いきや、裏で娘が学校をさぼってデートクラブに行っているというショッキングな内容。「裏ではみんなゲスいことをやっている」という、これは新しい価値観の提示ですよね。応援ソングというより「開き直っちまおうぜ」という意味合いが強いかもしれません。仕事がうまくいかなかったときに歌って、発散してください。「おまえらだってゲスいことをやってるじゃん。だったら俺も違う価値観で前を向いていく!」と気持ちをリセットできますよ。

この曲には、面白い制作エピソードがあり、ボーカルの桜井和寿がたった5分で作ったといわれています。それまでミスチルは『CROSS ROAD』『innocent world』『Tomorrow never knows』とヒット曲を連発。小林武史プロデュースで、美しいイントロから曲が始まり、「ミスチルといえば」が確立されていたときでした。

そこでこの曲を出してきた。それまでのきれいな曲を並べて「いや、俺らはそうじゃないよね」っていう意味も込められているのでしょう。退屈な音楽チャートに打撃を加えるような歌詞が登場するのも興味深い。これはミスチルにとっても「ガス抜きソング」だった、と私は見ています。ちなみに、この曲の次は『【es】 ~Theme of es~』とまたミスチルらしい曲がリリースされています。

「一番偉い人」とは、内閣総理大臣のこと

5位はとんねるずの『一番偉い人へ』。これはまさに今、新型コロナに苦しむ国内の状況と重なる部分があるかもしれません。タイトルにもある「一番偉い人」とは、総理大臣のことだといわれています。その偉い人へ、今何をすべきなのかを問う、サビの歌詞が印象的な曲です。

92年の発売で、作詞は今もその名をとどろかせる秋元康。当時のとんねるずは、パロディソングでヒットを飛ばしていた時代で、「真面目にふざける」というイメージがありました。2つ前のシングルは『情けねえ』で、尾崎豊と長渕剛に寄せた曲作りがされています。その次が『ガラガラヘビがやってくる』、そして『一番偉い人へ』、その後には『がじゃいも』と続きます。『ガラガラヘビ~』『がじゃいも』は、完全に悪ふざけで、キッズソングですね。その流れの中に、唐突に『一番偉い人へ』を差し込むようにリリースしています。

歌うと元気が出る歌・BEST5

これまでふざけていたのに、やけに真面目になったとんねるず。「急にどうした?」と世間が思ったはずです。「何のパロディだっけ?」なんて探しちゃったりして、「いや、何でもねえじゃん。これ、普通にいい曲じゃん!」と人々が思ったのでしょう。結果、60万枚のセールスをたたき出しました。

歌詞を見ると、尾崎豊『卒業』をイメージさせながら、学校を出て働いているサラリーマンが、「群衆」「ラッシュアワー」という言葉を交え、己を抑えて社会の中に埋もれていく内容。そして、偉い人に何をすべきかを問います。

「一番偉い人」である総理大臣は、現在のコロナ禍で良くも悪くもさまざま話題になりました。このご時世だからこそ、もっと評価されてもいい曲だと個人的には思っています。

さて、ここまでトップ5を紹介してきましたが、お笑い芸人が2組も入っていることに気づいた方もいるでしょう。

いつも、そこにとんねるずがいた

応援ソングは、どんな境遇の人が聞いても「私の歌だ」と思わせる曲が、たくさんの人の支持を得ます。

エレカシやミスチルの曲は、彼らの生き様そのままです。しかしミュージシャンはあくまでもミュージシャン。ある程度浮世離れしていないと、人気は出ません。サラリーマンの境遇とぴったり一致するかといえば、必ずしもそうではないのです。

サラリーマン人生に置き換えると、芸人であるダウンタウンや、とんねるずがぴったりハマるのではないでしょうか。

芸人は下積みが長いイメージがあります。その努力と苦労の甲斐あって、今の芸人生活が送れている点に、日本のサラリーマンが共感するのです。東と西のNo.1といわれたとんねるずとダウンタウンですが、彼らにも下積み時代があった。とんねるずはサラリーマンを経験したこともあるので、なおさらイメージにハマりやすいのでしょう。

90年代、子供だった僕らの心のどこかに、とんねるずやダウンタウンがいた。あの頃彼らの歌った曲が、今の僕たちに届く応援ソングだと考えると、胸がジ~ンと熱くなりませんか。

藤田 太郎(ふじた・たろう)
イントロマエストロ、ラジオDJ
約3万曲のイントロを最短0.1秒聴いて曲名を正解する能力が話題になり、『マツコの知らない世界』『ヒルナンデス!』等多数のメディアに出演。クイズ大会などプロデュースも多数。ラジオBay FM『9の音粋』に出演中。

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