12代目団十郎の親心、海老蔵へ生前の名跡贈与案も

13代目市川団十郎白猿を襲名する市川海老蔵(撮影・滝沢徹郎)

歌舞伎俳優市川海老蔵(41)が来年5月に、13代目市川団十郎白猿を、長男堀越勸玄君(5)が8代目市川新之助を襲名することを14日、松竹が発表した。この日、海老蔵、勸玄君が東京・歌舞伎座で会見を行った。

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泉下の12代目団十郎さんも、息子の13代目団十郎襲名を喜んでいるだろう。

12代目にとって、若き日の海老蔵は心配の種だった。新之助時代の10代で「勧進帳」に挑んだ時、稽古で父に叱責(しっせき)された海老蔵は家を飛び出し、翌日が初日なのに明け方まで帰宅しなかった。12代目も息子の休演を覚悟した時、ようやく帰ってきたという。

麻央さんと結婚して、ひと安心したかに思えた時に起こったのが暴行事件。海老蔵が入院・謹慎を余儀なくされた時、いつもは温厚な12代目も「本人の自覚のなさに怒りを感じる」と厳しい言葉を口にした。

しかし、海老蔵に長女が誕生。父親として責任を持つようになって、その言動も徐々に変化し、役者ぶりも上がった。そんな姿に、晩年のある時期から12代目は「団十郎の名をせがれに譲り、自分は隠居名を名乗る考えがある」と言うようになった。海老蔵は5代目の俳名「白猿」を団十郎に付けるが、12代目は2代目の俳名で、自身も使った「栢莚(はくえん)」を名乗る意向だったという。

12代目が39歳で襲名した時、すでに父11代目は亡くなっており、頼るべき存在のいない中の襲名で、その後も人知れない苦労を重ねた。生前の名跡贈与プランも、心優しい12代目の親心だったのだろう。【林尚之】

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