松本まりか、夢みていたブレイクなのに「真っすぐに“幸せ”だとは思えなかった」

松本まりか 撮影/伊藤和幸 ヘアメイク/AKEMIKIBE(PEACEMONKEY) スタイリスト/後藤仁子

今回、主演という場所をいただいて、改めて、そういえば(デビューした)24年前にも私が来たいと思っていたところだったと気づいたんです

望みが叶うも「真っすぐに幸せだとは思えなかった」

 GP帯連続ドラマの初主演を果たした松本まりかドラマ『ミス・ターゲットは、「松本まりか」をイメージして書き下ろされた作品となる。

主演と聞いて、うれしいという感情より、責任感を持ってやらなければと、身の引き締まる思いではありますが、深い幸せをじわじわと感じています。デビュー当時、主演への憧れもあったんですけれど、あまりにも自分の知識や能力などの理想と現実にギャップがあって。

 主演に限らずとも、役者として成長するためには、自分が経験したり知らなければならないことがたくさんありました。例えば日常での人間関係、歴史、社会はどんな仕組みなのか、まったくの無知だったんです。

 さらには、目の前の試練をどう解釈して乗り越えるか。失恋したときに、悲劇のヒロインになるのか、その感情をバネにして自分の成長につなげるのか。時に間違った選択をしたこともあったけれど、さまざまな選択をし続けた日々を経て、今回のようなお仕事にたどり着いたことが、とても感慨深いです

 悪事で儲ける男たちから大金を巻き上げ続けていた、松本演じる結婚詐欺師・朝倉すみれ。幸せの尺度はお金次第という彼女が、天職から足を洗い本気の婚活に乗り出すことで、自分とは価値観の違う人々と出会っていく。

 百戦錬磨の恋愛スペシャリストが人生を懸けて挑む本気の婚活はいったいどうなっていくのだろう。

「結婚詐欺師って人を騙すじゃないですか。でも、すみれは悪女ではなく、とてもピュアなんですよ。詐欺師であっても、すみれの場合は心がありすぎるんですよね。悪い男だってわかっていても真心で接するから、相手は騙されたと感じない。演じるにも、テクニックに振るのではなく“心”を大切にしました。

 すみれは、15歳まではお母さんから愛をもらってきた人。その後、不遇なことがあって愛よりお金が大事な人生になってしまったけれど、やはり愛は知っているんですよね。ただ、恋愛という意味で、誰かとそれを共有したことがない」

 成長する過程で信じられるものがお金だけになってしまったすみれ。松本自身、これが満たされていれば幸せ、と感じるものは?

信頼関係です。経済的にも人間的にも、自分ひとりで生きて、ひとりで死んでいけるという自信を持ちたくて、人に依存することのないように心がけていました。そんな時間を経て、信頼できる相手と思いを共有することがいかに幸せなことか、気づいたんです。共有して、理解し合うことで、今の私はとても満たされる。これから先は、そういう満足の連続で生きていきたいなと思っています。

 実は、ずっと幸せなことを幸せだと感じられなかったんです。5年前にガラッと環境が変わって、ありがたいことに注目していただけるようになりましたが、望んでいたことだったはずなのに、真っすぐに幸せだとは思えなかった。自分は幸せを感じる“心”が育っていなかったことを自覚したときは本当にショックでした。

 だけど、絶望しながらも、この孤独感と向き合っていたらいつか何かが見えるはずだと思ってやっていたら、昨年出会いがあって。退路を断つ覚悟で人生における大きな決断をしました。環境が変わったことで自分の考え方にも変化が。今ようやく幸せが見えてきたと思います。これまでのすべてのことが私を成長させてくれました

 人の数だけ幸せの形がある。結婚詐欺師から婚活へと人生のギアを切り替えたすみれが出会うのは、お金への執着がなく、幸せの価値観が真逆の和菓子職人の宗春(上杉柊平)。彼との出会いで、すみれは人生初の恋を知ることになる。松本自身の恋のスイッチはどこにあるか、聞いてみた。

「恋ね~恋! 恋のスイッチは基本的にはオフにしています。それでもなお恋に落ちてしまったら仕方ない、本物だと思うしかない(笑)。ただ、尊敬できる自分でいないと相手も現れないですよね。ちゃんと自分が自分のことを好きだと思えているタイミングで、そんな方が現れたら運命だと思います。もしも、そういうニュースが出たら、私のオフの壁が突破されたってことです

 そう語ったとき、松本の瞳は少女のようにきらめいた。

『ミス・ターゲット』

4月21日(日)より放送中 毎週日曜夜10時~ ABCテレビ・テレビ朝日系全国ネット

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