伊勢谷友介、DV・大麻に走った背景にある「父親からの負の連鎖」と「自信のなさ」

世の中には「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」だけでなく、「ヤバい男=ヤバ男(ヤバダン)」も存在する。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、芸能人や有名人の言動を鋭くぶった斬るライターの仁科友里さんが、さまざまなタイプの「ヤバ男」を分析していきます。

『Loohcs』(ルークス高等学院)の開校記者発表会での伊勢谷友介(2018年11月)

第11回 伊勢谷友介

 俳優・伊勢谷友介が大麻取締法違反で逮捕され、波紋を広げています。

 みなさんご存じのとおり、伊勢谷といえば天才の集う東京藝術大学出身で、モデル経験あり。デザイナーの山本寛斎さんの異母弟にあたるなど話題性は十分。英語も堪能であのルックスというキラッキラな人物。女性にもよくモテて、広末涼子、吉川ひなの、木村佳乃長澤まさみ森星など名だたる美女たちと浮名を流してきました。東日本大震災の際は、被災地支援に積極的に動いていましたし、近年は社会貢献活動にも力を入れていて、企業の代表や学校設立、環境問題にも取り組むなど「世の中をよくする」ために活動していたことでも知られています。

逮捕で再注目される恋人への“DV疑惑”

 それだけに警察のお世話になるようなヤバい行動をするとは信じられないのですが、伊勢谷が逮捕されたことで、再度注目を集めているのが、伊勢谷のDV疑惑なのです。2013年4月11日号の『週刊文春』で、伊勢谷が恋人であった現役芸能人のAさんの足を蹴ったり、部屋の中でAさんを的に見立てて、エアガンを撃ったという報道がなされました。モデルのBさんもDV被害にあっていて、慰謝料をもらう形で解決したそうです。

 “社会貢献”に熱心で人道主義もしくは博愛主義ともいえる伊勢谷が、なぜよりにもよって愛する女性に暴力を働くのか。コンプライアンスが厳しい時代に、薬物犯罪を起こしたら、これまでに築き上げた芸能人としてのポジションを失うのは明らかなのに、なぜ薬物をやめなかったのか。

 矛盾がある伊勢谷の行動を、「恐るべき二面性」とか「調子に乗っていた」と見る人もいるでしょう。けれど、人間はそもそも矛盾した生き物ですし、二面性が全くない人はいないと思うのです。それよりも、薬物と暴力の理由を「ある人」と絡めて考えてみると、因果関係がわかりやすいストーリーが浮かび上がってくるのではないでしょうか。

「ある人」とは伊勢谷のお父さんです。

 伊勢谷の異母兄である山本寛斎さんが2014年に『ファミリーヒストリー』(NHK)に出演し、家族の歴史を辿っていました。番組によれば、寛斎さんのお父さんは伊勢谷に面差しの似た大変な美男子で、生涯で7回結婚しています。お父さんは天才テイラーだったそうですが、酒癖、女癖が悪く、寛斎さんのお母さんに暴力をふるっていたそうです。

 寛斎さんが7歳のころ、お父さんはお母さんに一方的に離婚を言い渡し、寛斎さんら兄弟はお母さんに引き取られます。しかし、ある日突然、お父さんが寛斎さんらを引き取りにきます。暴力をふるわれることが怖くて、お母さんはお父さんに子どもたちを渡してしまいますが、お父さんはまさかの育児放棄。寛斎さんと兄弟は施設に預けられることになったそうです。このような経験をして苦労して育った寛斎さんは、自分が家庭を持ったら、妻子を大事にすると心に誓ったそうです。

 寛斎さんは2020年7月21日にお亡くなりになりましたが、娘である女優・山本未来はインスタグラムで「私にとって、父はエネルギッシュで明るいことはもとより、穏やかで、寛大で、人懐っこく、コミュニケーションを大切にし、無償の愛を与えてくれた存在でした」とお父さんへの愛がにじんだコメントを発表しています。寛斎さんはお父さん譲りの才能に磨きをかけて世界的デザイナーになり、けれど、お父さんの生き方だけは真似をしなかったということでしょう。

驚くほど父親に似た点が多い伊勢谷

 一方の伊勢谷はどうかというと、お父さんに顔以外にも似ている点が多いことに気づかされます。7回結婚したことでもわかるとおり、お父さんはモテるけれども、女性と安定した関係を築けるタイプではなかったようです。一方の伊勢谷は『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)で「女性と一緒にいるとしんどくなる」と発言していますから、「一緒に生活する」という形の結婚には不向きと言えるでしょう。

 伊勢谷のDV疑惑が報じられたとき、信じられないという女性の声もありましたが、お父さんも寛斎さんのお母さんに暴力を働いています。幼くして別れたお父さんにここまで似ていることに驚かされますが、伊勢谷自身もお父さんに似ている自覚はあるようです。

 2012年に放送されたアシタスイッチ〜MY TIME TO SHINE〜(TBS系)で寛斎さんと伊勢谷は対談します。伊勢谷が恋愛を繰り返す理由について話が及びますが、伊勢谷は30歳を過ぎ、自分のなかで認識してきた自分の問題は、父からの何かにあるのではないかと思い始め、はじめてお父さんのお墓参りに行ったと話していました。

 本人が「何かある」とうすうす思っているとおり、過度の飲酒や暴力をふるう親が子どもに与える影響というのは、決して小さくありません。お父さんと伊勢谷には、以下の4つの事象が見られます。

(1)問題を伴う父親の飲酒癖
(2)父親の母親への暴力
(3)伊勢谷の女性への暴力、薬物乱用
(4)伊勢谷の社会貢献

 これらの現象は、世代間連鎖と言われるマイナスのスパイラルである可能性は否めません。飲酒と暴力の因果関係ははっきり解明されていませんが、過度の飲酒が配偶者への暴力の引き金になることはよくあることです。

 暴力というと、多くの人が殴る蹴るというように肉体を痛めつけるものを想像するでしょうが、実際は多岐にわたっています。親のアルコール依存症や薬物乱用などの嗜癖(しへき)問題が子どもにもたらす影響について書かれた『私は親のようにならない 改訂版』(クラウディア・ブラック=著、斎藤学=監訳 誠信書房)では、「暴力を実証するような傷はなくても、恐怖で支配されていること」もDVであると定義しています。暴力の目的は痛みを与えることではなく、相手を支配することなのです。

親から暴力を受けた子どもが抱える無力感

 お父さんが、伊勢谷のお母さんにも肉体的な暴力をふるっていたかは不明ですが、両親の激しい口論を見聞きすると、言葉をしゃべれない年齢の赤ちゃんですら強いストレスを感じるそうです。仮に肉体的な暴力がなかったとしても、父親と母親の間に支配的な空気が漂っていた場合、男の子は「オンナはオトコの言うことを聞くもの」と刷り込まれていきます。だから、彼らは大人になって恋人や妻が思いどおりにならないと、親がしていたのと同じように暴力をふるってしまうのです。しかしながら、親から暴力被害にあった子ども全員が、加害者になるわけではないことも申し添えておきます。

『私は親のようにならない 改訂版』によると、「暴力の中で育った人は、言葉と行動によって繰り返し送られたメッセージ、おまえには価値がない、何をするにも値しない、たいしたものにはなれない、正しいことなど一つもできない──を心の中に取り込んでしまいます。そのため彼らは常に絶望感と心細さを感じていて、頻繁に抑うつ状態に陥ります。嗜癖に走る人もいますし、暴力の加害者になっていく人も多く見られます」とあります。

 つまり、親から暴力を受けることで、子どもは自信のなさを抱えて成長し、大人になって自分も暴力をふるうようになったり、薬物やアルコールに溺れる可能性があるということです。

『アシタスイッチ』で、伊勢谷は社会貢献に取り組む理由を「自分のために生きていない。人のために生きて、自分が生きることができる」と説明していましたが、これは伊勢谷の自信のなさの表れではないでしょうか。オノレのことよりも、他人を大事にする滅私的な姿勢は日本人好みなのかもしれませんが、伊勢谷の闇をよく表しているように感じるのです。

 見た目や聞こえは華やかでも、自分は無力な存在だと心のどこかで思っているから、社会貢献を通して「自分は役に立った、価値がある」と肌で感じたいのではないでしょうか。もしそうなら、それは他人を使って自分をなぐさめる、一種の依存だと思うのです。

 お父さんから美男という遺伝子受け継ぎ、その一方で負の連鎖をも受け継いでしまったのかもしれない伊勢谷。そういう親への愛や悲しみをわかちあえる実の兄、寛斎さんはもういません。今は罪の重さをかみしめるとともに、弱い自分を直視する勇気が必要なのかもしれません。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」

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