致死率が50%を超える真菌感染症「ムコール症」がインドでなおも拡大、新型コロナに対するステロイド治療が一因の可能性

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数がピーク期の1日40万人超から6万人ほどに減少したインドにおいて、致死率の高い真菌感染症「ムコール症」の感染が拡大しています。感染拡大の原因は不明瞭ですが、COVID-19に対するステロイド治療が間接的な原因となっているとみられています。
In the Wake of India’s Covid Crisis, a ‘Black Fungus’ Epidemic Follows - The New York Times
https://www.nytimes.com/2021/06/20/world/asia/india-covid-black-fungus.html
ムコール症はさまざまな真菌(カビ)の胞子を吸い込むことによって感染する病気で、極めて進行が早く、脳に広がるのを防ぐために眼球摘出や鼻・顎の切除が必要になるケースもあり、致死率は50%を超えるとされています。そんなムコール症がインドで拡大し続けており、3週間で3万人超という感染者を出しているとのこと。死者数については現地の報道機関が2100人超と報じていますが、保健当局が集計結果を公表していないため、正確な死者数は不明です。
こうしたムコール症患者の約80%がCOVID-19に感染しているため、インドで拡大するムコール症はCOVID-19が大きく関わっているとみられており、COVID-19治療の一環として行われる「ステロイド剤の投与」が間接的な原因だとする研究もあります。インドでは人工呼吸器が不足しているため、呼吸困難なCOVID-19患者に対して肺の炎症を軽減させる効果のあるステロイド剤が多用されています。報道によると、COVID-19という喫緊の問題に対してインドの医師たちは世界保健機関(WHO)の定める推奨処方量をはるかに超えるステロイドを処方しているため、ステロイドの「免疫力を低下させる」「血糖値を上昇させる」「血栓を生み出して末端組織に栄養が行き渡らないようにする」という副作用が感染拡大に寄与している可能性があるそうです。また、免疫力が低下する糖尿病も危険要因として挙げられています。
アメリカ大手紙のThe New York Timesの報道では、ムコール症に感染したAlok Kumar Chaudry氏(30歳)の現況を詳しく追っています。Chaudry氏はインドで感染第二波が発生した2021年4月頃に公務員試験のために勉強を続けていましたが、COVID-19を発症。地元の病院で人工呼吸器のサポートとステロイド剤の投与を2週間続けてCOVID-19を完治させましたが、左目の視力が突如として失われました。

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MRIによる検査の結果、Chaudry氏は眼球の裏側に真菌が感染してムコール症になってしまったと診断され、「左目を摘出する必要がある」と言われました。Chaudry氏はセカンドオピニオンとして別の市立病院に向かい、副鼻腔(びくう)管内の死んだ組織をこすり落とす手術を受け、抗真菌薬の投与を15日間受けましたが、いまだに眼球摘出を求められている状態。Chaudry氏は取材に対し、「感染の原因が医療ミスにあるのかどうかを知りたいと思っています。医療ミスならば誰かに責任があります。しかし、これが神の怒りだというのであれば、私は一体どうすればいいのでしょうか」と答えています。
ナレンドラ・モディ首相はムコール症を「挑戦」と表現し、「ムコール症に取り組むためのシステムを構築することが重要です」とコメント。インドは国内製造している抗真菌薬・アムホテリシンBを一部の公立病院で無料処方していますが、国内製造している量には限りがあるため、アメリカの製薬大手Gilead SciencesがアムホテリシンB約20万本寄付すると表明しています。

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