イラン大統領、敵対姿勢やめれば「米国も兄弟だ」…異例の発言で制裁解除など呼びかけ

 イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は16日、就任後初の記者会見をテヘランで開き、核開発を巡る米政府との直接交渉に関連して、敵対姿勢を改めれば「米国も兄弟だ」と異例の発言で米国側に核合意への復帰と制裁解除を呼びかけた。主張の趣旨は従来と同じだが、米国に対象を絞り、踏み込んで言及するのは初めてだ。

 ペゼシュキアン氏は大統領選で、米欧との対話や制裁解除を公約に当選した。イランは米国を「敵」とみなしているが、ペゼシュキアン氏は「(遺産)相続には兄弟の証しが必要」とのイランのことわざを使い、制裁や脅威を与えなければ「米国も兄弟だ」と述べた。

16日、イランの首都テヘランで記者会見するペゼシュキアン氏=AP

 米国のトランプ政権(当時)は2018年、イランが核開発を制限する代わりに制裁を解除した15年の核合意から一方的に離脱し、制裁を再開した。イランは対抗措置として、制限を上回る濃縮度のウラン生産に着手し、兵器級に近い60%まで濃縮度を高めている。

 ペゼシュキアン氏は「書かれた合意を破り捨てるべきではない。(制裁で苦しむ)我々を生かすなら共に話し合える」と呼びかけ、米国側に核合意への復帰と制裁の解除を要求した。高濃縮ウランの生産については、「我々は、やりたくないと繰り返してきた」と述べ、交渉の前提としてイラン側の権利の尊重を求めた。

 ペゼシュキアン氏は、ウクライナ侵略を続けるロシアへの弾道ミサイル供与疑惑について、「過去に(兵器の)やりとりがあった可能性はある」と述べる一方で、「確認したが、現政府になってからの輸出はない」と断言した。(テヘラン支局 吉形祐司)

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