不法移民巡る「犬や猫を食べている」発言、トランプ氏は撤回せず…SNSでは真偽不明の投稿相次ぐ

 【ワシントン=淵上隆悠】11月の米大統領選で返り咲きを狙う共和党のトランプ前大統領が、不法移民を巡り「犬や猫を食べている」と語ったことが波紋を広げている。根拠のない差別的な主張だと批判が集まるが、トランプ氏は撤回する姿勢を示していない。

 発言は10日夜のテレビ討論会で飛び出した。民主党のハリス副大統領との論戦で、「(オハイオ州)スプリングフィールドで、彼らは犬や猫、住人のペットを食べている」と述べた。ハリス氏はあきれたように笑い、司会者は「市に確認したが、信頼できる報告はないとのことだ」と指摘した。

 これに先立ち、共和党の副大統領候補でオハイオ州選出のJ・D・バンス上院議員が9日、X(旧ツイッター)の投稿で、ハイチからの不法移民がスプリングフィールドに混乱を起こしていると主張し、ペットがさらわれ、食べられているとの報告があると訴えた。

 市は否定したが、SNSでは「ハイチ人が近所の猫を食べて逮捕された」などと訴える真偽不明の投稿が相次いだ。トランプ氏を支持する実業家イーロン・マスク氏も拡散に加わった。

 トランプ氏が猫を抱き黒人男性から逃げたり、ハリス氏が猫をフライパンにのせ調理したりしている画像も広がった。生成AI(人工知能)で作成されたとみられ、支持者らがトランプ氏の支持拡大につなげようとしている可能性がある。

 12日にはスプリングフィールドの市役所や学校への爆破予告もあり、市長は、犯人からのメールに「ハイチ人への憎悪に満ちた言葉があった」と米紙に明かした。ハイチの外相は11日、Xで「政治的利益のために汚名を着せられ、人間性を否定された」と訴えた。

 CBSニュースによると、人口約6万人の同市や周辺には、ここ数年で最大約1万5000人の移民が流入した。多くがハイチ人だ。民主党のバイデン大統領は演説で「誇り高きハイチ系米国人が攻撃を受けている」と懸念を示したが、トランプ氏は13日の演説で「(当選したら)大規模な強制送還をスプリングフィールドから始める」と言い放った。

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