中国スパイ摘発機関、携帯・PC検査の新規定施行…「何を違法行為として問題視」外国人の不安強まる
【北京=川瀬大介】中国の
「外国の情報機関を震え上がらせ、全社会の反スパイ意識を強めた」
中国でスパイ摘発を担う国家安全省は1日、SNS「微信(ウィーチャット)」の公式アカウントで米英情報機関のスパイ事案を摘発したケースを紹介し、改正法施行から1年間の成果をアピールした。これまでに約20か国の外資系企業幹部や在中公館に改正法について説明してきたとも強調し、「中国の透明な法治環境を示した」と主張した。
同省は改正法施行を受けて昨年7月末、微信の公式アカウントを開設した。以降は連日のようにメッセージを投稿して宣伝を強めてきた。習政権が言及する「国家の安全」は軍事や経済、文化、科学技術、資源など対象が広い。同省の投稿内容は、国民へのスパイ摘発の協力呼びかけや米英のスパイ事案摘発に加え、本来は所管外の外交や経済など多岐に及ぶ。
同省の存在感が強まる中、外国人にとっては何が違法行為として問題視されるのか分からず、不安が広がっている。
1日には反スパイ法などに基づいて携帯電話やパソコンを検査し、アプリも調べられるとした新たな規定を施行した。従来の運用を明文化したとみられる。スパイ行為が疑われる個人・団体が対象で「一般人は対象外」と同省は強調するが、北京の外交筋は「取り締まりが強まる可能性がある」とみている。
同省が昨年12月、経済分野を対象に「国家の安全を脅かす違法犯罪活動を断固取り締まり、処罰する」と投稿した際には、中国経済への批判的な論調は処罰される可能性があるとの見方が強まった。
反スパイ法が施行された2014年以降、中国で拘束された邦人は少なくとも17人に上る。昨年3月に反スパイ法違反容疑で拘束され、同10月に正式逮捕されたアステラス製薬社員ら邦人の拘束理由の詳細が明らかにされることはない。ある外交筋は「日本から中国への出張を避けようとする状況が続いている。何をしたら拘束されるのか分からず、多くの人がリスクを感じている」と指摘する。
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反スパイ法
=2012年に発足した
07/02 05:00
読売新聞