「男性は遊んで、女性は働く」中国奥地の“ナゾの村” 立山特派員がみた不思議な家族のカタチ【クレイジージャーニー】

日本から飛行機を乗り継ぎ約10時間、中国南西部にある雲南省。標高は平均1500m、約8割が山岳地帯だ。天下第一の奇観と言われる世界遺産の「石林」を始め、各地に美しい自然を持つ観光資源が豊富なこのエリアで、独自の文化を守る20以上の少数民族が暮らしている。

そうした少数民族の1つに、「世界唯一の女系民族」と呼ばれる民族があるという。いったいどんな暮らしをしているのか、JNN北京支局長・立山芽以子特派員が現地を取材した。

「男の人たちはヒモらしい」

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立山特派員
「今回はモソ族の取材に行きます。(多くの人のイメージは)男の人が家とか財産を継ぐという感じだと思う。そうじゃなくて、全部女の人が家の事をやる」

1500年以上に渡って女性が家長を務めてきた、世界でも数少ない母系社会の「モソ」。ちなみに男性は…

立山特派員
「モソの男の人たちはどうやらヒモらしい。女性は働き者、男は遊んで暮らす。しかも男の人は、一緒に住まないで女の人の家に通ってくる『通い婚』の民族」

男性は遊んで、女性は働く。さらに、結婚という概念もない独自のスタイルを貫く、謎多き民族。そのリアルな暮らしとは?

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立山特派員
「モソの村に入るのに、チケットを買わないといけないみたい。完全に観光地化してる、全然秘境じゃない」

実は中国では、1980年代から少数民族を観光資源とした事業が広がり、ここ10年でモソにもその波が押し寄せたという。

立山特派員
「確かに道路とか、空港とかちゃんと整備されたのも10年前くらい。モソはもういないのかも」

“中国あるある”で伝統が失われていないか…果たして。

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美しい湖のほとりにあるモソ族の村。約5万人が暮らしているという。

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立山特派員
「この辺に建っているのは全部民宿です。見てください、ステキなコーヒーショップ。こんなの北京にもない。大体、補助金とかもらって観光地に入ってきて、開発するのは漢族の人がどこのエリアも多いのかな」

中国の人口の9割以上を占めるのが漢族で、少数民族の土地を観光開発しているのも、その漢族が中心だという。

立山特派員
「モソ族の一帯、すごく開発が進んでる。ウイグルとかもそうで、今観光でウイグルを売ってるんだけども、確かに生活水準はアップした。だけど、ウイグルらしさとかはどんどん失われている。プラスの面とマイナスの面がある」

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モソの不思議な文化は残っているのか。不安になっていたその時、ついにモソを発見。

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立山特派員
「衣装が綺麗ですね。マニ車を回しながら歩いてます。回すとお経を読んだのと同じ効果があると言われていて、チベット仏教を信仰している人はグルグル回しながらお参りをする」

“働き者”の女性「尊敬されることが1番大事」

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モソのみなさんは、観光エリアから少し離れた場所で暮らしているという。ということで、ここからはモソの不思議な男女の暮らしを取材させてもらう。

立山特派員
「100年以上続く、4世代にわたる大家族みたいです」

この家の1番上のおばあさんであり、大ボスのアールツァーマーさん(87)。最近まで家長を務めていたが高齢のため、現在は孫のガータさん(42)がその座を受け継いだ。

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アールツァーマーさん
「女性は尊敬されることが1番大事なの。ただ、家長としての能力がないと尊敬はされません」

家長を務める女性の仕事は、一体どんなものなのか。現家長の1日に同行させていただく。

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家長は朝から大忙し。自給自足のモソでは女性が家畜の面倒を見る。

ガータさん
「女性の方が仕事が丁寧だから、家畜をうまく育てることができるんです」

噂に違わず、女性はかなりの働き者。

立山特派員
「お掃除も女性の仕事ですか?」

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ガータさん
「もちろん、モソの女性は大変なんだから。女性の権力が大きい分、きっちり働かないと誰も家長として認めてくれません」

家事に加え、家の全てを取り仕切るのが家長の役目。そんなガータさんには、22年間通い婚を続ける夫にあたる人物が。

ガータさんの夫
「いつもはいないよ。今日はこの家に人が少ないから、たまたま来たんだ」

実家暮らしの夫と会うのはたまにだけ。2人の間に子どもはいるが、ガータさんの姓を名乗り、この家で暮らしている。

ちなみに、夫・ショウさんは子育てもせず、養育費も払っていない。では、男性は何をしているのか。

夫は「いつも遊んでる」不思議な家族のカタチ

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立山特派員
「朝からちゃんと野菜の手入れをしてますね。働いている」

これは意外…一応、仕事をしている。と、思いきや…

夫・ショウさん
「ヒマだからやってるだけだよ」

立山特派員
「普段はどんな仕事してるの?」

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夫・ショウさん
「いつも遊んでるよ」

立山特派員
「彼女は怒らないんですか?」

夫・ショウさん
「なんで怒るの?どこへ遊びに行っても何も言わないよ」

一方、家長は…

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ガータさん
「私も休みたい時は休むし、遊びたい時は遊びますよ」

と言いつつ、休まない。家族5人分の食事を一人で準備。で、男は…水撒き終わりの6服目。

立山特派員
「今日は何して遊ぶの?」

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夫・ショウさん
「友達の家でゴハンを食べるぐらいしか予定ないかな」

立山特派員
「遊ぶお金はどうしているの?」

夫・ショウさん
「うちの家族が稼いだお金さ」

こんな生活で女性はOKなのか?

ガータさん
「危険な仕事は夫に頼みますし、いざって時には頼りになるんです。それに、毎日一緒にいると喧嘩になるけど、私たちは独立してるから、そういうことは起きません。結婚してないから、もちろん離婚もありません。お互い気が合わなくなれば、会わなければいいだけなんです」

何とも不思議な家族のカタチがそこにはあった。

実は、ガータさんたちが特別なのではなく、モソの6割以上が今もなお、通い婚という伝統を守っているという。

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立山特派員
「家族の在り方がすごく合理的。日本ってすごくプレッシャーがあるじゃないですか、結婚して当然だとか、離婚は良くないとか。ここはそういうのがなくて、男も女もそれぞれ自由で、自分の好きな事をやっている。モソ的な生き方を通じて、私たちも色々考えさせられる」

(TBSテレビ『クレイジージャーニー』10月14日放送より)

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