国連事務総長、安保理改革へ「妥協の精神」要請 「定数拡大」明記の協定案採決なるか

【ニューヨーク=平田雄介】国連のグテレス事務総長は18日の記者会見で、国連本部で22、23両日に開く「未来サミット」での採択を目指す「未来のための協定」案について、安全保障理事会改革の「最初の一歩」になるとして、各国に「妥協の精神」を発揮して最終案をまとめるよう要請した。

協定の最新案は、安保理を「改革する」と明記。国連加盟193カ国中54カ国を占めるアフリカ諸国が安保理で非常任理事国の3議席しか割り当てられていない現行制度の「歴史的不正をただす」として、安全保障理事会の定数(15カ国)を「拡大する」などと記している。

グテレス氏は会見で、協定案の安保理改革に関する部分の作業は「完了した」と述べ、加盟国が合意に達したとの認識を示した。その内容は過去に一度だけ理事国の定数拡大(11→15)が実現した1965年以降で「最も強力だ」と指摘した。

改革に向けた議論は長く停滞していたが、2022年2月に常任理事国ロシアがウクライナを侵略し、これに対応しようとした安保理の決議案に拒否権を行使したのを機に活性化。同年9月の国連総会では、米国やロシアが定数拡大に言及し、侵略に伴う供給網の寸断で生じた食料不足や物価高に苦しむグローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)の支持を得ようと秋波を送る場面が見られた。

グテレス氏は会見で、17年に国連事務総長に就任した当時は達成不可能として「タブー視」された安保理改革の議論を巡る状況は「劇的に変わった」と語り、現在は「各国が改革の必要性を認識している」と議論の進展に期待を示した。

未来のための協定は、平和や気候変動対策など地球規模の課題に関する国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、安保理を含む「国連システムの機能改善の方策」(グテレス氏)などを定めるもので、協定案の交渉が大詰めを迎えている。

協定の最新案は安保理改革のほか、国際通貨基金(IMF)や世界銀行での途上国の発言・代表権拡大に向けた改革の加速や、人工知能(AI)を含むデジタル技術の悪用によって生じる潜在的リスクに各国が協力して取り組むことなどを定めている。

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