「金正恩バッジ」が公式登場 幹部全員が着用、最高指導者就任10年以上、偶像化加速 脱金日成の動きも

北朝鮮の朝鮮労働党の幹部らが金正恩(キム・ジョンウン)総書記の肖像をあしらった「肖像記章」と呼ばれるバッジを着用している姿が30日、確認された。同日付の党機関紙、労働新聞が掲載した写真では、29日に平壌で開かれた党中央委員会総会の2日目の会議に出席した幹部全員が胸に「金正恩バッジ」を着用していた。

公の場で正恩氏単独の肖像をあしらったバッジの着用が確認されるのは初めてとみられる。これまで北朝鮮の幹部や住民は祖父の金日成(キム・イルソン)主席や父の金正日(キム・ジョンイル)総書記の2人の顔を並べたバッジを胸に着けることが一般的だった。

正恩氏の最高指導者就任から10年以上が経過し、独自の権力基盤を確立するとともに、正恩氏の偶像化も本格化しているもようだ。5月には、党幹部を養成する学校で、金日成、正日の両氏の肖像画と並んで掲げられた正恩氏の肖像画が公開された。

北朝鮮では「親しいオボイ(親)」という正恩氏をたたえる歌が登場したり、メディアが正恩氏に対して「太陽」という呼び方を使い始めたりしている。北朝鮮では「オボイ」や「太陽」は金日成を神聖化する際の用語とされてきた。一方、今年4月15日の金日成の誕生日には、メディアがこれまで用いてきた「太陽節」という名称を単に「4月の名節」や「4・15」に言い換え始めた。

金一族の世襲体制は、建国の父、金日成の神聖化によって権威付けが図られてきた。正恩氏にもこれまで祖父の権威にあやかろうとする言動や演出が目立った。最近は正恩氏の偶像化の加速とともに、「脱金日成神聖化」の動きも進んでいるようだ。

北朝鮮メディアは30日、正恩氏が29日、党総会の2日目の会議で、経済発展とその障害に関する演説を行ったことを報じた。(済州 桜井紀雄)

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