米最高裁、緊急時の中絶を容認 原則禁止のアイダホ州法 バイデン政権の差し止め訴訟で

【ワシントン=渡辺浩生】人工妊娠中絶を原則禁止する米西部アイダホ州の州法の差し止めをバイデン政権が求めていた訴訟で、米最高裁は27日、妊婦の健康への重大な危害を回避するために必要な緊急の治療として中絶手術を認めるべきだとの判断を下した。最高裁判事9人のうち6人の判断。保守系判事6人のうち3人が反対した。

アイダホ州の州法は、最高裁が中絶を憲法上の権利と認めた1973年の「ロー対ウェード」判決を2022年に覆したことを受けて施行された。州法は「妊婦の死亡を防ぐために必要な場合」を除き中絶を禁止。違反した医師は刑事罰や免許取り消しを科される可能性がある。

バイデン政権は、妊婦の生命や健康が危険な場合に患者の容体を安定させる措置を行うことを病院に義務付ける連邦法に、州法は反するとして提訴していた。

バイデン大統領は27日の声明で「いかなる女性も治療を拒否され、死の寸前まで待たされてはならない」と述べ、アイダホ州と同様に共和党の地盤で中絶を原則禁止とする州を批判。11月の大統領選で再選を目指すバイデン氏は中絶の権利擁護を支持層拡大の重要テーマと位置づける。

最高裁が26日に訴訟の判決とみられる文書をホームページに誤って一時掲載する不手際があり、米ブルームバーグ通信がこれをもとに判断の見通しを報じる異例の事態となった。

ジャンルで探す