米水泳王者フェルプス、中国ドーピング疑惑でWADA批判 パリ五輪前に 下院公聴会

7月のパリ五輪開幕を前に25日、米下院小委員会で、2021年の東京五輪をめぐる中国競泳選手団の薬物検出疑惑についての公聴会が行われた。五輪で計23個の金メダルを獲得した元スター競泳選手、マイケル・フェルプスさんらが証言し、世界反ドーピング機関(WADA)の対応に強い失望を表明。改革を訴えた。

この疑惑は、東京五輪の数カ月前、中国の23選手がドーピング検査で陽性となったにもかかわらず、国際大会出場を認められたというもの。4月に米紙の報道で明らかになった。検出されたのは狭心症の薬として使われるトリメタジジンで、WADAは選手が知らないうちに混入したという中国の主張を受け入れ、処分を科さなかった。

公聴会でフェルプスさんは、「選手として、何の疑いもなくWADAを信用することができなくなった」と語った。フェルプスさんは7年前、ロシアのドーピング疑惑が浮上したときにも下院公聴会で証言しており、「この組織(WADA)には、政策を実行する能力や意欲がないことが世界に示された」と失望を露わにした。WADAの独立性を確保するため、米下院が影響力を行使するよう求めた。

「敗北認めたのに…」と苦悩

公聴会では、東京五輪に出場した女子競泳選手、アリソン・シュミットさんも証言した。東京大会の女子800メートルリレーでは中国が金メダルを獲得し、米国は僅差で敗れて銀メダルとなった。シュミットさんは「私たちは必死で練習し、あらゆる規則に従った。敗北も堂々と受け入れた」と当時を振り返った。「私たちの多くは、この結果がドーピングのせいかもしれないという思いに悩まされる」と語り、疑惑の解明を求めた。

シュミットさんはリオ五輪などで計4個の金メダルを獲得している。

WADAは米下院の動きを受け、「米国ではWADAが中国に偏向し、不適切な対応をとったという筋書きが広がっているが、何の証拠もない」と反論した。ドーピング疑惑では独立検察官による捜査が行われていると説明。米中の政治対立を持ち込むべきではないと不満を示した。

ドーピング疑惑が浮上した中国競泳選手のうち11人は、パリ五輪に出場予定とされる。(三井美奈)



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