イスラエル最高裁がユダヤ教「超正統派」の兵役を義務化 連立の2党が失望感、首相に打撃

イスラエル最高裁は25日、ユダヤ教の戒律に厳格な「超正統派」の学生に適用されてきた徴兵免除を違法とし、兵役を義務化するとの判決を言い渡した。イスラム原理主義組織ハマスとの戦闘の長期化で、一部の国民が兵役を巡る「不平等な負担」を強いられているとして改善を求めていた。

ロイター通信は判決を受け、ネタニヤフ連立政権に加わる超正統派の2政党が「失望感を表明した」と伝えた。政権内ではハマスとの戦闘方針に関する路線対立も表面化しており、求心力が弱まるネタニヤフ首相にとっては頭痛の種が増えた形だ。

イスラエルは国民皆兵で、ユダヤ教徒は男女とも18歳になると兵役義務がある。しかし、宗教学校に通う超正統派の学生はユダヤ教について学ぶ時間が必要だとして、伝統的に免除されてきた。

これに対し、IT業界などで働く世俗派は強く反発し、公平な徴兵の適用を要求して以前から社会的議論になっていた。パレスチナ自治区ガザでハマスとの戦闘が始まった昨年10月以降、300人超の軍兵士が死亡したことも世俗派の批判が高まった一因だ。

政権維持に固執するネタニヤフ氏が超正統派の連立離脱を避けようと、徴兵回避のための時間稼ぎに動くとの見方もある。超正統派は多産で知られ、人口900万人超のイスラエルで13%を占めるが、2035年までには20%近くに達するとの分析もある。経済面でも優遇されており、世俗派との対立は今後も続く可能性がある。(テヘラン 佐藤貴生)

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