英政府、大学の先端技術研究への中国のスパイ活動阻止へ対策強化 関係者の身辺調査など検討

【ロンドン=黒瀬悦成】英政府は、英国内の大学での先端技術研究に対する中国のスパイ活動を阻止するため、情報局保安部(MI5)が学者や研究者の身辺を調査する新制度の検討に入った。英紙タイムズ(電子版)が26日伝えた。英当局は、中国などの専制主義国家が英国の大学で研究・開発中の軍民両用技術などの盗み出しを図り、英国の安全保障を脅かしているとして、対策強化を急いでいる。

同紙によると、英政府の対策強化策には学術関係者らの身辺調査に加え、先端技術を扱う大学施設の警備態勢の強化のための財政支援などが含まれる。

英政府が先端技術研究の重点分野と位置付ける人工知能や先進ロボット工学、合成生物学、量子技術などに関し、英国の大学が外国の研究機関と学術連携を実施する際は、知的財産を侵害されないようMI5との協議を義務づけることも検討するとしている。

MI5のマッカラム長官は25日、オックスフォード大やケンブリッジ大を含む24の英主要大学の副学長らを集めて一連の方針を説明しつつ「複数の敵対国家」によるスパイ活動の脅威の深刻さを訴え、警戒水準の引き上げを呼び掛けた。

一方、ダウデン副首相は先週、英国内の複数の大学が中国人留学生の授業料収入に依存する経営体質に陥り、中国からの政治的威圧に抵抗しにくくなっているとして実態調査を進めていることを明らかにした。

同紙によると、2021~22年に英国の大学で学ぶ中国人留学生は15万1690人に上る。

英国屈指の名門校として知られるユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)には1万人以上、多数のノーベル賞受賞者を輩出するマンチェスター大学にも約9千人の中国人留学生が在籍しているという。

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