関係正常化へ副首相会合 アゼルバイジャンとアルメニア
南カフカス地方の旧ソ連構成国、アルメニアのパシニャン首相とアゼルバイジャンのアリエフ大統領は25日、両国関係の正常化に向けてモスクワで協議し、1週間以内に副首相級会合を開くことで一致した。両国は係争地「ナゴルノカラバフ自治州」の帰属を巡って30年間以上にわたり対立してきた。平和条約の締結に向けた動きが加速するかが今後の焦点となる。
協議はロシアのプーチン大統領が仲介し、協議にも同席した。南カフカス両国の関係正常化問題では、米国や欧州連合(EU)も仲介作業を進めてきた。
ロシアはこの問題で主導権を握り、「勢力圏」とみなす旧ソ連地域で欧米の影響力が強まるのを防ぎたい考えとみられる。
会合に先立つ22日、パシニャン氏は「アルメニア系住民の安全が保障されることを条件に、アルメニアはナゴルノカラバフ自治州がアゼルバイジャン領であることを認める」と表明。関係正常化に向け、条件付きながらも「譲歩」に応じる姿勢を示していた。
関係正常化に向けた焦点は、同自治州内のアルメニア側実効支配地域とアルメニア本国を結ぶ唯一の陸路「ラチン回廊」の封鎖問題だ。アルメニアは、アゼルバイジャンが2020年の停戦合意に反して回廊を封鎖し、物資輸送を妨害していると非難。アゼルバイジャンは封鎖を否定している。
プーチン氏は25日の協議で、回廊を巡る問題は「純粋に技術的なもので解決可能だ」と指摘。1週間以内にロシアを含む3カ国で副首相級会合を開くことを提案し、パシニャン、アリエフ両氏も同意した。
協議に先立って25日にモスクワで開かれた露主導の「ユーラシア経済連合(EAEU)」首脳会議の場でも、パシニャン、アリエフ両氏は関係正常化への意欲を表明した。
パシニャン氏が「譲歩」を示したのは、和平機運がアルメニア国民内に高まっていることなどが理由とされる。ただ、野党勢力は同氏の姿勢を「敗北主義」と批判。自治州内のアルメニア人系勢力も同氏に批判的で、関係正常化に向けた道筋は平坦(へいたん)ではない。
国際的にはアゼルバイジャンの一部であるナゴルノカラバフ自治州では旧ソ連時代末期、多数派のアルメニア系住民がアルメニアへの帰属変更を求めてアゼルバイジャンと対立。20年の大規模紛争ではアルメニアが自治州内の実効支配地域の大半を失った。
05/26 21:02
産経新聞