米も戦車供与へ ドイツの背中押す方針へ転換

【ワシントン=大内清】ドイツが主力戦車のウクライナ供与を決め、米国も供与する見通しとなったことは、ウクライナが春にも開始するとみられる大規模な反攻作戦に重要な意味を持つ。ウクライナは戦車の機動力と火力を活用し、ロシア軍の前線を破ることが可能になると期待。米国はドイツなど同盟国との連携を確認しつつ、さらなる支援のあり方を模索するとみられる。

昨年2月からのロシア軍の侵攻に対し、ウクライナ軍は旧ソ連時代のT72戦車、米国供与の対戦車ミサイルや榴弾砲などで抗戦。米国はこれまで、旧共産主義圏のチェコなどが保有するT72をウクライナに移転するのを支援する半面、米主力戦車「エイブラムス」を供与することに慎重姿勢を示してきた。戦闘がエスカレートすることへの懸念に加え、同戦車が露軍に鹵獲(ろかく)された場合の技術漏洩(ろうえい)などを警戒してのこととみられる。

その中で米国が方針を転換させたのは、戦車供与で米国など同盟国との連携を重視するとしてきたショルツ独政権の背中を押すためだ。北大西洋条約機構(NATO)の盟主として、欧州の同盟各国が足並みをそろえられるよう指導力を発揮する必要性にも迫られた。

戦闘地域で戦車が威力を発揮するのは、高い機動力と強力な火力を持つためだ。ウクライナ軍には、他の戦闘車両や歩兵部隊などと連携運用することで、露軍が要塞化する東・南部の前線を突破し、都市部を含む広い地域の制圧が可能になるとの計算がある。

実際に米軍は今月中旬、ドイツにある訓練施設でウクライナ兵500人を対象に、こうした連携戦術の訓練を開始。米公共ラジオ(NPR)は、ウクライナ軍が戦車を活用して露占領下の東部ドネツク州マリウポリ周辺まで部隊を進出させることができれば、ロシアが一方的に併合を宣言している南部クリミア半島への補給を断つことが可能になる、とする軍事専門家の分析を伝えた。

ただ、戦車の供与だけでは戦況を大きく左右する「ゲームチェンジャー」にはならないとの指摘も多い。ウェスリー・クラーク元NATO欧州連合軍最高司令官はCNNテレビで24日、戦車を有効に運用するには「長距離ドローンなど空からの援護が必要になる」と語った。

米下院外交委員会のマコール委員長(共和)らは18日、供与する兵器を徐々に強力なものに引き上げていくバイデン政権の支援策を批判した上で、戦術地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」やその他の長射程精密誘導ミサイル供与を「遅滞なく承認すべきだ」との声明を発表。今後は、議会での議論もにらみつつ、バイデン政権がさらに強力な軍事支援に踏み込むかが焦点となる。

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