中国で「抗米」映画、歴代1位に 批判封殺の動きも

【北京=三塚聖平】中国で、朝鮮戦争(1950~53年)の激戦地を題名にとった映画「長津湖(ちょうしんこ)」が26日までに、興行収入56億9500万元(約1020億円)を記録し、中国映画市場で歴代首位となった。中国人民志願軍と米軍の戦いを描いた国威発揚映画で、現代の米中対立を背景に中国共産党・政府は「抗米」の過去を強調している。

「長津湖」は、著名監督の陳凱歌(チェン・カイコー)氏らが監督し、呉京氏ら人気俳優を集めた3時間近い大作だ。国威発揚や愛国精神といった国策を反映した「主旋律映画」と呼ばれるジャンルとして位置づけられている。

10月上旬の国慶節(建国記念日)連休に合わせて公開。国営新華社通信によると、今月25日に興行収入で歴代トップになった。これまでの首位は、2017年公開のアクション映画「戦狼(せんろう)2」。同じく呉京氏が主演し、中国の攻撃的な外交姿勢を表現する言葉の由来となった映画だ。

朝鮮戦争では、中国が人民志願軍を派遣し、米軍を主体とする国連軍と戦った。映画の題名となった北朝鮮東部にある長津湖付近では、1950年冬に米海兵隊が中国側の攻勢に遭って撤退している。映画はこの戦いを中心に、中国の兵士が極寒に耐えながら、物量で勝る米軍を相手に戦う姿を英雄的に描く。戦場となった北朝鮮と韓国の軍隊や市民は一切出てこない。

中国共産党機関紙、人民日報はソーシャルメディアで、映画のヒットについて「愛国主義の勝利だ」と強調した。米中対立を受け、習近平政権は朝鮮戦争当時のスローガン「抗米援朝(米国に対抗して北朝鮮を支援する)」を強調しており、映画もその方針に沿って盛り上げられた形だ。当局側による組織的な動員を指摘する声もある。

中国のインターネット上では「事実に基づかないのでは」といった批判もあったが、異論は削除されているもようだ。朝鮮戦争の「正義」に疑問を呈したメディア関係者が「英雄の名誉を侵害した」疑いで逮捕される事態も起きており、当局側が批判に神経をとがらせているとみられる。

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