《人質らが証言する劣悪環境》ボーイフレンドの目の前でハマスに拐われた26歳女性の救出に成功も「体重激減」「ゴミ箱で排泄」の惨状

現地でくばられたノアさん関連のビラ(時事通信フォト)

 イスラエル軍は6月8日、パレスチナ自治区ガザ中部で人質救出作戦に伴う攻撃を実行し、イスラム組織ハマスに拘束されていた人質4人を救出したことを発表した。救出された人質の中には、「殺さないで!」と絶叫する姿が動画で拡散されたイスラエル人のノア・アルガマニさん(26)もいた。

【写真】ハマスにとらえられた女性の現在、女性の両親、交際相手の目の前で引き離される姿も

 ノアさんは、ハマスの攻撃対象となった音楽フェスの参加者だった。2023年10月7日に行われたハマスによる襲撃の直後、現地の阿鼻叫喚の様子をとらえた動画や写真がいくつもネット上で拡散された。特に世界中の人々に強いショックを与えたのが、ドイツ系イスラエル人女性のシャニ・ルークさん(享年22)が裸に近い状態で連行される映像、そしてノアさんが「殺さないで!」と叫びながらバイクに無理やり乗せられる映像だ。

映像の中でノアさんは、パートナーと思われる男性に向かって助けを求めるように手を伸ばしていたが、彼もまたほかの男たちに拘束されていた。彼女は連れ去られるのをただ見ていることしかできなかった──。国際ジャーナリストが解説する。

「シャニさんは昨年10月末の時点で、死亡が確認されました。DNA鑑定により、発見された頭がい骨の一部が彼女のものであることが判明したといいます。

 一方で、ノアさんは生きて動く映像が確認されていました。室内で水のようなものを飲んでいる映像が出回ったほか、ハマスが今年1月、ノアさんが『イスラエル軍の空爆により、人質の男性が死亡した』と証言する映像を公開しました。ただ、いつ撮影された映像か不明なため、安否が気遣われていました」(国際ジャーナリスト、以下同)

人質が過ごした「劣悪な環境」

 生きている映像が確認されたとはいえ、安心はできない状況だった。なぜなら、人質たちの置かれた過酷な環境についての証言もあったからだ。

「昨年11月下旬に解放された元人質の女性、シャロン・アロニー・クニオさんが、アメリカの『AP通信』のインタビューに答えていました。監禁生活では決まって食事が与えられるわけではなく、クニオさんは体重が11キロ減ったそうです。劣悪な環境の中で、一緒に囚われた家族たち全員が嘔吐や下痢に悩まされたといいます。

 また、トイレに行きたいときはドアをノックして開けてもらうルールだったものの、何時間も待たされて、部屋の流しやゴミ箱で用を足すしかないこともあったそうです。

 ほかにも大規模攻撃をめぐってハマスの性暴力を告発する証言が複数あっただけに、人質の置かれた環境についても不安視されています。ただ、ハマスとイスラエル双方に意図的なメディア露出をしている可能性があるため、発信された情報は慎重に受け止めるべきでしょう」

 ハマスの襲撃から約8か月を経て、ようやく救出されたノアさん。しかし、今回のイスラエル軍による人質奪還作戦には批判も寄せられている。

「ガザ当局は、イスラエル軍の作戦によって子どもを含めた住民200人以上が死亡し、400人以上がケガを負ったと主張しています。双方の仲介役を務めるエジプトも、イスラエル側を非難する声明を発表しており、停戦などについての今後の交渉にも影響を及ぼしそうです。

もちろん人質たちが生きて救出されたのは喜ばしいことですが、“めでたし、めでたし”で終わらない複雑な事情が現地にあるのです」

 この戦いは、いつ終わりを迎えるのか。

ジャンルで探す